2.配信終わりに、次回へ向けて。
「よし、初回配信はこんな感じで良いかな」
俺はそう言いながら、異世界と配信の接続を切った。
いまの映像は、魔法使いの少年に助けられた子供の瞳に映っていた光景である。どちらの世界にも、パラレルワールドを認識する才能に恵まれた者が、一定数存在しているらしい。その中でも俺は特別で、明確に異世界を認識したうえ、それらの繋ぎになることができるのだった。
これは生まれながらに得ていた力であって、ある奴曰く『神の領域』だとか。
「よーしよし、これだけ再生数があれば収益化も近いな」
もっとも、俺はそんなこと興味などなく。
日々をダラダラと過ごすことが、至上の目的だった。
そんなこんなで、こうやって奇想天外な刺激に満ちている異世界の映像を流せば、こちら側の生活に飽き飽きした奴らが見てくれる。そうやって再生数と登録者数、その他にも条件はあるが、達成は時間の問題だった。
「……うん。だったら、次の標的は――」
「なーにをやってるんです!?」
「噂をすれば、お前か。……エリザ」
などと、ニヤニヤと今後の生活に心を躍らせていると。
先ほどいった『ある奴』が、妙に鼻息荒くして姿を現した。
「お前か……じゃないです! 貴方はまた、そうやって力を無駄遣いする!!」
「うるさいなぁ、良いだろ別に。俺の持ってる力なんだからさ」
「影響力を考えなさい、というのです!!」
声のした方を振り返ると、そこには一人の幼い女の子の姿。
金色の髪に、赤の瞳。清楚な印象を受けるワンピースドレスを身にまとい、一見すれば大人しい印象の少女であった。だが実際のところは、常にキーキー騒ぎ立てる小姑のような奴。
彼女曰く、こちらの世界担当の女神だ、とのことだが……。
「歪みが発生したら、困るのは貴方たちですよ!?」
腰に手を当てて、プンスカと怒る姿には威厳など欠片もなかった。
ちなみに、歪みというのはこっちに発生しているダンジョン、のようなもの。本来あるはずのない構造変化が発生し、生態系や、人々の暮らしに影響を与えるとからしい。
だけど俺としては、これといって興味がなかった。
「あー、もしヤバかったらエリザが何とかしてくれよ。女神なんだろ?」
「本当にメグルは、いくつになったら聞き分け好くなるのです!!」
「それ、ブーメランじゃない?」
「どこがですか!?」
適当にあしらいながら言うと、エリザは髪を逆立てながら吠える。
俺はそんな彼女の声に耳を塞ぎつつ、アーカイブの編集を始めていた。これをどうにかしないと、今夜は眠れなさそうだ。
そんなわけで、早く少女にはご帰宅願いたかったのだが……。
「今日は言うこと聞くまで、絶対に動きませんからね!?」
「は……? マジかよ。うぜぇ……」
「ムキィーっ!?」
どうにも、テコでも動かない様子だった。
だが、煩いだけなので無視で良い。
それに――。
◆
「すやぁ……んふ、かすたーどぷりん……」
「なーにが、女神様だよ」
――これ、このように。
お子様は年相応なお子様らしく、日付が変わる前におねむになっていた。
俺はそんなエリザを横目に見て苦笑しつつ、パソコンでの作業を進めていく。こうやって間抜けているから、俺のような悪知恵だけの奴に出し抜かれるのだろう。
もっとも、そんなこと俺が知ったことではない。
「――さて、と。これで、完了!」
俺は編集を終えて、アーカイブを公開する。
すると間もなく再生数が動き始め、コメントが付き始めた。
その中にあったのは、こんなもの。
『どうせ、合成だろ』
言葉こそ違うが、疑う内容は多かった。
だけど、これは正真正銘のホンモノ。
俺は口角を歪めて、こう呟くのだった。
「いまに見てろよ、間抜け共め……へへっ!」――と。
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