EP1.はちゃめちゃしてやがる
130年前 サージャス公国 ガラタ高原。
高原には爽やかな風が吹き抜け、空は灰色に染まっていた。
まるで、今にも雨が降り出しそうな、重苦しい雰囲気だ。
そんな中、四人の人物がそこにいた。
「ひっ…ひぃ、お助け」
一人の魔導師が尻もちをつきブルブルと震えている。
その横には、胸に大きな剣の傷跡を残した、冒険者らしき男が力なく倒れていた。
更に、その隣には全身に黒い焦げ跡が広がる筋骨隆々の男が泡を吹いて倒れていた。
「なんじゃ?もう終わりか?」
トルティヤは魔導師を見下すように呟く。
「有り金!これ…全部!だから勘弁してください!」
魔導師は懐から金貨の入っている袋を出すと、それをトルティヤに差し出す。
「ふん…自ら決闘を申し込んだくせに、骨のない奴じゃ」
トルティヤが金貨を受け取ろうと近づいた瞬間、魔導師がニヤリと笑う。
「バーカ!やすやすとあげるかよ!雷魔法-雷霆-」
魔導師の体から金色の電撃がトルティヤに稲妻のように襲いかかる。
「やれやれ…そんなことじゃろうと思ったわい」
だが、トルティヤはそれを、寸前であっさりと回避する。
「なに!?俺の不意打ちがかわされた!?」
魔導師の顔が一気に青ざめる。
次の瞬間、雷の拳が、空気の壁を破るかのような勢いで魔導師の顔面にめり込む。
「ごはっ!!」
魔導師の顔は凹に歪み、吹き飛ばされる。
その一撃を受け魔導師は気を失う。
「雷魔法-聖者の鉄槌-…なんじゃ、もう終わりか?不意打ちまで使っておいて、情けないのぉ」
トルティヤは呆れた表情を見せ、気を失った魔導師の懐を漁る。
そして、先程魔導師が見せた金貨袋を手に取る。
「…ふむ。少ないが許してやろう」
トルティヤは金貨袋の中身を見ると静かに頷いた。