EP9.トルティヤvsクロウリー
「そ、そうだ!俺は天才なんだぞ!魔法だって三つも使える!お前は二つ!つまり、お前より俺は天才ってことなんだよ!」
クロウリーは早口でまくしたて、必死に自分の理論を展開する。
「おもしろいやつじゃ…実はワシも天才でやらしてもらっててのぉ。キャラが被ってしまったが故に、ついつい笑ってしまった」
トルティヤは笑いを収め、クロウリーに告げる。
「だけど、お前は魔法を二つしか使えないんじゃ?というより、普通の複数魔法使用者は二つしか使えないはずだろう!」
クロウリーはトルティヤの言葉にさらに困惑し、問い詰める。
「誰が二つしか使えぬと言った?」
トルティヤはそう呟くと、笑いを完全に収め、真剣な表情になる。
そして、次の魔法を詠唱する準備に入る。
「斬魔法-逢魔の鍵爪-」
トルティヤが魔法を放つと、不可視の鋭い斬撃が放たれる。
それは、威嚇するようにクロウリーのすぐ真横を狙って放った。
「…!!」
その斬撃はクロウリーのすぐ真横を凄まじい速さで通過していった。
彼は何が起きたのか理解できずにいた。
そして、そのまま斬撃は、奥にある大木に直撃する。
「メキメキメキ…」
大木は悲鳴のような音を立てて真っ二つに斬れ、メキメキと音を立てて折れていった。
「…三つ目の魔法!?俺以外にもそんな人が…」
クロウリーの表情に驚愕と焦りの色が濃く見える。
トルティヤの実力が予想を遥かに超えていたことに気づき始める。
「まだまだ行くのじゃ!ワシの魔法はこれだけではないわい!雷鳴魔法-雷光千鳥-!」
次の瞬間、トルティヤからバチバチと音を立てて雷で形成された巨大な鳥が素早い速度でクロウリーに迫る。
「四つ目だと!?」
クロウリーは状況に慌てるも、冷静に回避行動に移る。
雷鳥が彼の横を通り過ぎる。
「これで避けたと思うたか?」
トルティヤはニヤリと呟く。
「なに!?」
クロウリーがトルティヤの声に誘われて後ろを振り向く。
そこに、先ほど真横を通過していったはずの雷鳥が、軌道を変えてこちらに向かってきていた。
「ほれ、お終いじゃ」
そして、雷鳥はクロウリーに直撃する。
「ぐぁぁあああ!」
クロウリーは鳥の直撃を受け、体中を電撃が走り、悲鳴を上げる。
「…はぁ、ぐっ」
クロウリーは地面に倒れ込む。
全身が痺れ、呼吸が乱れている。
「どうした?ワシより『天才』…なんじゃろ?」
トルティヤがゆっくりとクロウリーに近づいてくる。
「へっ…そんな魔法の攻撃…」
しかし、クロウリーはゆらゆらと体を震わせながらも立ち上がる。
「俺にとってはモーニングルーティンみたいなもんだ!」
クロウリーは息を切らしながらも、強がりを言って立ち上がった。
その目にはまだ強い戦意が宿っている。
「ほう。その辺の雑魚とは違うようじゃな」
トルティヤはクロウリーのタフさに感心し、後ろに下がり距離をとる。
「さ…まだここからだぜ!」
こうして、二人は草原で再び向かい合った。