第4話「5人の強さ」
物語を読んで頂く前にアルカティアと魔石について御少し説明したいと思います。
アルカティアは四つの大国で出来た世界で、エウーロスは東の大国に当たります。
各国が魔力を扱う共通点は有るものの国の文化や特徴は変わります。
この若輩の物語では他の国は使用しないので各国の文化や特徴は今後少しずつ説明していきます。
エウーロスは基本的に杖や魔道具は若干古来的で魔法も読者様が大体知るスタンダードな魔法を使います。
魔法や魔術の伝統を重んじており自国・他国共に「魔天の国」と呼ばれている。
続いて魔石についてですが、本編に出て来た魔石はエウーロスの鉱山でしか見つからない大量の魔力を秘めた石で、使用方は石の力が未知数な故にエウーロスでは日常生活用品のみに用いられる法律となっている。
故に軍事的利用(戦闘に使用)する事は犯罪とされている貴重な品と言う設定です。
その魔石を何故、戦闘強化として扱われているかの説明も徐々にしていこうと思いますので、今回は"魔石を戦闘具として利用するのは本来は犯罪"と言う認識の元で読んで頂ければ幸いです。
「4月10日・15時00分」
虎型の魔物)グルァァァァア!
ドォォォォオン!
虎型の魔物がアンドリュー、カルロス、アシュリー、セルウィント、ジェニーに襲い掛かろうとするが横から魔力の光線が虎型の魔物を狙った。
エリオット)……
その光線を放ったのはエリオットだった。
だが虎型の魔物は少し魔力の光線に直撃したにも関わらず傷一つ無くムクリと何事も無かったかの様に立ち上がる。
エリオット)やはり私達一般の魔道士の攻撃など、無に等しいか……動きを一瞬封じたくらいか……
エリオットは魔物の頑丈さを目の当たりにし、自身の無力さを確認する。
スーツの男1)司令官!
スーツの男2)私達も微力ながら援護します!
エリオット)いや…今のを見てた筈…こいつ等に私達の火力では軽く吹き飛ばずのが精一杯だ…
スーツの男1)そんな…
ズキン!
アンドリュー・カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)うっ!?
エリオットやスーツの男達が敵の戦闘力に慄いていたその時、アンドリュー、カルロス、アシュリー、セルウィント、ジェニーの脳内に激しい痛みを感じ5人 は床に這う。
アシュリー)あ…頭が…
ジェニー)痛い…
カルロス)これは…多量の情報力が…瞬時に…
アンドリュー)んな時に冷静に解説する奴があるか!?
セルウィント)どこも冷静じゃないよ!
5人が床で項垂れているとエリオットが5人に言う。
エリオット)君達!右手に魔力を込めろ!
そうすれば魔石に込められた力を制御出来る筈だ!
セルウィント)いきなりそんな無茶な!
アンドリュー)うおりゃ!
カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)!?
キィィィイ!
エリオットの言葉にたじろぐセルウィントを含めたカルロス、アシュリー、ジェニーだが、アンドリューだけは何も考えずにエリオットの指示通りに動いた。
アンドリューが右手に魔力を込めると光っていた魔石が更に強く光る。
その光はエバークラフトの地下一帯を包みアンドリュー達の側に居た者達(虎型の魔物も含めて)目を強く閉じる程眩かった。
アンドリュー)うお?
痛みが引いてんぞ?……それどころか身体が軽くなって_____
ボボボボボボボ!
ジェニー)ぎゃああああああ!
アンドリューが身体の変化に喜ぶのも束の間アンドリューの身体中に火が纏う。
瞬時に火が纏ったアンドリューを見てジェニーは絶叫しだした。
アシュリー)アンドリュー!?
アンドリュー)あれ?身体が全然熱く無いぞ?
しかも頭の中にあらゆる魔法スキルが習得されていってやがる!
アンドリューは身体中が発火状態で有るが普通に喋り軈て火はアンドリューのはめているリングに吸い込まれた。
アンドリュー)……
セルウィント)アンドリュー……その格好は?
アンドリューは学生服から魔道士の格好となっていた。
魔道着の上半身は目元から首を隠すフェイスカバーになっており、アンドリューの髪の色も赤く染まり髪型もオールバックになっており見た目も雰囲気も変わっていた。
アンドリュー)おお!何かすげぇ!ぶわっと強くなった気分だ!
アンドリューはぴょんぴょんと上機嫌に跳ねる。
虎型の魔物)グルルルル!
虎型の魔物3匹はぴょんぴょん跳ねると言う、目立った行動を取るアンドリューに一斉に襲いかかった。
虎型の魔物)グルル…!?
カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)!?
ガシッ!バゴォン!
虎型の魔物の左右2匹はアンドリューに首を掴まれ真ん中に居た魔物は即座に蹴飛ばされた。
アンドリュー)おお!何か軽いぞ!
スーツの男1)凄い…
スーツの男2)上級の魔道士でも奴等の動きを見切るのすら難しいというのに…あんなに軽々と…
エリオット)魔石の力は伊達じゃ無いって事か…
ドォォォォオン!
エリオット達が感心しているとアンドリューは両手から魔力の光線を放ち首を掴まれていた虎型の魔物2匹の顔が一気に粉々に消し飛ぶ。
虎型の魔物)グルル…グゥゥ…ガウガウ!
エリオット)威力も並みじゃ無いな……薬物投与で強化でもしない限り出せない威力だ…
スーツの男1)はい…ただ威力も凄いですが彼の魔力の扱いへの順応速度が比べものじゃ無い…
エリオット)やはり選抜者は間違い無かった様だ…
残った虎型の魔物はアンドリューに恐れ外に逃げて行く。
エリオットとスーツの男達は只々魔石の力と、それを瞬時にものにするアンドリューのスペックに驚く。
アンドリュー)カルロス達もやってみろよ!
カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)……うん……
カルロス、アシュリー、セルウィント、ジェニーは顔を見合わせて戸惑いながらも覚悟を決めた表情でゆっくり立ち上がる。
カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)……
ギュギュウ…
4人は右手の拳を握り締め魔力を込める。
その手は震えており、筋力でその震えを押し殺す様に
キィィィイ!
するとアンドリュー同様に魔石が光り出す。
カルロスは黒、アシュリーは藍色、セルウィントは青、ジェニーは白く光り出し4人の脳内にも魔道士のスキルが刻まれる。
カルロス)これは…軍で教わる魔法の基礎から応用の技術…
アシュリー)脳神経に流れ込んで来る…
セルウィント)筋細胞が太くなっていってる気がする…
ジェニー)うん!何かやばい!
よく分かんないけど凄く凄い!(?)
カルロス、アシュリー、セルウィント、ジェニーも魔石が込められたリングの力を肌身で感じ感情が昂る。
そしてカルロスの身体には岩石、アシュリーには雷、セルウィントには水、ジェニーには風が纏い全てアンドリューのリング同様に吸い込まれた。
セルウィント)凄い…力が漲ってるみたいだ!
エリオット)漲っているのだよ…
ジェニー)え?
エリオット)そのリングに埋め込んである魔石は君達の現時点における潜在能力を引き出す魔法をかけた
身体能力は格段に上がっているだろうし、魔力も使用する量よりも少ない魔力で同等の魔法が放てるんだ!
セルウィント)魔石って……鉱山何かで低確率で入手出来るものですよね?
カルロス)ああ…入手困難な事も有り日常用品にのみ魔石の使用が法律で許されている…
ジェニー)それをこんな思いっきり武器的な物で使用して良いのかな?
エリオット)私は……軍や政府からその許可を得た立場にいる……まぁ詳しい説明はおいおいするよ……
アンドリュー)だな…今はそんな事言ってる場合じゃ無ぇーしな!
アンドリューは荒れ果てた会議室の外を見ながら今最優先される行動は何かを把握する。
カルロス)……どうやら……状況的に俺達は戦わなきゃならないみたいだな……
アシュリー)覚悟…固めた方が良さそうね…
セルウィント)仕方ない…乗り掛かった船だ…
ジェニー)何か面白そうだしね!
セルウィント)おい!ジェニー!
遊び心でやるなよ?
油断でもしたら本当に死んで_________
アンドリュー・ジェニー)ひゃっほーい!
セルウィントの注意も虚しくアンドリューとジェニーらスキップをしながら事務室から出て行ってしまう。
セルウィント)お、おい!
カルロス)まったく……あいつらは……
アシュリー)まぁ向かう方向は同じだし…私達も行きましょ!
セルウィント、カルロス、アシュリーも走って2人を追いかける。
スーツの男1)大丈夫ですかね?
エリオット)まぁあの魔石と適合した者達だ…みすみすやられはしないだろ…
スーツの男2人は心配そうな目をしており、エリオットも心配ではあったが覚悟を固めた目をしていた。
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「4月10日・15時15分」
ウォルター)よーし…ここが中枢だな……
虎型の魔物)グルルル……
鴉型の魔物)ガーガー……
ウォルターは魔物と共にエバークラフトの地下室の奥にある中枢部の魔石保管室に来ていた。
保管室の中央には結界で守られた魔石が有る。
また周りにはウォルター達に殺された警備員が複数倒れていた。
ウォルター)ふん…一般の魔道士が私達に勝てるわけ無かろう…
ヒュン!
ウォルター)!?
ドォォォォオン!
ウォルターは保管された魔石を結界ごと破壊しようと刀を振り翳したその瞬間、強い魔力を感知し後ろを振り向く。
だが振り向いた直後に魔力の光線に因る爆発が起き保管室の扉の前で見張っていた魔物が数体吹き飛ばされた。
ウォルター)…あ?
保管室の辺りは爆発に因る霧が出ていたが、徐々に霧が晴れウォルターの目の前には5人の人影が見える。
アンドリュー・カルロス・アシュリー・セルウィント・ジェニー)……
ウォルター)何だお前等……
アンドリュー)正義の味方……とだけ言っといてやる……
ウォルター)あ?正義の味方だ?
面を隠してる様な肝の小さい連中が戯けた事ぬかしてんじゃねーぞ?
アンドリュー)肝が小さいかどうかは面じゃなくて行動と実力で見せてやるよ
アンドリューとウォルターは互いを睨み合い牽制する。
ウォルター)フン…節穴ってのはてめぇらの事を言うんだろうなぁ……ここに来る途中に倒れた兵達を沢山見た筈だ……
セルウィント)……それが?
ウォルター)つまりここに居る連中では我々の相手が務まらな_________
カルロス)御託はいい……さっさとここから失せろ!
ギュコォッ!
カルロスが濃密な魔力を身体に纏わす様に放出する。
同時に他の4人も同等の濃密な魔力を身体に纏わせる様に放出させた。
ウォルター)……ほう?
それだけの魔力を濃密に凝縮させるとは対した魔力コントロールだ……しかもまだそれは本気では無いな?
面白い……少しは骨が有りそうだ!
ズォォォォォオ!
バチッ!バチッ!
ウォルターは身体から蒼く光る雷を放出させる。
ウォルター)貴様等如き……一太刀で終わらせてくれる!
シュッ!
ガシッ!
ウォルター)何!?
アンドリュー)あんた…俺等の事舐め過ぎ……
ウォルターは素早く居合いでアンドリューを斬ろうとしたが、速度を見切られ刀を抜く前に腕を押さえられてしまった。
ボッ!
アンドリューは右の拳に火属性の魔力を乗せる。
アンドリュー)最初から本気の速度で斬りかかって来れば倒せたのにな!
ウォルター)何だと!?
アンドリュー)てめぇもワンパンで終ぇーだ!
ズドーン!
アンドリューは火属性が付与された右拳でウォルターの顔面を殴り地面に叩き込んだ。
ウォルター)……
ウォルターはアンドリューの火属性が付与されたパンチを喰らい倒れる。
アンドリュー)うーし!皆んな!
野獣狩りだ!
ジェニー)よーし!誰が一番多く狩れるか勝負よ!
カルロス)おい!遊びじゃ無いって言ってるだろ!
セルウィント)こうなったら仕方無い…周りを警戒しながら魔物を倒していこう!
アンドリューとジェニーは声高らかに魔物を狩り出す。
カルロスとセルウィントは入り口とウォルターを警戒しながら魔物を倒していく。
アシュリー)私は警備員さん達を此処から脱出させるわね!
カルロス)ああ!頼んだ!
アシュリーは倒れた警備員を担ぎながら入り口に向かう。
アンドリュー)フレア!
ゴォォォォオ!
虎型の魔物)グルゥ!?
アンドリューは両手から低級の火属性の魔法を球型にして5体の虎型の魔物に攻撃する。
虎型の魔物はアンドリューの攻撃に当てられ身体中に火が周り熱くて苦しみ出し地べたを這う。
アンドリュー)低級の攻撃でもこの威力か……こりゃ良いな!
カルロス)おい!
魔物とは言え生物の命を簡単に奪っておいて楽しむな!
グシャッ!
カルロスは両腕を土属性で強化させた魔法で虎型の魔物の首を絞め首の骨を折りながらアンドリューの不謹慎な態度に説教する。
アンドリュー)おめぇも生物の命とやらを容易く奪ってんじゃねーか!?
しかも殺し方の絵面は俺より残酷じゃねーかよ!
てか軍人の息子が生命について語ってんじゃねー!
アンドリューとカルロスは互いの行動にケチをつけながら虎型の魔物達を倒していく。
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ジェニー)……
その頃ジェニーはエバークラフトの裏手の外で戦っていた。
大量の鴉型の魔物がジェニーを見つけるなり、一斉に嘴を尖らせながらジェニーに向かって飛んで来る。
そんか鴉型の魔物に対してジェニーは一切動かずジッと見ていた。
ジェニー)……よし!そこね!
ジェニーは何かを閃いたかの様に魔法陣からプラスチックの様な杖を出し右手に握る。
ジェニー)ウェンテ!
ジェニーは魔法の杖から竜巻を起こし鴉型の魔物は直撃する。
ただジェニーは一点だけを狙った風の魔法は徐々に風の領域が広がり霧散していた鴉型の魔物全てを巻き込み、羽根を切り刻まれ魔法が解けた頃には全ての鴉型の魔物が倒れる。
ジェニー)やったー!
ジェニーは倒せた事に歓喜し勢いよく飛び跳ねる。
アシュリー)ジェニーったらやるじゃない!
セルウィント)僕達も負けてられないね!
アシュリーとセルウィントは倒れた警備員全員をエバークラフトの外まで救出し物陰で警備員を避難させる。
ドォォォォオ!
バチチチチチチチ!
だがそこに大量の虎型と鴉型の魔物が猛攻して来て、セルウィントは両手で水の魔法で大波を魔物達に放つ。
その後にアシュリーは雷の魔法を放ち水は電気を通す為、大波を浴びている魔物達は身体が痺れ動かず、2人が魔法を解いた頃には息絶えていた。
アシュリー)ふぅ……凄い威力ね…
セルウィント)緻密にコントロールしないと町一帯にも被害を出しかねないね…
アシュリー)そうね…アンドリューとカルロスの方は片付いたかしら?
外に居た魔物全てをアシュリー、セルウィント、ジェニーが片付ける。
アシュリーはまだ中に居る人を含めてアンドリューとカルロスの安否を気にしていた。
ズガァァァァァァァァァアン!
アシュリー・セルウィント・ジェニー)!?
その瞬間エバークラフトの建物全体が揺れ出した。
次回へ続く。
今回やっと戦闘シーンを描く事が出来ました。
まだまだ戦闘シーンと言うには白熱さが物足りないですが、5人がそれだけ強くなっていると思って頂ければ嬉しいです。
今後5人が戦いを通して魔道士として人として成長する描写も描いていきたいと思います。