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インタールード  作者: 箱丸祐介
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第十話 全身全霊

皆さんお久しぶりです!私です!


久しぶりなんですがその上で最近わかったことの報告をば。

最近私の執筆傾向を自分なりに解析する機会がありわかったことがあるのですが。

私の執筆パターンって三パターンありまして、一つ目が完全脊髄で執筆してるパターン、連載中の物だとインタールード以外の作品(ワールドスターとかその辺)が該当するんですが、気分で執筆してその時点の最高の作品を書こうと努力してるもの。

二つ目はインタールードシリーズのようにある程度の方針と展開、筋書を決めて書いてる作品。

三つ目が私が脳内で試行してなっとくしたパターンを書き起こして書いて形にしてるパターンなんですが、どれも結局のところ書く時間が必要になってくるので。

どうしても一年とか半年単位で開くことが多くなってしまうことに気づきその上で読者の皆様にはガチ目の謝罪をしていきたい所存です。


これ、酔ってる状態で書いてるのでいつも以上に語彙力が無いと思いますが。

いつも見てくださってる皆様にはかなり感謝してますので、お付き合いいただいてありがとうございます。とあらためて言っておきます。

本当にありがとう! これからもよろしくね!ということで本編をお楽しみください!。


「ここが」

「こりゃあ何もねぇな」

「間違えた場所に送られちったんじゃねーのか?」

「間違い無いと思う、ここには門徒達と同じような力を感じるから」


先に出てきた3人が周りを見渡し、どこまでも続く白い大地に困惑しつつも、優牙だけは確信を持っていた。


「厄介なところに出たな」

「厄介も何も周りには何もねぇじゃねぇか」

「そうか、お前達には見えないのか」

「え、見えないんですか? あっ、お父さん!」


いきなり走り出したソフィーが、何も無い場所で足を止める。


「優牙、私と視覚を共有出来るか」

「難しい事言うね、五感には干渉できるだろうけど、上手くいくかな」


(言ってることは優那にやってた事の視覚バージョンだけど、他人から自分と他者へは難しいような。いや、優那から美香の間と同じ状態だから、出来る)


精神を集中させ、ドクの見えてる景色の1部を共有し、自分自身の視界と照らし合わせるように周囲を形成していく。


徐々に徐々に、3人の視界へと赤い水に浸された沢山の人達が視界に入る。


「っ、なんだよこれ」

「いわば貯蔵庫だろう、地上から持ち帰った戦利品達を置くためのな」

「何千人居るんだこの場所に」

「この人、死んでる」

「本当にここに集めた奴らの生死は問わなかったみたいだな」

「イレギュラーって一体なんなんだ、どうしてこれだけの人がこんな場所に」


「そういえばソフィーちゃんは?」

「お父さんを見つけたみたいだったけど」

「行こうぜ、桜や優牙の母親もいるかもしれないしな」

「う、うん」


走り出して行ったソフィーを追いかける、まるで埠頭に積まれたコンテナのように密集して置かれている人間たちと、赤い水の入ったケースを横目に歩く。


「ソフィーちゃん、なにか見つかった?」

「これ」

「親父さんじゃねぇか」

「こっちには桜がいる」

「母さんもだ、最近捕まえられた人はここにいるのかも」

「生きては居るようだな、だがここから出す方法は思いつかない、客人も来たようだしな」


無数の足音が周囲に集まり、5人の視界に入った白い肌の者達によって取り囲まれる。


「どっちかって言うと僕らの方が客人なんだけどね」

「あいつらにもてなしを期待するのは無理だろうな」

「人の海だな、突破できるとは思えねぇ」

「逃げることも不可能だろう」


「やあやあご客人、わざわざここまで殺されに来てくれるとは。裏切り者め」


周囲を囲んでいた門徒達が道を開け、その先から1人の男がゆっくりと歩いてくる。

雄大達3人が鳥肌が立つ程の重圧を感じ、心臓を握られるような感覚に襲われる。

言葉を失うように口を開いて、息を飲む。


「アスタルテ、わざと招き入れたな」

「不法侵入したくせに何を言う」

「母さん達を誘拐したろ、先に仕掛けてきたのはのはそっちだ」

「ほう、人間のくせに神に言葉を吐くとは、他の奴らとは違って見応えがあるな」


(ドク、退路は確保出来る? 一旦立て直そう)

(無理だな、何とかして逃げれればいいが。他の3人はほぼ硬直してる)

(2人で道を開こう)


2人がかりで飛びかかり、アスタルテを強襲する、守るように道を塞ぐ門徒に優牙は取り押さえられる。ドク自身もアスタルテに振り上げた拳を止められ、そのまま拳を握り潰される。


「出来損ないのノームが、私に敵うとでも?

なぁドク、お前さえ良ければ私の元へ戻って来い。お前は優秀だ」

「残念だったな、私はお前と違って誇りがある、邪念だらけの神に従うつもりは無い」

「ふっ、そうか!」


ドクの腹部をアスタルテの拳が突き抜ける、出血した先から、白い血が垂れ顔に苦痛を浮かべる。


「ドク!」

「やめろ! 優牙! お前が勝てる相手じゃない!」


門徒を振り払い優牙がアスタルテへと飛びかかる。


「行って、僕は自分で何とかする」


アスタルテからドクを引き剥がし、雄大たちの方へと投げ飛ばす。


「いい蹴りだ、私以外になら通じたろうな」

「速いね、見えなかったよ」


左足と額から血が垂れ、左足に走った激痛によって膝をつく。

優牙を囲うように門徒たちが動き出そうとした時、アスタルテが手で制した。


「放っておけ、どうせ出血死するさ」

「ごめんね、それは無いよ」


頬の血を拭い、立ち上がる。


「ほう、不思議な力を持っているようだな」

「1つだけ聞きたいことがある」

「君の度胸に免じて聞いてやろう」

「ここに捕まえてる人達は、なんのために集められてる」

「ただの贄だよそれ以上の説明が必要か?」

「そっか」


握り拳に力を込めた優牙の体に蒼白い粒子が集まる。


「ごめんね、思いっきりぶん殴らないと気が済まなそうだ」


アスタルテの顔に膝蹴りを入れ、追撃を入れようとしたが、怯みもしていないアスタルテに止められた。


「今のは効いたな、自分の血を見るのは初めてだ」


受け止めた手と反対側で鼻から垂れる白い血を拭い、そのまま優牙を殴る。


「大人しくしてれば、苦しまずに済んだのに。だが、お前の力には興味がある、1番最初に私の贄にしてやろう」


そう言ったアスタルテの胸元へ引き寄せられた優牙の身体が徐々にアスタルテの体内へと埋まっていく。


「優牙!」


「次はお前たちだ、地の果てまで追い込んで殺し、贄にしてやる」


「雄大! 下に戻ったらオアシスって組織を頼れ! きっと力になってくれる!」

「仲間思いだな、無意味だが」

「体に・・・力が・・・」


「準備が出来た」

「まだ優牙が!」

「無理だ、諦めろ」


「逃げるのか? ドクトリン・ゴッド・ウェーバー」

「借りは返す、覚えておけお前は眠れる獅子を起こした可能性もあるということを」

「ふっ、負け犬の遠吠えだ」


ドク達の姿がその場から消え、優牙の体は完全に取り込まれてしまっていた。


「直ぐにやつの元へ兵を送る準備をしろ!」



「ごほっ、がはっ」

「大丈夫か、ドク」

「見間違いかと思ってたが、あんたの血なんで白いんだ? あのアスタルテとかって奴の血も白かったよな、なにか関係があるのか?」

「少し詳しく話す、だがその前にオアシスへ連絡を入れよう、奴らが動き始めたら私たちだけでは抑えられん」


座り込み血を吐くドクを囲むように居た4人元へ足音が近づいた。


「誰か来る」

「ここはどこなんでしょう」

「日本だ、東京の住処へ飛んだつもりだったがここは境界都市だろう」

「ここで、知らん人間に会うのはいい方に転ぶと思えないな」

「いや、この感じ。大丈夫だ」


「よお、こっぴどくやられたみてぇだな」

「意外と早かったな」

「思った以上に匂うんでな、こっちに来い治療できる場所に案内してやる」


倒壊しかけでぼろぼろの建物にある外れかけのドアを開けた男は、下へと続く階段へと手招きする。

Yシャツに黒パーカーの男が階段を先導して、自宅のように慣れた足取りで歩き始める。


「優牙のおかげだが、ここまで戻れたのは俺たちだけか」

「あいつらの親玉、あれが出てきた時姿を見ただけで動けなくなっちまった。地の果てまで追うなんて言ってたが、本当ならやべぇぞ」

「まずはドクさんを治療して」

「その後にオアシスへ救援を求めるとするか」


「オアシスへは俺の方から連絡しておいた、自衛隊と警官にもな」

「そりゃ心強いって言いたいところだが、どうだろうな」


「ここだ、ここに寝かせろ」


蓋の上がったカプセルのような物の中へドクを寝かせる。


「ドク、奴らは本当に来ると思うか?」

「私を狙って来るだろうな、本人は来ないだろうが手下たちが。奴から見れば私はイレギュラーそのものだ、見つけた上でそれを見逃す事は奴はしない、そういう奴だ」

「もういいか? そろそろ休ませてやらんとな」

「ああ、大丈夫だ」


男がカプセルの蓋を閉め、中が液体で満たされていく。


「酸素マスクつけろよ必要かは知らんが、つかこれお前にも効くのかね」

「お前が直した方が早いさ」

「冗談言うな、お前らこっちへ来い」


「あんた何者なんだ?」

「柊哲、この境界都市の管理人」

「管理人? 無法地帯じゃないのかここは」

「表向きはな、調査するような連中は上しか見ない、今お前らがいる場所から下は俺の敷地でな」

「なるほど」


壁にモニターが大量に掛けられ、真ん中に操作モニターがある広い部屋へと連れていかれた。


「よっ、てっちゃん」

「やっと来たか朋ちゃん」

「その人は?」

「君たちが求めてるオアシスの人間だよん、朋っていうんだ、よろしくな」


明るい茶髪に制服のようなスーツを着たショートカットの女が4人の元へやって来た。


「こんなのに力を借りろって言ったのか?あいつは」

「実力は確かだよ、普段の言動と奇行さえ無くなりゃ俺も文句は無い。こいつとは一緒に仕事したくないし」

「そりゃ最高の褒め言葉だな、それで? わざわざここに集めた理由は?」


「ざっくりとここの使い方を教えてやろうと思ってな、それと作戦を立てる場所が必要だと思ってな」


操作モニターを慣れた手つきで操作し、別のモニターへ境界都市の地図が表示された。

ただし普通の地図には見えず、道路以外の場所が何かしらのマークで塗りつぶされ見えないほどに精巧に書き込まれた地図だった。


「この街には地下の警備用も含めて1万近いカメラがある、それと電源さえ落ちなければ迎撃用の火器も使える。表の廃墟もダミー用の建物に変えられるし、まあ人目につかないようにしないといけないが」

「なんのためにそんなにカメラが?」

「警備用と防犯用でな、ほんで今いる場所がここ、上は出せば作戦司令室になる。武器も沢山、朋ちゃんオアシスの全構成員にここへ来るように、こっちも4人は呼んでる」

「あんた詳しそうだけど、勝算はあると思うか?」

「無いな、お前らには無い」



「紹介する、でかい方がライムスキン、細いのがルーク、でかい獲物背負ってんのがグロウ。んで、この青髪のちんちくりんがミスティ、ミスティとグロウがスナイパーで援護。

ライムとルークは近接戦闘で前線を張る、自衛隊に要請したが手数は追加で300だけ、お前ら4人とオアシスの構成員を合わせても5000ちょい。

相手の規模にもよるが、全部の火器を使えても持って3時間、おまけに事態が起きなきゃ民間人は避難しないから、最低30分は火器は使えない」


「政府には?」

「言ったよ、言ったけどあいつら毎回毎回潰されなきゃ言うこと聞きやがらねぇ。だから、敵が来るのを察したら俺がテロを起こす、その予告もしておいた」

「上の設備はどうやって入れ替える?」

「入れ替えようの設備がある、電力会社をハッキングして夜中のうちにやっておくよ」

「そんなんができるならいっその事電車を全部止めちまえば良くねぇか?」

「馬鹿野郎テロリスト認定されるわ」


「敵の攻撃、ある程度は予想出来ねぇか?」

「恐らくは深夜から朝方に掛けてのタイミングだろうな、あっちから送られてくる量にもよるが、上とのアクセスが良い時間帯になるだろうな」

「アクセスが良いとかあるのか?」

「単純に空気が澄んでて星がよく見える時間だな、天界からこっちがよく見える」

「ある程度の時期はしぼれる訳か」

「早くて今日、遅くても1週間以内には動き始めるだろうな。指揮系統は全部お前に任せていいか?」

「別にいいが、俺は素人だぞ? もっと適任のやつがいるんじゃないか?」

「うちの取り決めでな、現場に立つ一番実力のあるやつが指揮を執る。俺を除けばこの場で一番強いのはお前だと思うからそうするってだけだ」


「雄大だ」

「あ?」

「お前じゃない、俺には雄大って名前がある」

「そりゃ悪かったな。じゃ、ある程度の説明はするから、あとは頼むぜ」



それからどれほどの時間が経ったのだろうか、慌ただしく動き回るオアシスの隊員や少しずつ街の姿を変えていく境界都市。

事情を知っている者だろうと、そうでないものだろうと。

変わっていく街の姿を見れば、その異常さに気付ける程に不穏な空気だけが街に流れていた。


『全火器システムの動作確認及び弾薬の補充完了いたしました。司令部付近のバリアシステムへの電力供給もまもなく完了します』

「優秀な設備だな」

「でしょ、ルイルイは優秀なんだよな~」

『優秀の定義にもよりますが、マスターはナビ代わりにして自動運転させられないのがクソだ、と申していました』

「確かにな、AIが方向音痴は正直笑い話にもならん」

『衛星映像を使ってのバックアップは可能ですので戦闘状況では問題はありません、そもそも私はマスターの戦闘補助と各種システムの管理を担っていますので。自動運転やナビゲートを出来るようにプログラムされていません』


「ま、不甲斐ない俺の指揮の補助を頼むよ」

『ええ、ちょうどお客さんも来られたようです』

「マジかよ、最短で来やがったか」

『いえ、マスターの想定よりかなり早いです。空間の歪みを検知、モニターに表示します』


カメラに映る大きな穴、その中から現れる神の使いとは思えない邪悪な雰囲気を纏う者たち、穴の中から現れる者たちは次第にカメラに収まらない程に数を増していく。


「奴らの仲間にしちゃ、ちと物騒な連中じゃないか?」

『神の使いが来ると思いましたが、これは少しばかり予想外の敵戦力といったところですね』

「そういや、定期的に聞いてたがその【神】ってのはなんなんだ?」

『あぁ、そういえば神という存在は人間の認識から消えているんでしたね。詳しい話はこれが終わってからしましょう、まずは敵を退けるのが先決です』


「あいよ。警報を鳴らして火器システムが使えるようになるまでどれくらいかかる?」

『いまマスターが動き始めて市民を叩き起こしていますので30分程度という所でしょうか』

「よし、ホープとソフィー達前線部隊を前に出せ! 自衛隊と残りのオアシス隊員は後方待機だ!」

『多勢に無勢かもしれませんねこれは、こちらを疲労させるのが目的でしょうか』

「だとしても奴らの狙いはドクなんだろ? なら奴の治療が終わるまでの時間を稼ぐしかないだろ」



「あらら、随分と禍々しい連中ですこと」

「ホープくん、最初に私が蹴散らすから次が撃てるようなるまでよろしくね」

「あいよ」


ソフィーは手に持った杖のような棒を強く握りしめる。


「大丈夫、何回も練習したし出来るはずよ。私だって戦えるんだから」


杖を持つ右手を迫りくる敵に向ける、軽く深呼吸をしたソフィーが森羅万神と囁く、その瞬間、雷のような音と共に敵の居た空間が削られ、敵が天を舞う。

蹴散らされた敵を見届けたホープは光の剣を作り出し、先陣を切る。


「いままでいい所無しだったからな、腹いせに大暴れさせてもらうぜ!」


先制攻撃を受けた敵の軍勢が突撃を始める。

圧倒的な戦力差の中立ち向かうようにオアシス隊員達も走り出す。


先陣を切るホープは天元具象で敵を薙ぎ払い、ホープの死角を守り敵を薙ぎ払うソフィー、順調に戦っていたように思えたオアシス隊員と2人だったがピンチは直ぐに訪れた。


「こほっ、流石に連発して撃ちすぎたかな」

「そろそろ限界か? ソフィーちゃん」

「まだ、大丈夫。私たちを逃がしてくれた優牙くんの為にも、頑張らないといけないから」

「なら、俺は全力でその守りを任せてもらうとするさ」


敵の大軍は少なくとも現時点で万を超える数が押し寄せている。

それを少数精鋭と言えば聞こえのいい人数で対処するとなればすぐに限界は訪れた。消耗の少ないホープの天元具象は確かにこの混戦では役立つが、消耗の激しい森羅万神をカバーする程の力はない。


「我らの脅威になる者が居るようだな」


馬に乗った頭部の無い者が1人、先陣を切って現れる。


「我が名はデュラハン! 神たちの手駒になるのは遺憾だが我らにも譲れぬ理由がある、貴様らの牙叩きおらせてもらうぞ!」

「なんだよ、言葉の通じる野郎も居るんじゃねぇか」

「でも、あれは」

「相当の手練れだな、ソフィーちゃん後ろは任せる」

「えっ?」

「奴の相手は俺がする」


お互いの集中が、周囲に威圧感を与える。

それは目に見えるような威圧ではない、たった1つお互いの命を賭けた戦いへの覚悟が、2人の死闘を魅了する。


「かかってこい、人間!」

「覚悟しろよ化け物、俺はいいとこなしで気分が悪いんだ」



「戦線は維持できてるが、このままじゃ数に押されるな」

『正面の戦線を押し上げる必要がありそうですが、各方面の部隊も増援を送るほどの余裕はなさそうですね』

「どうするべきだろうな」


戦闘指揮を任されただけで、一切の経験のない雄大にとってこの状況は補佐があろうとも難しくある。


「せめてもう1人、自由に動かせる駒があればな」


思考を巡らせる雄大の思考を遮るように司令本部のある建物へと何かが衝突し、爆音が鳴り響く。


「なんだ!」

「司令部東側に謎の飛翔物体が衝突! 内部から何かが出てきています!」

「指揮系統を確実につぶしに来たのか?」

『あまり望ましい状況ではありませんね、ここが崩壊すれば各部隊への指揮が乱れます』

「ならそっちには俺が対処しよう、ルイここの指揮はお前に任せる」

『いい判断です、微力ながら戻ってくるまでは最善を尽くしましょう』


司令部を飛び出し、東側へと落ちた飛翔体の元へたどり着いた雄大の目に映ったのは、まごうことなき異形の者。

しかしそれは、各部隊が戦線で戦っているようなものでは無く、機械的で殺戮を目的にした者。


【機械神型ガーディアン:ネメラオス戦闘行動開始】


「機械仕掛けの敵だと?」


身構える前にガーディアンが武装を展開し襲いかかる。

右側にキャノンのような銃、左手に剣のような武装を持つガーディアンの剣筋が雄大に襲い掛かり、咄嗟に回避した雄大の頬をかすめる。


「いきなりご挨拶じゃねえか、ならこっちも本気でいかせてもらうぜ!」


天地我相を発動し、ガーディアンの装甲を突く。

鉄の板を突いたようなその拳は弾かれるように強い反発に押し返される。

「傷1つつかないとは冗談きついなこいつは」


敵の剣筋を読み切ってカウンターを決めるように先ほど突いた場所にもう一度拳をぶつける。


2度目も有効打にはなっていない、だが、小さな装甲の欠片のようなものが宙を舞ったのを雄大は見逃さなかった。


「一度に数発打ち込めれば有効打は与えれるか、距離を取るわけにもいかないが隙を狙えるようなタイミングも無い」


剣をギリギリのところで避けながら拳を打ち続ける。

自身の装甲に傷がついたことに気がついたガーディアンも自身に有効打を与える厄介な相手を機械的に分析にし、確実で防ぎようのない戦闘方法へと移行した。


移動速度を上げ壁と天井を弾むように跳ねながら意図的に距離を取り砲撃を放つ。

威力は低いものの、剣筋より圧倒的に早い光の光線が容赦なく雄大へ降り注ぐ。


その光線自体は有効打にはなり得ない、だがその光線に気を取られ防ぐことに集中した瞬間をガーディアンは見逃さない。


弾み続け自身もかなりの速度で動いているガーディアンは一瞬で距離を詰め、背後を取ってその背中を切りつける。


浅い傷だがそれでも出血はする、細かい光線もそうだが天地我相の反動で常時身を削り続けている雄大にとって小さな傷でも蓄積すればすぐに崩れていく。


「早すぎて視界の端で捉えるのが限界だな、なら選択肢は1つか」


敢えて隙を晒し、強力な一撃を打ち込ませる為の隙を作り出す、攻撃の隙を晒すその瞬間までは回避に専念する。

そして意図的に作られたその隙を突いてきた瞬間、身体に深く突き刺さった左腕部を自身の腕で拘束し、そのままゼロ距離で装甲のすべてを貫きガーディアンが行動不能になるまで打ち込み続ける。


天地我相のデメリットを抜きにしてもなんの覚悟も迷いもなく雄大はこの選択肢を取った、それは本来の雄大の覚悟ではない、暴走した自身を止めるために治せるとはいえ傷を顧みず身体を張ってそれを止めた優牙から引き継いだその場に居ない者の意思を引き継いだもの。


「機械だろうと化物だろうと、優牙の野郎の覚悟は俺達が引き継ぐさ」


ガーディアンを無力化舌と同時に強い反動が雄大の身体に襲いかかる。


「司令室に戻るほどの余裕はなさそうだな」


小さな勝利を喜ぶ前に飛翔体の中から、先程苦労して倒したガーディアンと同型のものが複数出現する。


「さて、本格的に覚悟を決めるか」


重くなった身体を起こし複数体のガーディアンの前に立ちふさがる。


「わりいなみんな、俺はここまでかもしれん」



「骨のあるやつがいると思ったが、所詮は人間。だが面白い力だ連れ帰って手土産にすれば、奴の評価も少しは上がるかもな」


デュラハンとの戦闘は時間稼ぎにもならないほど一方的なものだった。

剣に突き上げられ力なく血を流すホープにすでに意識はなかった。


「ホープくん!」

「寄るな女、こいつの作り出した貴重な数分をむだにしないことだ」


そういって光に包まれたデュラハンとホープの姿は消える。


「どうして、本部! ホープくんが誘拐されました!」

「了解、本部にも敵の襲撃があり総司令が戦闘中。第2防衛ラインまで撤退してください」

「本部にも? 了解しました」


敵と味方が入り混じる戦闘、そんな中それを遠くのビルから見守る男の姿があった。


「適当に理由をつけて参加せずに済んだが、このままじゃ全滅するだろうな。だが、この程度で滅びる世界ならそれを受け入れるのも俺の運命だろうしな」


小さくつぶやいたその声は冷淡で冷酷だった。


「情報が漏れてるつもりはなったが、あいつら3人の捕獲よりも徹底的に潰す方を選んだということは。アスタルテの野郎は気が付きやがったか、地下のあれに」


天界 創造神アスタルテの間


「アスタルテ様、敵の1人に面白い力を持っている者が居たため捕獲して参りました」

「ほう、ご苦労だったな地上の進行状況は見ているが少し手こずっているのではないか?」

「えぇ、少しですが。敵の中には戦闘に慣れているものが多く、前線に出していた捨て駒連中では少し苦戦するようです。ですがここからは我が直属の精鋭たちが指揮を取りますので問題はないかと」

「そうか、下がって良いぞ。せいぜい私を失望させないようにな」

「ご期待に添えるよう善処させていただきましょう」


協力関係にあるアスタルテとデュラハンたちの関係は決して有効的なものではない。

自身の住む世界を人質にされているデュラハン達は、仕方なくアスタルテに協力しているだけであり、その関係に忠誠心というものはありはしない。


「さて、そこの人間。意識があるのだろう? その力で私を楽しませてくれ」

「ばれてたか」


出血多量によりかろうじて意識は保てているのものの、鉛のように身体の重いホープはたちあがるので精一杯な程であった。


「狸寝入りはお前たち人間の専売特許だからな、その手は今まで何度も見てきた」

「俺の力じゃお前に一太刀浴びせることも不可能だろうが、それでもやらせる気かい?」

「もちろんだそんなものは私には関係がないからな」

「そうだろうな」


天元具象の剣を作り出し、支えにするように地面へと突き刺す。


「やるのは構わないが、1つ聞きたいことがある」

「ほう? 言ってみろ」

「どうして優牙を取り込んだ? お前にとっちゃ俺等全員ひねり潰すなんてわけないはずだろ?」

「あの時の私の言葉は聞こえていなかったのかなその人間の力に興味があっただけだ、偉大なる神の贄になれるのであれば満足だろう?」

「そうか、そういう答えか」


立っているのが精一杯のホープの腕から血がたれ天元具象の剣へと流れ落ちる。


「覚悟しろよ、俺の剣は天まで嘲笑う具象の剣だ。俺はお前を倒す!」


文字通り最後の力を振り絞りホープは剣を振りかざす、しかしその剣はアスタルテの手によって身体に当たる前に止められる。


「鋭い攻撃だ、私以外には通じただろうだが、私には――」

「うぉぉぉぉ!」


止められた剣が光の粒になって消滅し、腕を抜けたところで再生成されアスタルテの体へと当たる。

しかし、勢いのないその剣は皮膚にかすり傷をつける程度に留まった。


「ほう、良い力だ。人間には過ぎた力だな」

「優牙! いつまでそんなところで寝てやがる! いい加減目を覚ましてそこから出てきやがれ!」

「無駄だ、完全に吸収されたやつに声は聞こえはせん。安心しろお前も殺してから同じように私の一部にしてやろう」

「くそったれ」


力を使い果たしたホープは意識が遠のきその場に倒れ込む。


「私が手を下すまでもなかったか、万全の状態での一太刀なら深手を負っていたかもしれんな」


自身の傷口から出た白い血に天元具象の剣に付着してたホープの血が混じる。


「まぁ、人間ならこの程度だろうな」



地上 第2防衛ライン


「わが名はデュラハン! 腕に覚えのあるのものは私へと挑んでくるがいい!」


自ら戦場へと舞い戻ったデュラハンの高らかな声が戦場へ響き渡る。


「あの人、ホープくんを攫った」


後退の間に少しだけ力の回復したソフィーはデュラハンへと向かおうとするがその肩を誰かに止められる。


「あいつの相手は私がしよう」

「ドクさん!? お怪我は大丈夫なんですか?」

「いや、あれはあくまで人間の怪我を治すためのものだからな、構造の違う私には効かないようだ、だが自己修復で動けるようにはなった」

「その身体で無理をされては、優牙さんが犠牲になった意味が!」

「心配するな、今ようやく感じた。あいつはまだ生きている」


自身の身長と殆ど変わらない大きさの両刃斧を担いだドクがデュラハンの前に立つ。


「我が名はドクトリン・ゴッド・ウェーバー! 友の守ろうとした世界を守るため、貴様の前に立ち塞がらせてもらう!」

「話に聞いていた裏切り者とやらか、私の討つに足る相手とみた。かかってこい!」

「そうだな、私の一撃を受け止めてみるがいい」


黄白色の粒子がドクの持つ斧に纏う、横薙ぎに振り払った斧から飛ばされた光が巨大な刃となって敵を一蹴する。

一蹴された敵は宙を舞い次々と力なく地面へと落ちる、そしてそれはデュラハンとて例外ではない。


「ドクさん、それほどの力をお持ちだったのですね」

「今の状態ではいまのが限界だがな、どうやら傷口が開いたようだ」


倒れた敵の屍を越え、次々と追加の敵が2人の元へと迫る。


「休んでる暇はなかろう、どれだけ窮地に立たされようと。最後まで足掻かなければ私がここにいる意味がない」

「そうですね、最後まで足掻きましょうたとえそれが無駄だと笑われようと」


再び構え直し、敵へ向けと立ち向かう。

倒した敵の数を数える必要はない、ここでの戦闘は誰にも称えられることのなき戦いなのだから。


覚悟を決めた2人を援護するように無数の銃弾が後方から放たれ、そのすべてが敵の大群へと向かう。


「皆様おまたせしました。防衛設備全システムの起動に成功し各方面の援護を開始しました。どれだけの効果があるかはわかりませんが当初の目的は達成されたました」



司令部 飛来物体着弾地点


「なんとか生きてるな、このままじゃくたばるのも時間の問題だろうが」


すべてのガーディアンを単身で破壊した雄大は、壁によりかかり薄れゆく意識の中で自分の敵だったものを見る。


「これが前線にも投入されているんなら、無駄な努力だったかもな」


「すまねぇ、俺はお前らにはもう会えないかもしれないな」


意識を手放しかけた雄大の耳に歌が聞こえた。


「おいおい、走馬灯が見えるならわかるが幻聴が聞こえるとは俺も焼きが回ったな」


その歌はどんどんと音が大きくなり、雄大のいる場所からでも戦場全体に響いているのがわかるほどの音量になっていた。


「はは、戦場似合わねぇいい曲だ。まぁ俺への鎮魂歌にはちょうどいいかもな」



天界 創造神アスタルテの間 ???


(暗い、僕はこのまま死ぬんだろうか)

(何も成せないまま母さんすらも助けらずに)


何も見えない闇の中で今思っているのが自分の意識なのかもわからずに、浮遊するような感覚の中に優牙はいた。


意識を手放そうとした優牙の目を覚まさせるかのように細い光が降り注ぐ。


「! いつ―でそ―な―――ろで寝てやが―― い―――目を覚まして―――ら出てきやがれ!」


闇の中に降り注いだ光とともに聞こえるはずのない声と、歌が聞こえる。


「歌、これは、うるみさんの? それにホープくんの声もする」


無意識に光の方へと手を伸ばす。

光の先に横たわる人影が見える、それが誰なのかそこまでは識別できなった、

だが、歌に導かれるように優牙はその手を伸ばした、光の中へ。戻るべきその場所に戻るため。


「さて、貴様も贄にしてやろう」


倒れ込んだホープへと手を伸ばしたアスタルテの手を身体から生えでた腕が止める。


「貴様、まだ完全に吸収されていなかったのか!」

「奇跡かもね、でも同じ手は二度と食わないし僕の仲間も奪わせない!」


アスタルテの身体から這い出た優牙はホープに近寄り傷を治す。


「ありがとうホープ、君のおかげで僕は戻ってこれた」


(いまなら力の使い方がわかる気がする、みんなを守るんだ)


「これ、借りるね」


形状を保ち続けていた天元具象の剣を手に持ち、自身の手首を切断する。


「その力は、まさか貴様。私の力を奪ったのか!」

「さぁ、でも使い方は何となく分かる」


傷口から鮮緑の粒子が溢れ、風に舞うように周囲を包み込む。


「あなたが地上をモニタリングしてくれて助かった、おかげでこの風を地上へ届けられる」



「ふん!」「たぁ!」


「そろそろしんどくなってきたな」

「まだです、まだ、1体でも多く!」

「む、この風は」


2人後方から援護していたオアシス隊員を包み込むように鮮緑の光の粒が風に舞う。


「これは、アスタルテの回帰の風? どうして私たちを対象に発動されているのだ。いやこの力、優牙の力が混じっているのか…」

「傷が癒えていく、さっきまでの疲労感が嘘みたいに身体が軽い」

「回帰の風は使用された対象を万全の状態に戻してしまう神の力、そしてそれはこの世界の創造神アスタルテのものであるはず。どうしてそれが優牙の力とともに?」

「理由はわかりませんがこの好機逃すわけにはいきませんね」

「そうだな、押し返すぞ!」


回帰の風は力尽きようとしていた雄大の元へも届いていた。


「どうやら死に損なっちまった見てぇだな。だが、この歌とこの風とその全てが俺の背中を押してくれているような気がする。勘違いだったとしてもまだ倒れるわけにはいかなくなっちまったな」


「さて、もうひと踏ん張りやるとするか」



「貴様、その力どうやって奪い取った」

「さぁ、僕にもわからないけど。これならあなたと対等にやり合えそうだ」

「面白いその思い上がり打ち砕いてくれよう」


向き合う2人に蒼白の粒子と白黄色の粒子が集まる。

その粒子は分かれ合い大きな炎のように燃え上がっているようだった。


「あなたのやり方はあんまり好きなものじゃないけど、今母さんたちやここに囚われている人達を解放してくれるなら僕は手を引く。もちろん下で戦ってるあなた達の手下も撤退させてくれると助かるけど」

「解放してどうする? 我々の贄になれるのだ、誇ることではあっても非難することではあるまい?」

「引く気はないってことでいいのかな?」

「あぁ、人間の指図を受ける気もまるで無い」


「そっか」


一歩、アスタルテですら捉えられない速度で距離を詰めた優牙の一撃がアスタルテの腹部を強く貫く、そしてそのまま回し蹴りが放たれ、純白の地面を擦りながら吹き飛ばされる。


「くうっ、これほどまでに私の力が弱体化している? いや、やつが力をつけたのか?」


立ち上がった瞬間にもう一撃、容赦も慈悲も無い拳が鋭い牙となって貫く。


洗練された動きなどではない迷い無く信念のある一撃がただただ強くアスタルテに降り注いでいた。


「私を舐めるのもいい加減にしろよ!」


アスタルテに集まる白黄色の粒子がその輝きの強さを増していく。


「消えろ、貴様を抹消するほうが手っ取り早いようだ」


掌から放たれた光の奔流が優牙に向かい襲いかかる。


「コズミック・フラッシュ!」


反射的に受け身を取った優牙の服が熱せられ皮膚が焼け焦げるように溶ける。

激しい光によって視界は完全に失われ、溶けた身体は骨が見えてしまうほどに光の溶けていく。


「神に逆らったことを後悔する暇もなく! この世界から完全に消え去るがいい!」


その声は既に優牙の耳には届いていない。

脳へと声を伝えるその器官がもう存在して居ないのだ。


「動けるなら、もう一太刀くらい浴びせておかねぇと。割に合わねぇよなぁ!」


光を放ち続けるアスタルテの背をホープの剣が斬り裂く、その剣の形状は今までとは少し異なっていた。


「貴様らぁ! まだこの俺に逆らうのか!」

「お前が神だかなんだか知らねぇが、強大な敵に反抗するってのも! かっこいい話じゃねぇか!」


「そうだね、僕もそう思うよ」


強烈な光から解放され自身の細胞を修復し、変わりない姿で眼の前に立っていた。


「もう、終わらせよう」


アスタルテを蹴り上げた優牙が、本能と直感で空を蹴り上がりその一歩一歩の合間に蹴りを入れアスタルテの身体を更に高く打ち上げていく。


そして、自身の身体が打ち上げられるアスタルテの上を越えたとき。

トドメの一撃は放たれた―――。


強い衝撃、受け身を取る事もできないアスタルテの身体が純白の地面へと叩きつけられる。


一瞬、意識を失い取り戻したアスタルテの身体は動かない。


「帰ろうホープ、母さんたちを連れて」

「ん、あぁ。トドメは刺さなくていのか?」

「相手が誰だろうと僕はもう誰も殺さない、たとえそれがどれだけ憎い相手だろうと」

「甘いな」

「そうじゃないと僕の精神が持たないからね、これは強がりとかじゃなくて心からそう思う」


2人はさらわれた者たちが保管されている赤い液体の場所へとたどり着いた。


「どうやって外に出すんだ?前に来たときはドクの野郎が助け出す方法がわからねぇって言ってたろ?」

「大丈夫だよ、今の僕なら助け出せると思う」


そう言って結衣奈の収められていた入れ物に優牙が手を伸ばす、指先が触れた瞬間に赤い水が飛散する。

力なく倒れた結衣奈を抱きかかえ、同じように桜とソフィーの父親の入れ物も解放していく。


「他の人達はどうする?」

「残念だけど、他の人達は皆。もう、死んでいるよ」

「そうか、そうだろうな。3人ともかなり衰弱してるようだしな」


3人を抱え、その場をあとにしようとする2人だったが、アスタルテの力のない声が聞こえる。


「た、頼む。力を失った私は、このままでは衰弱して死んでしまう。私の傷を治してくれ」


「けっ、都合の良い野郎だ。優牙無視して帰ろうぜ?」

「いや、僕たちはこの人に元の場所に帰してもらわないとだから、取引といこうか」

「おいおい、マジかよ」


結衣奈を地面に置き、優牙はアスタルテに近づく。


「僕は傷を治す、だからあなたは僕たちを元の世界に返してもう二度とかかわらない」

「い、いいだろう」


アスタルテに手をかざすとみるみる傷が癒える、傷の癒えたアスタルテは立ち上がり優牙はそれに背を向け結衣奈を担ぎ直す。


「私が人間との約束を守ると思うか?」


アスタルテが優牙とホープへ向け手を伸ばす、白黄色の粒子を再び掌に集め始める。


「うん、思ってないよ。だから、保険を掛けてたんだ」


そう優牙が微笑んだ瞬間のことだった、アスタルテが全身から白い血を吹き出し。

地面へと伏せた。


「アンチリペア、僕の治す力はただ治すだけじゃない。治した傷を治す前の状態に治すんだ。もちろんそれはあなたと出会ってから僕の力で治した傷、全てが対象だ」

「貴様、図ったな!」

「それはお互い様でしょう? あなたは僕らを殺そうとした。僕もこの力には今気が付いたばかりだし、大人しく帰してくれるならこれ以上の危害は加えない。その約束を違えることはない」


観念したアスタルテは優牙たち5人を地上へと戻した、その後に現れた男の存在には全く気がついていなかったが。


「よしよし、邪魔者を帰してくれて助かったぜ。久しぶり、いや。はじめましてだなアスタルテ」

「貴様は、神子の片割れ!? どうしてここに」

「その呼び方は好きじゃないな、あいつの思惑は知ってるとはいえ。大嫌いなんでな」

「ふ、神殺しを企み続ける兄と神に反抗する弟。どちらにせよ、神とって脅威でしか無い」

「その事実を他に言いふらされる前に、お前には表舞台から姿を消してもらうさ。不思議なもんでな、今回は俺の神の力が消えなかった。だから正直なところお前に関わる必用性はないんだが、下手な揺り戻し――バタフライ・エフェクトが起きても困るんでな」

「貴様! その力は!」


「消滅しな創造神アスタルテ、お前はもうこの世界には必要ない―――」


男が手を伸ばす、なんの力も加えずになんの動作もなく、アスタルテの身体は一瞬にして残滓すら残さずに消滅した。


「あばよ、俺の知ってるお前と違って小物臭くてやりやすかったぜ」



「戻ってきたな」

「うん、僕たちの世界に」


光の中から現れた優牙たちを戦闘を終え後処理していた仲間たちが迎える。


「優牙さん! ホープくん!!」

「ただいま、ソフィーちゃん」


「終わったんだな優牙」

「うん、母さん達も取り戻した」


「ありがとな優牙、桜を取り戻してくれて」

「僕だけの力じゃないよ、ホープくんが、うるみさんの歌がなかったら僕は戻ってこれてなかったと思う。あの歌は君のおかげなんでしょ?」

「いや? 作戦開始前にあの人が自分から志願したんだよ。私も優牙くんの力になりたいってな。お前の人望あってのものじゃないか?」

「どうだろ、僕は単純にあの人のファンってだけだから」

「そうか」


「ねぇドク、雄大。2人に頼みたいことがあるんだ」

「ん?」「どうした?」

「母さんと皆を任せてもいいかな」

「お前はどうするつもりだ?」


「僕は少しだけ離れようと思う、皆と旅をしていて色々考える事があってさ。今の僕には皆と生きる、母さんと向き合う覚悟がないんだ。だから、少しの間だけ1人になりたい」

「そういう話なら、任せとけ。お前が帰ってくるまでその時まで―――待ち続けてやるよ」

「ありがとう、行ってくるね」


その感謝の言葉を最後に優牙は仲間たちに背を向け、どこかへと向かう。


「優牙くん、大丈夫なんでしょうか」

「帰ってくるたぁ明言してかなかったなあの野郎」

「大丈夫だ、必ず戻ってくる。あいつの力が必要になるときは必ず、そういう星のもとに私達はいるからな」

「相変わらず意味深なことばっかいいやがって。そのうち話してもらうぜ神やあんたの正体は」

「ああ、時が来ればな」


1人の男が去り、多くの人々が知らない戦いが幕を閉じた。

世界は今日も回っていくそれがたとえ誰かの手のひらの上だったとしても、そのことを知るんいんげんは居ないのだから―――




インタールード 優牙の章第1部 新たな世界の始まり (完)


今話に関してなんですが、執筆が遅れた理由がありまして。

ネタバレになってしまうので嫌な方はこの辺でブラウザバックしてくれると助かるのですが。


とあるキャラの生死についてどういう展開にしようかと、悩んで決めるまで大幅に時間が掛かってしまったのが大きな原因です。

まぁ詳しくは語らないんですが、本当にとあるキャラのせいですごく悩みました。

前作のインタールードシリーズ同様、ここで打ち切りに使用かなと思うレベルで。

いやほんとマジで、色々伏線が出てしまってる気もしますが、200話分くらいの筋書きは終わってしまっているので、本当にどうすればいいか私にはわかりません!

誰かこの作品のためのゴーストライター用意してくれないかな!。そしたら気持ちが楽なんですが!

ということで今回はここまでになります、割と最近は書く時間が取れてるので次回は速めになると思います(当社比)お楽しみに!

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