EP3.凶暴なモンスター
サージャス公国 ルーデルン山脈。
頭上には鋭く尖った岩峰が連なり、陽の光を遮るように影を落としている。左側には垂直に切り立った巨大な岸壁がそそり立ち、その表面は無数のひび割れと、わずかに生えた苔で覆われている。
右側は深く、底の見えない霞んだ谷底へと続く、落下したら命はなさそうな険しい断崖だった。
「やれやれ…険しい道じゃのぉ」
トルティヤはとぼとぼと道を歩く。
すると前方から、息を切らした三人の人の影が必死の形相で現れる。
「なんじゃ?」
トルティヤは訝しげに三人を見つめる。
「おい!そこの人!早く逃げたほうがいいぞ!」
眼帯をつけたガタイが良い冒険者らしき男が、喉が張り付いたような声で慌てたそぶりで叫ぶ。
「やばいモンスターが追ってきてるんだ!」
ピンク色のマントを着込み、メガネをかけた魔導師らしき男が、今にも泣き出しそうな声で怯えたように呟く。
「我が剣術が全く通じないとは」
オルカ族の戦士らしき人が、大剣を担ぎ、荒い呼吸を繰り返しながら息を切らしている。
「やばいモンスターとな?」
トルティヤは興味深そうに首を傾げる。
「とにかく早く逃げろ!食われちまうぞ!」
眼帯の冒険者はそう叫び、振り返ることなく、仲間二人と共に足早に道を下っていった。
「なんじゃ、騒々しいのぉ」
そして、トルティヤがゆっくりと道を登り始めた時だった。
「ギャォォォォ!!」
山全体を震わせるような、けたたましい咆哮が遠くから響き渡り、徐々に近づいてくる。
次の瞬間、頭上の岩陰から、巨大な影が翼を広げて舞い降りた。
それは、黒々とした羽や異様に発達した体つきがコウモリを思わせ、顔つきは鋭い牙が並ぶドラゴンという、おぞましい見た目をしていた。
そのモンスターは、獲物を定める鋭い眼光でトルティヤを捉え、つんざくような咆哮をあげてトルティヤに近づいてくる。
「ほう…骨がありそうじゃな」
トルティヤは魔力を高める。
「ギャォォォォ!!」
コウモリ型の翼が大きく羽ばたき、鋭い風の刃を生み出す。
次の瞬間、強力なカマイタチがトルティヤを襲う。
「はっ!」
トルティヤはカマイタチを回避する。
「ドコーン!!」
すると、背後の岩壁が崩れ来た道が塞がれてしまった。
「なるほど…逃げ場はないということじゃな…」
トルティヤはニヤリと不敵な笑みを見せると、モンスターと対峙した。