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プロローグ 世界最強のニート、親から最後通告を受ける。







「お前、一ヶ月以内に仕事を見つけないと追い出すからな」

「…………え、なんだって?」




 ――羽間はざま家のリビングにて。

 俺は父親から睨みつけられ、そう宣告されてしまった。

 だが、あまりに突然なことであるがゆえに、まず理解が追い付かない。せめて何かしらの弁明をしようと思って口を開いた。



「そんな、突然――」

「どこが突然だ!? 大学を卒業して八年、一度も働かないでよく言えたな!?」



 だが、聞き入れてもらえる様子はまるでなさそうだ。

 こうなっては仕方ない。俺は大きくため息をついてから、父にこう告げた。



「あのな。空白期間が八年もあって、どこに勤めろっての?」

「開き直りやがったな、このごく潰し……」



 すると彼は拳をわなわなと震わせて立ち上がり、いまにも殴りかかりそうな体勢になる。俺はそんな相手に対して、肩を竦めて続けた。



「はいはい、手を出したら暴行罪ね。現役警察官が、家庭内暴力かぁ……」

「……お、おのれ!?」



 こう言っておけば、父は俺を殴れない。

 彼は何よりも自身の体裁が第一。そのため俺のことも、都心に働きにでて帰ってない、ということにしているくらいだ。

 そんな相手なのだから、手玉に取るのは簡単――。



「……あぁ、もうそれで構わん」

「――え?」

「貴様のような恥、世に出す方が迷惑だ。いっそのこと、ここで――」



 そう考えていたら、なにを血迷ったのか。

 父は台所の包丁を手にして、虚ろな眼差しをこちらに向けてきた。

 これはヤバい。この男はもう落ちるところまで、落ちてしまっているのだ。



「ストップ! 俺が悪かった、親父!」

「…………」

「俺、頑張って仕事探すからさ!? な!?」

「言ったな……?」

「……へ?」



 そんな無敵の人に対して、今までの対応は何の意味もなさない。

 俺は必死に平謝りする――と、親父はピタリと手を止めて、スマホを取り出した。そして、何やら再生ボタンをタップ。すると、



『俺が悪かった、親父! ……俺、頑張って仕事探すからさ!?』



 完全に嵌められた。

 そのことを理解するまで、数十秒の時間を要した。

 父はそれを何度も再生しながら、勝ち誇った視線をこちらに向けている。そんな姿を前にして、俺は思わずその場にうなだれて叫ぶのだ。



「これが――」




 滂沱の涙を流しながら。




「これが、人間のすることかよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」




 こうして俺、羽間めぐるは職探しをすることになるのだった。







「……つっても、何すりゃいいんだ?」



 俺は自室のパソコンで求人情報を検索しながら、気怠く頬杖をついて言った。

 なにせ大学卒業後にニートになって、そのまま八年である。学部通りならエンジニア系の職種だが、激務に対して薄給なので論外。俺に見合う仕事は、他にあるはずだった。


 だとすれば、いまから作家でも目指してみるか。

 そう思ったりしたが、小論文でさえ面倒くさいのに小説一冊分なんて、書けるだろうか。それにWEB小説でいまからランキングを駆け上がると考えても、一ヶ月では時間が足りない。


 それなら次は、このイケボを活かして声優か。

 ――いや、なしだな。有名になりすぎたら、私生活の時間がなくなってしまう。



「はー……マジで、八方塞がりだな」



 などと、俺はこの世の不条理を嘆きながら天井を見上げた。

 大きく伸びをして、滲んだ涙を拭い、ため息一つ。

 その時だった。



「……ん、そういや。ダンジョン配信って、いまどうなってるんだ?」



 唐突に自分が過去に仕掛けた遊びを思い出し、検索をかけたのは。

 世界に異世界ファンタジーのようなダンジョンが発生してから、早五年ほど。それの仕掛け人というのも、実をいえば俺自身だった。

 俺にはちょっとした遊び程度の能力がある。



「ま、金にならない無駄な能力だけど」



 それというのも『異世界と現実を繋ぐ力』である。

 自分で行き来もできるのだが、命の危険がある場所に自ら足を運ぶなんて馬鹿げていた。そんなわけで、悪戯として現実にダンジョンを繋げたのが五年前。

 何やらいまでは、ダンジョン配信、というものが流行しているそうだが――。



「あー……スライム相手に逃げちまったよ」



 やはり、こっちの人間に魔物の相手は無理なようだった。

 しかしこのような動画で、再生数はトップクラス。さらに言ってしまえば、広告料などでそれなりの金額を稼ぎ出せるようになっているらしい。



「まったく、こいつら世の中舐めてるな……」



 最近の若者が、なんとも心配になる俺だった。

 これだったらもっと、リアルな映像――。



「――ん、だったら俺が繋げばいいじゃん」



 その時である。

 まさしく雷に打たれたような衝撃に襲われたのは。

 俺は思わず口角が歪むのを隠さずに、ダンジョン配信サイトに自身のアカウントを作る。そして、キーボードをカタカタと鳴らしながら呟くのだ。



「これで、よし……!」――と。





 そして次に、配信画面へ映し出されたのは。

 一人の魔法使いが、一体のドラゴンを前に立ちはだかっている姿だった。


 


なんだこの男、最低すぎんか……?(ぉぃ




面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




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