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イタイ-青春厨症候群-  作者: 師走
第一章 青くして死ね
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side:飯田哲郎2

 午後十時、今日もテレビ収録に呼び出されて疲弊していた飯田は、家に着くなりソファに腰を下ろした。


「全く、老人をこき使うものじゃないと思うのだがね」


 既に六十近い彼にとって、色んな番組に専門家として呼び出されるのは決して楽な仕事ではない。加えて、飯田のこの活動は同じ職場、即ち冨羽高校の職員達からあまり快く思わ

れていない。彼はカウンセラーであって教員ではないので、あまり関わることは少ないが、それでも悪意のある視線には職業柄敏感だ。


 特に今回は、あの生徒の死を飯の種にしているようで余計に悪印象を持たれているだろう。学校閉鎖されているため、学校には出勤しなくていいのが唯一の救いだ。


「ん?」


 テーブルに置かれた彼のスマホが鳴る。画面を確認したところ、非通知になっていた。


「もしもし」

『心理学者兼精神科医兼冨羽高校専属カウンセラーの飯田哲郎だね』


 電話の主はご丁寧に彼の肩書を全て言う。声の感じからして女性のようだ。


「誰だ?」


『初めまして。私は名探偵の湖南(こなみ)入夏(いるか)だ』

「名探偵?」

『今から君に三つの質問をするけど、私は十一時ちょうどに就寝につくので手短に頼むよ』


 自分から電話をかけておいてなんていう傲慢な人だと思ったが、当の彼女にはそんなことは関係ないらしい。


『まず一つ目。君の知人、霞秋穂の自殺に心当たりはあるかな?』

「!」


 何故ここで彼女の名前が出てくるのか、その驚きが電話を越しに伝わったのか、スピーカーからふふふっという笑い声が聞こえてくる。


『どうしたのかな?答えられないのかな?』

「……彼女はずっと前から心労を抱えていた。そのせいだろう」


 黙っておくこともできたが、霞秋穂の名前を出されて思わず答えてしまった。


『二つ目だ。霞秋穂が死んだ日、もしくはそれ以前の数日間に君は彼女に会ったかな?』

「会っていないよ」


 というより、そもそも彼女とは六年間連絡すら取っていない。何度かバイト先を覗いたことはあるが、直接顔を合わせたりはしていない。


『三つ目だ。七月三日十九時二十九分七秒、森本潤也の自宅特定。冨羽市鷺橋町三丁目市営住宅29号棟』

「!?」


 三つ目も彼女に関する質問だろうと構えていた飯田の耳に、全く無関係な内容の文言が飛び込んできて驚愕する。


『この投稿をしたのは君かな?』

「いや、違う」

『……そうかい。無駄な時間を使わせて申し訳ないね。では私はこれで失礼するよ』


 そう言って、名探偵を名乗る謎の女性は電話を切ってしまった。


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