乗り遅れたのに列車が…
これは、フィクションです。
彼は暗光、しがないサラリーマン。
今日も残業した帰りだ。
「今日も遅くなったな。」
疲れた体をムチ打ちながら、駅へと走ります。
「間に合えー!」
駅に滑り込み、改札を抜け、ホームへ駆け上がる。
ピシャーン、ガタン、ゴトン、ガタンゴトン!
「あーあ、あと少しだったのに…。」
暗光は、肩を落としてホームを降りようとすると。
ピンポンパンポン!
「まもなく、普通最終電車が参ります、白線の内側までお下がりください。」
ピンポンパンポン…!
「あれ、さっきのが終電じゃないのか?」
ガタンゴトン、ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン…プシュー。
やって来たのは、昨年まで使われていた旧型車両でした。
「これって、使われて無いんじゃ…。」
暗光は、鉄道マニアで、昨年『さよなら〇〇号』のイベントに参加していたから、首を傾げました。
「乗っていいのか…。」
不思議がりながらも、徐々にではマニアの血が騒ぎ。
「『〇〇号』の貸し切りなんて、夢みたいだ!」
暗光は、怪しさを忘れ、欲求のままに乗り込んだ。
ピシャーン、ガタン、ゴトンゴトン、ガタンゴトン!
〇〇号はゆっくり動き出した。
「ご乗車ありがとうございます、この列車は各駅停車、次は『カチカチ山』です」
聞き慣れないアナウンスに。
「カチカチ山!?そんな駅聞いた事無いぞ。」
暗光が、首を傾げる中、〇〇号はトンネらに入りつつ走り続けます。
ガタンゴトン、ガタンゴトン!
〇〇号が、トンネルを抜けると、夜のはずが、昼のように明るい場所に出ました。
「まもなく、カチカチ山、カチカチ山です。」
ガタンゴトン、ガタン、ゴトンゴトン!
〇〇号は、カチカチ山で停車したしました。
「うさぎさん、背中を押してくれないか?」
「おばあさん、大丈夫、ゆっくり乗って。」
おばあさんを、支えつつ、うさぎも乗り込みます。
カチカチ!カチカチ!
外でカチカチと音がして、暗光が外を、見ると。
「うさぎさん、カチカチ音がするんだけど。」
「たぬきさん、ここはカチカチ山だからだよ。」
うさぎは、たぬきの後ろで、火打ち石で薪に火を付けます。
「うさぎさん、背中が熱いんだけど…。」
「そりゃ、たぬきさん、背中の薪が燃えてるからだよ。」
たぬきは驚いたのと熱いので、飛ぶや転げるはのてんてこ舞い。
「カチカチ山って、童話そのものなのか。」
暗光は、ただ見ている事しかできませんでした。
ガタン、ゴトンゴトン、ガタンゴトン!
〇〇号は、また走り出しました。
「次は、『姥捨て山』です。」
また、聞き慣れない駅に戸惑う暗光。
「今度は『姥捨て山』だって!?」
徐々に怖くなってきた暗光を乗せた〇〇号は、トンネルに入って行った。
__________
暫くすると、おばあさんとうさぎが前の席に座った。
「おばあさん、もうすぐ着くからね。」
おばあさんは、うさぎの声に頷く。
「あの、おばあさん。」
暗光は、徐に話しかけた。
「おばあさんに、何の用?」
暗光と、おばあさんの前に割って入る。
「ごめんね、ただ何処に行くのかを聞きたくて。」
うさぎは、安心して席に座った。
「ごめんなさいね、昔、たぬきに悪さをされてから、うさぎが守ってくれていてね。」
おばあさんは、ペコリと頭を下げる。
「いえいえ、頭を下げる上げてください。」
暗光は、アタフタする。
「私は、この先の『三途の川』へ、行きます。」
暗光は、大きな声を出しそうなくらい驚いた。
「三途の川って、死者が渡るあの川ですか!?」
おばあさんは、ペコリと頷く。
「はい、たぬきに悪さをされて、一度は助かったのですが、数日後に…。」
うさぎが、口を挟んできた。
「おばあさんが亡くなってから、悲しく出後を追いました。」
暗光は、更に驚いた。
「じゃ、じゃあ、僕も死んでしまったのか…。」
暗光は、ショックを受けた。
「この列車は、死者を三途の川へ送る列車ですよ。」
おばあさんは、平然と説明してくれた。
「僕は、駅に列車が来たから乗っただけなのに…。」
暗光の顔は青ざめ、ガタガタ震える。
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突然トンネルを抜けると、赤い夕闇に包まれていた。
「まもなく、姥捨て山、姥捨て山です。」
ガタンゴトン、ガタン、ゴトンゴトン!
〇〇号は、姥捨て山に停車した。
ザワザワ、ザワザワ!
沢山のおばあさんが乗り込んできた。
ザワザワ、ザワザワ!
窓の外では、若い男が、親らしきおばあさんを背負い歩いている。
「おっかあ、すまん。」
すると、若い男が、おばあさんを降ろし、走って山を下って行った。
「□□ー!」
おばあさんは振り返り手を伸ばすが、若い男はもう消えていた。
「あっ!ちょっと!」
暗光は、慌てで立ち上がるが、扉は閉まってしまった。
ガタン、ゴトン、ガタンゴトン!
「次は、閻魔邸、閻魔邸です。」
アナウンスが終わると、車内はざわつき、周りで、天国か地獄かの話が聞こえてきた。
「天国か地獄かか…。」
列車は、ざわつきながら、トンネルに入って行った。
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20分程が経ち、トンネルを抜けると、途轍もなく広い場所に出た。
「まもなく、閻魔邸、閻魔邸です。」
ガタンゴトン、ガタン、ゴトン!
閻魔邸に到着すると、扉は開きませんでした。
「閻魔大王様の搭乗!」
暗光は、最後尾に居たため、何が行われてるのかわかりませんでした。
「閻魔大王様、2両目に移動されます。」
6両編成の、この列車は、10分程して、ようやく、5両目に来ました。
「地獄、地獄、天国、地獄、天国…。」
徐々に声が近づいて来ます。
「次は6両目、最後尾へ移動します。」
ガチャ!
「ここが最後が…。」
閻魔大王様が、やって来ると、皆が席に座り、頭を下げる下げる。
「天国、地獄、地獄、地獄、天国、地獄、天国、天国。」
いよいよ、うさぎとおばあさんの番です。
「うむ、天国、天国。」
両方とも天国で下。
次は、僕の番。
「うーむ、お主、何故ここに乗っておる?」
閻魔大王様は、暗光の顔を覗き込む。
「ぼ、僕は、仕事帰りに乗ったら…。」
暗光は、閻魔大王様に、必死に訴えました。
「この列車は死者の列車、お主の様な、生きた者が乗る物ではない。」
閻魔大王様は、尺を向け。
「この列車を降り、私に付いて参れ!」
暗光は立ち上がると、閻魔大王の後を付いていきます。
「天国、地獄、…。」
最後の席まで言い終えると、地獄と言われた者だけが、鉄の鎖に繋がれました。
「お主、こっちだ。」
閻魔大王様と共に、列車を降りると、扉が閉まり、列車は動き出しました。
「あれは、三途の川で、天国の者を降ろすと、地獄へ向かう。」
暗光は、頷きながら付いていく。
「お主は、この列車に乗り、帰るのだ。」
閻魔大王様が指差した所には、最新型車両が停まっていた。
「」乗ったら、アナウンスに必ず従え、背けば地獄へ逝くからな。」
暗光は、2度頭を下げ。
「ありがとうございます。」
暗光は、列車に乗り、席に座ると、動き出した。
ガタン、ゴトン、ガタンゴトン!
「ご乗車の皆様、目をお閉じください、到着アナウンス後、目をお開きください。」
暗光は、アナウンスに従い、目を閉じる。
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目を閉じてから、幾分が過ぎ。
ガタンゴトン、ガタンゴトン!
「まもなく、〇〇駅、〇〇駅です、お出口は左。」
懐かしいアナウンスが流れ、暗光は目を開けた。
車窓には、いつもの夜景が映っていますいた。
ガタンゴトン、ガタン、ゴトンゴトン!
〇〇駅に停車したすると、暗光は列車を降りた。
「帰って来たぞー!」
大声で叫んだあと、暗光は走って帰りました。
◇おしまい◇
読んで頂きありがとうございました。