表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「こりゃあきまへんわ。現実みよ」  作者: イチイ アキラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

12

「いや、本当に、何でですのん!?」


 気がつけば自分の家がお取り潰しになり、気がつけば母の実家が伯爵家に格上げ復活して――セオドアが婿入予定になっていた。


 互いの血筋を合わせることで。

 スピカとセオドアが婚姻関係になることで、新たにレトラン家が成る、というわけだ。


「いや、考えてもみてごらんよ。エステルの専属――んん、僕が、いや、んんん、王家が贔屓するデザイナーが、平民というのは……君? 君が大変だよ? いろいろと、ね? あと、君は……君だけはマーロウ家で無罪じゃない? そして、ずっと努力してきた」


 確かに。

 今やデザインはスピカの力だ。己で身につけ、積み重ねてきた。前世から、だ。

 それをきちんと、王太子殿下はみてくれていた。


「いやどさくさ紛れにデザインしているの私てバラしたの、殿下じゃ……」

「それはなりゆき。しょうがないよ?」

 スピカはマーロウ家がお取り潰しになるなら、自分も平民かぁ……と、腹を括っていたのに。学園も退学かな、と。

 これもゲームシナリオかしら。ヒロインざまぁ、なルートなやつかしら……と。

 せっかく貴族に戻れた母はかわいそうだけど、父母もともに腹を括っていたらしい。平民へ下る、と。


 それが罰だ。


 けれどもスピカのことも逃がすもんかと、アルフレッドはきちんと考えて。

 それに王太子お気に入りのデザイナーを、平民になったならば抱え込もうという悪党だっているはずだ。世の中、そんなきれいじゃないから。


「ほら、セオドアは僕の側近だし。そうなると領地の世話をするのまでは大変だよぉ?」

「側近、もう決まりなんですね?」

「うん」

「うわ、即答」

「あはは、僕、君のそういう態度も割と好き。買ってる。不敬て知ってる? いや、知ってて断る口実にしようとしてるみたいだけど、そうはさせないよ? 留学したいならしてもいいけど、帰ってきてね(逃がすもんかい)?」

「……ありがとうございます」


 だからスピカの父母が、管理人として――まぁ、婿入するセオドアの義両親(・・・)という立場で、レトラン家を治めることとなる。

 あくまで伯爵はセオドアという形になるのは、ファビアンの親という罰で。責任をとり彼らは今後はもう、表舞台には立てないからだ。

 けれども平民として暮らしていくよりは、遥かにましであり。

 セオドアも確かに助かる。領地管理まで仕事を振られたら過労死コースだ。


 セオドアの母親であるクラリスは、この際に離縁した。セオドアをバーディ家に入れるためだけの、もともと形だけの縁組でもあったから。

 以外なことにレティシアの父親は亡くなった妻一筋な人で、セオドアが跡を継いだらクラリスとは予てから別れて隠居するつもりであったらしい。それが本家侯爵家とのやり取り。

 隠居が早まったのは――亡くなった妻の忘れ形見をきちんと教育できなかったからと、彼も反省している。

 そしてクラリスも。彼女はできるなら、レティシアをきちんとしたレディにして嫁入りさせたいと躾け直しを、教育を取り組んでいたのに――本気で良い人だったから気落ちしているらしい。彼女はその為に侯爵家から頼まれ、仮とはいえ継母となったのだ。ある意味家庭教師として。自分が力不足であった、と……。


 その分スピカが、彼女に教えを乞うことになった。

 何せ、未来の義母。

 そして男爵家から伯爵家に、何故かランクアップで、大変になってしまったから。

 スピカの父母たちもセオドアの母と良い関係に。彼女は父母たちが今後無理な社交方面でレトラン家を助けてくれることになり――また、元気になってくれたら良いが。人間、役割があれば生きる目的になるタイプもいる。



 そしてスピカも未来の伯爵夫人として、今後も堂々と王太子殿下の御要望に応えることができて――むしろ、伯爵夫人なら、男爵令嬢よりも登城しやすくなる。


 王太子殿下、怖い……その手腕が怖い……。


「王太子殿下、あなた……もしやエステル様のドレスを今後も自分でデザインしたいから、て……」


 目を、逸らされた。斜め上に。

 王太子殿下、幼い頃より愛しい婚約者のためにドレスを自分でデザインしたくて……それが今、夢叶っている。スピカという存在はアルフレッドにとって生きた絵筆でもあり。出力用紙でもあり。

 もちろん、友人としても得難い存在。王太子でる自分に、対等に話してくれる友人ができることは――奇跡のようなものだから。

 


 祖父母もレトラン領にて暮らすことを許された。スピカには嫌な祖父母ではなかったから良かったと思う。複雑だが、兄については彼らもまた、責任があったから。

 しかし兄のことで祖父母はすっかりと元気をなくしているから……。


 その兄だが。

 引き取り手があった。


 彼の母だ。

 彼が、歪んだ最たる存在――理由。


 ファビアンは産みの母にまず頬を叩かれ――それから抱きしめられた。


 馬鹿な子――ごめんなさい。


 彼は直系の母が戻らねばならなかったと、改めて説明と教育をされている。

 彼の母の、家で。

 貴族の役割と意味を、改めて。


 母は結局――新たな子を孕むことがなかった。

 初恋の旦那さまと、結ばれることができたというのに。

 つまりは、そういうことである。

 いかに受け入れる土壌があっても、種が無ければ実もならぬ。

 それでも政略はあるし、種もないのに愛を捧げて大事にしてくれる妻に、その格上の旦那様はすっかりと絆されていて。

 先の妻が身籠れないことを気に病んだことに、逆に申し訳なくなっているとか。今では隣国で子まで育てている彼女らとは、和解しているらしい。

 だから、彼は引き受けてくれた。

 ファビアンを。そしてレティシアを。

 それは我が子として――。


 ファビアンとレティシアに、罰はきちんと下された。


 彼らは一生――王城に上がることを禁じられた。


 それは貴族としては死んだも同じく。


 それでも、母親たちは彼を引き受けた。

 監視する役と――血を、繋ぐために。

 きちんと教育し直すことを条件に。


 そしてファビアンとレティシアは、互いに好き合う気持ちは――なんと本物だった。

 レティシアはそれでもファビアンと一緒にいたいと。


 彼のことを――聞いたのに。継母を押したことを。何れ生まれる弟妹を殺したことを。


 それでも彼をきちんと好きだったから。彼の子を、産んでも良いと。

 ファビアンも平民に堕ちるはずだった自分を引き受けてくれた母と、義父に。その愛に。

 そしてそんな自分を受け入れてくれて、好いてくれる存在に、何か思うこともあったのだろう。


 ファビアンはやがて、レティシアが身籠り――我が子ができたときに。幼い自分の愚かな罪を思い出し、その罪の重さに改めて反省した。

 贖罪として自ら貴族を辞め、領地の孤児院や老後院の下働きとして、過ごしているという。

 レティシアはそんな夫に付き合っているという。彼女も変わったのだろう。

 バーディ家の彼女の父親や祖父母も、そちらで同じく引き取ってもらえたからだろうか。



 だからファビアンとレティシアの子らの世代は許された。

 王城に上がることを。

 その子たちがデビュタントを迎えたとき、スピカから真新しい衣装が贈られたという。

 まだまだ茨の道を歩かねばならない彼らの、護りとなるように。


「姪っ子たちはなんも、悪かねぇです」

 と。

 悪い因果は切らないとですよ。


 風呂敷たたみたたみ。

 スピカの生前の実力(?)を説明するとすれば「壁」ということで。ひっそりとすごかった設定。わかる方にはおわかりかと。それから今世でもまた精進したスピカさんです。

 江戸時代みたいに名字に家禄がつくような世界観なイメージです。だから跡取りが大事にされるから…。


 エアコン、いろいろとご心配やご提案頂戴しまして。ありがとうございました!

 たかがホース…されどホース…。

 私は数年前にあま◯んで買いましたが、ドレンホース詰まり解消のポンプ、買っといて良かったと、改めて思っているところです。

 しかし、買い替えるしかない気配はする…。確認したら保証はギリギリあと一年(数カ月)残ってはいたけど…

 ドレンホースからはポタポタと出てるんだけどなぁ…思い出したように、ポタっ…と…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ