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05


 入学して早数カ月が過ぎた。

 同好の士や、友人もできて楽しい日々だ。

 前世より遥かに楽しい学生時代。


 けれどもスピカの日々は平穏……とは、ちょっと言い辛くなったのだ。


 まぁ、案の定――兄が。


 一つ年上の兄に、婚約者ができた。

 それは目出度い。

 目出度い……の、だが。


「なぁんか、当たり強いんよねぇ。私にだけぇ……」

「従姉妹がごめんなさいねぇ」


 愚痴りながらもざっかざっかとスケッチブックに線を走らせるスピカに、慣れた様子で合いの手と、合い間にお茶や菓子を差し出すのはフランター伯爵家のリーシャ嬢だ。生前からの悪癖、熱中すると寝食を忘れがちなスピカだから。


 彼女は同期入学の生徒の中、女生徒では一番仲良くしてくれている。


 ちなみに同期入学には王太子殿下やその婚約者のアスター公爵令嬢もいたりする、すごい世代である。


 リーシャは伯爵令嬢であるが、男爵家のスピカとは身分を越えて友人となった。

 というのも、リーシャは服が好きで。

 それは偶然であったが。

 スピカが一度スケッチブックを落としたことがあり、それを拾って届けてくれたのが彼女だった。


 ……本当は落としたのではなく、盗まれたのだが。


 イベントであったのだろうかと思うが、リーシャという友人ができたから気にしないことにした。割とメンタルが強いスピカ。その程度のいじめは可愛いものだと哀しみの前世記憶。

 リーシャはその時にスケッチブックの中を「悪いとは思ったけど、持ち主を探すには……」と、確認のために開いて。

 そして開眼した。

 因みにリーシャ嬢は普段はちょっと糸目。


「このスケッチブックはどなたのですのー!?」


 広く叫ばれる前に探していたスピカが合流できたのは、まさに神の采配。

「こ、この裾、このし、し、刺繍のデザイン! こんな大柄に薔薇を描くなんて、素敵ですわ!」

「あ、刺繍はこんなん大変だから布を直に染めるか、いや直に描けれないかと……」

「斬新ですわ!!」

 カッと目を開かれ褒められた。

 そしてリーシャ嬢の勧められるまま、そのデザインで服を作って……売れた。店に問い合わせも殺到した。

 リーシャ嬢のフランター家は、もともと彼女の母がそうしたお店を開いていたのもあり。だから彼女も服飾に興味を持っていたのだ。

 伯爵夫人の道楽で開かれている店ではあるが、顧客は中々で。中には公爵家などの高位貴族――王族もいるとか。


 けれどもまだまだ学生の、そして趣味の分をでないと思っているスピカは、デザイナーは自分だとは言い出すこともなく。しかも前世チートで、その知識やデザインの流用だし。やがてそれをきちんと自分の実力にできるまで、と。


 けれども、リーシャ嬢が親しくしていたり、いつもスケッチブックに何かしら描いていることから……時折不意に現れる素敵なドレスのデザイナーはスピカなのではと、ひっそりとわかる人にはわかるらしく。


「あの、このドレス……何か物足りなくて……」

「これ、姉のお古なのだけど……そうわからないようにできるかしら?」

「婚約者が贈ってくれたのだけど、どうしてもいまいちで……バレないようにそれとなくアレンジできないかしら?」


 クラスメイトに時折そんな相談を受けるように。

 リーシャと顔を見合わせてから。何かあれば伯爵令嬢のリーシャが後ろにいるぞと虎の意を借り、アレンジしたあとの責任は自己ですよと頷いてもらってから。 


「全体的に淡いクリーム色ですから、リボンだけ濃くするか挿し色に違う色を入れたらどうでしょう?」

「袖と襟の形を変えてみるだけでかなりかわりますかと」

「ならば、飾りボタンで胸元絞ってみたり、背中のデザインを変えてみたらいかがでしょうか? 失礼ながら胸元と背中が開きすぎて、あとはレースで覆ってみては? でも、根本的には解決にはなりません。婚約者さんにご相談……っていうか親御さんどうかご相談を! こんな破廉恥なドレス贈ってくるのてお節介かもですけんども、やばくないですか……!?」


 などなど。

 今のところは概ねご好評。

 じわじわとスピカの評判も良くなり、「男爵家のくせに……」といったいじめもなくなってきた。



 そんなスピカが何故に愚痴を言っているかというと。

 兄のファビアンとその婚約者――リーシャの従姉妹のレティシアだ。


 二人の身内。

 それは……――。


「厄介なやつに厄介なやつを掛け合わせたら、もっと厄介になるに決まっておりましたわなぁ……」


 こういうのって、足し算じゃなく。

 ……掛け算ですわぁ。

 


 



 カッ!(あの顔文字)

 わかる方に伝われー!


 …バケツて、偉大です。とりあえずホムセンで買ってきてなんとか、これで…いや、どうしよ…(バケツのなかにタオル置いとくと、水滴跳ねなくてありがた(泣)



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