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『和尚さんと速キツネ』

作者: 成城速記部

昔、キツネがあらわれては悪さをして、村人たちを困らせていました。村人たちは、お寺の和尚さんに相談すると、和尚さんは、キツネがお寺にあらわれたときに何とかしてやるから、かわりばんこに、油揚げを奉納することと、ついでに般若湯とか白茄子なんかを奉納するように言いました。嫌ならいいんだよ、という優しい言葉をつけて。

村人たちは、キツネと和尚さんとどっちが悪者なのかに悩みながらも、当初の目的を達成することを優先することにしました。

何日か後、お寺に奉納された油揚げがなくなっていました。キツネが近くにいると思われます。そのうち姿をあらわすだろうと思って、和尚さんはのんきに過ごしていました。

しばらくすると、小僧さんが和尚さんを呼ぶ大きな声が聞こえました。和尚さんが行ってみると、前代未聞です。御本尊様が二体にふえているのです。別に困らないので、このままでもいいのですが、キツネを拝むのはちょっとしゃくです。ということで、御本尊様に化けたキツネを懲らしめたいのですが、どっちが御本尊様かわかりません。

これ、小僧、プレスマンを二本持ってきなさい。

はい、和尚様。色はどうしましょう。

キツネだからな、紺がいいのだが、紺プレスマンはないから、キツネ色に一番近い、黄色プレスマンにしなさい。

というようなことで、二体の御本尊様にプレスマンを持たせまして、

これ、小僧、朗読をしなさい。

はい、和尚様。でも、お教えください。なぜでしょう。

うちの御本尊様は、速記がお好きだから、朗読をすると、速記をお書きになるではないか。

そうなのですか、和尚様。

しっかりしなさい、お前がキツネじゃないだろうな。いいから、早く朗読しなさい。

というようなことで、朗読が始まりました。

キツネは、所詮キツネですので、朗読が始まると、速記を始めました。隣の御本尊様を見ますと、速記なんかやっていません。舌打ちをしましたが、時既に遅し。隣を見た仕草と舌打ちの音で、キツネであることがばれました。

キツネは足かせをつけられ、逃げられないようにされて、来る日も来る日も速記の練習をさせられました。御本尊に化けることは禁じられませんでしたので、速記をする御本尊ということで、ある程度人気が出て、毎日たらふく油揚げを食べて、それなりに幸せに暮らしましたとさ。



教訓:キツネといえば悪さをする、というイメージがつくと、なかなか払拭しがたい。

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