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先生、今日もつかれてますね

作者: 環 エン

私には今、とても気になっている人がいる。


「多加子って斎藤先生のことよく見てるよね」


次の授業のために音楽室へ向かう途中。渡り廊下を歩いていたら目に入ってしまった、どうしても気になってしまう件の人がいる校庭を眺めていた時、そう話しかけてきたのは友人の美奈だった。同じく一緒に歩いていた茜は美奈の言葉に乗っかるように、面白そうだと企む笑みをしながら私の二の腕にグリグリと肘を当ててくる。


「多加子ちゃんも隅に置けないなあ。確かに斎藤センセーってウチらと年齢近いけどセンセーだよ先生。もう禁断の恋ってやつじゃんかあ」

「いや、別にそういう意味で見てたわけじゃないから」

「えー、そうなん?多加子ちゃんめっちゃ熱い視線出してるから絶対そうだと思ったのにい」

「違う違う。なんていうか、ちょっと気になるだけだよ」

「恋愛的なのではなくう?」

「ではなく」

「えー!つまんなあい」


つまらないとかそういう話ではないが、茜は今少女漫画にハマっているらしく何でも恋愛ごとに持ち込もうとするお年頃だったりするので仕方がない。私は助け舟を求めて美奈を見つめると、美奈は心得たとばかりに茜の肩に手をポンと乗せると宥めるように話し始めた。


「まぁまぁ、茜落ち着いて。恋とは気づいたら落ちているものらしいし、まだわからないよ」

「なるほどおー。じゃあウチらはそっと見守りますかあ」

「だから、違うっつーの」

「はいはい。いい加減授業始まっちゃうから行こう」

「はあーい」


勝手に冷やかして勝手に歩き出した友人たちを追いかけるように足を動かしながら、私はもう一度校庭を見る。そこにはまだ斎藤先生が数人の生徒と一緒に話している姿があった。私は斎藤先生を囲むソレらを見て、やっぱり凄い人だなと変な感心をしてしまう。


ソレらは斎藤先生にしか興味がないのか私が見ていることにまだ気づいていないが、いつ気づかれるかと怖くなった私は視線を外し、今度こそ二人を追いかけて音楽室へと足を早める。


斎藤先生には今日も禍々しい何かが取り憑いている。


私は所謂霊感体質だ。物心つく前から私の目には当たり前に見えるソレらが、実はこの世のモノではないといわれるモノたちなのだと知ったのは、物心ついた幼稚園に入る前の親との会話であった。どうしても噛み合わない会話の中で親をひどく怖がらせてしまい、私は初めて自分が他人とは違うモノが見えているのだと知った。


私には当たり前に見えていた世界が実は異質なのだと自覚してからは、余計なことを言わないように注意しながら生きてきた。他人が話していること以外は話題にせず、変なものは決して視線で追わないように気をつける。そうすれば周囲の人たちは私が異質なものが見えるとは気づかないでいてくれた。


異質なソレらも、基本は無害なモノたちだ。何も興味を持つことなく、ぼうっとただそこに居るだけのモノが多い。ごく稀に何かに興味を持って行動しているモノたちもいるが、私は興味を持たれたことがないので恐ろしい目にあったことはなかった。おかげで私は何とかこの世界で生きることができている。


だから斉藤先生は凄い人だなと見かけるたびに思ってしまう。まず、ソレらに物凄く興味を持たれているのに平然としているところだ。あんなに色んなモノが一つの何かに興味を持って付き纏う姿を私は今まで見たことがなかった。しかも、斉藤先生本人は一切その事に気づいていない素振りをしている。本当に見えていないのか、見えていて放っておくのか、ソレらが怖くて近づけない私は斎藤先生と話したことがないのでわからないけれど、どちらにしても感心するしかない。


更に凄いことは時々付き纏っているモノが入れ替わっていることだ。興味を失われているのか、どこかで祓ったりしているのか、こちらもわからないけれど斉藤先生の取り巻きになっているソレらの入れ替わりは結構激しい。そのくらいにソレらに興味を持たれている斉藤先生のことを、私が自然と目で追ってしまうのは仕方のないことだと思う。


しかし、これは決して甘いときめきのある恋愛感情からくるものではなく、ソレらに付き纏われているのに平然と日々を過ごすことのできる斉藤先生への一種の尊敬のような感情なのだと言いたい。


「だから、これは余計なお世話だよ」

「もおー多加子ちゃんも見てるだけじゃダメだよお。恋とは押しまくるものなんだからあ」

「確かに茜が頼まれた資料運びだけどさ、私も多加子にとって良いきっかけになると思うな」


茜に渡されたのは、箱に入った教材だった。私たちのクラスの数学を担当している斎藤先生が、日直だった茜に放課後、数学資料室まで持ってくるようにと授業の後に指示したのだが、茜はその箱を私に渡してきたのだ。しかも、一人で行ってこいとの言葉付きである。いつもは助けてくれる美奈も今回は茜側にまわるようで、すっかり私が一人で資料室に向かう流れになっていた。


「いや、茜の仕事じゃん。私行きたくないよ」

「もう!多加子ちゃんはもっと積極的になるべきい。別に斎藤センセーは誰が持ってきても気にしないだろうから、多加子ちゃん行ってきてよお。そんで私に恋愛話聞かせてえ」

「嫌だよ。仮に運んだとしても茜に聞かせるような話にはならないし」


斎藤先生のいる資料室に行けば、ソレらを間近で見なければいけなくなる。私にはバッチリと見えるものを、そんな間近で感じながら見ないものとして扱うのは流石に難しい。斎藤先生に熱心な取り巻きたちだとしても、もしかしたら私が見えていることに気づいてターゲットをこちらに向けることだってあるかもしれないのだ。それは怖すぎる。


正直にいえば、ソレらについて斎藤先生に聞きたい気持ちはあるが、斎藤先生のそばには常にソレらがいるため今まで近づくことも話すことも出来なかった。細やかな疑問よりも自分のことが可愛いに決まっているので、ずっと遠くから見るしかなかったし、それでよかったのに。


「えぇ〜。つまんなーい」

「茜の恋愛脳は疲れるから押し付けないでよ」

「ぶー、多加子ちゃんの意地悪う」


何度も言いたいが、つまらないとかそういう話ではないのだ。呑気に喋る茜にイラついた私は少しキツく言ってしまった。茜と美奈とは中学からの付き合いがあり、遠慮のない関係なので互いに何でも話す。前々から最近の茜の何でも恋愛に結びつけようとするのは文句が言いたかったので、つい言い過ぎたかと反省しつつもちょっとスッキリした。


何でも話せる関係だとはいえ、自分には異質なモノが見えてしまうことを二人に打ち明けるつもりなんてなくて話したことはない。けれど、もし話したとしてもあっさりと受け入れる姿が想像できるくらいには、二人は私にとって気安い友人たちだった。


だがしかしこう感謝しつつも、やっぱり腹が立つものは仕方ないと呆れまじりに不快感を出していると、静観していた美奈が申し訳なさそうに話しかけてきた。


「これは茜が悪いけどさ、この箱のことは出来れば多加子にお願いしたいんだよね。実はうちら今から委員会があって、そろそろ行かないとなんだわ」

「あー、そういえばそうだったあ」


二人が所属する環境委員会だか何だかは、校内での雑用が多い委員会でちょくちょくと活動するために呼び出されることは私も知っていたので、今日も用事があるのは不自然ではない。そして、茜がそのことをすっかり忘れていたのも概ねいつも通りだった。全く少しは自分の予定は把握しておいてほしいと言いたいが、しかしそこは茜なので仕方がない。仕方がないついでに私は覚悟を決めるように息を吐いてから口を開いた。大概友人には甘い自覚はあるし、ソレらを見ることのない普通の子だったなら用事のある友人からのお願いを、このくらいならと簡単に請け負うものだろうと判断したからだ。


「わかったよ。仕方ないから持っていってあげる。ただし、明日聞かれても茜の期待するような話は一切しないからね」

「助かるよ多加子。茜にはよくよく言い聞かせるから安心して」

「ひどーい、美奈ちゃんまで私のこと意地悪するう」

「はいはい、もう時間ないから行くよー。じゃあ、多加子また明日ね」


本当に時間が無かったらしく、バタバタと教室を後にする二人を見送ってから、私はもう一度落ち着かせるために息を吐いた。こうなったら腹を括るしかない。さっさと行ってさっさと終わらせるべきだと私はカバンと教材の入った箱を持って、斎藤先生がいるであろう数学資料室へと向かうことにした。


自分一人誰もいない放課後の静かな廊下を歩いて辿り着いた数学資料室の入り口は何故か開けっぱなしになっていて、斎藤先生が席についている後ろ姿が廊下からでも確認できた。まだ少し離れているのにその人の背中にはびっしりとソレらがいるのですぐに斎藤先生だとわかる。頼まれた荷物をいつまでも持っているわけにもいかないので、少し怖いが私は覚悟を決めて入室する前に開いている扉をノックをしてから声をかけた。


「失礼します」


ノックをした後声をかけると、斎藤先生はこちらを見ずに入るように返事をしてきたので、私は資料室へと足を進める。資料室という名前の通り、壁には棚が並び教材が置かれている。そんな部屋の真ん中の、教員用の事務机が4つほど固まって置かれている席の一つに斎藤先生は座り書類に何かを書き込んでいた。


「五限の授業で頼まれていた教材を持ってきました」

「あぁ、ご苦労さん。そこの机の上に置いてくれ」

「はい」



私は斎藤先生に指示されたところへ箱を置いてから、勇気を出してチラリと斎藤先生を見た。ソレらは顔が確認できないほど纏わりついているわけではないので、斎藤先生が真剣に書類を見ている表情がわかる。その代わり背中の方にはびっしりといる気配があるので、なるべくそっちを意識しないように気をつける。


「ん?どうかしたのか」


まだ資料室から出ようとしてなかった私に気づいた斎藤先生がこちらを見て話しかけてきた。今日渡り廊下で見かけた時のように斎藤先生が生徒に人気があるのは、こうやって生徒を気にかけてくれるところにあるんだろう。私は斎藤先生より取り巻きのソレらが気になって近づけないが、普通の生徒が斎藤先生を慕い集まっていることに納得しつつ、彼らに負けず劣らず今も斎藤先生の背中にピッタリとくっついているソレらに気がついてしまっている私の存在を悟らせないように内心ビクつきながらなんとか平たく返答をする。


「いえ、何でもないです」

「そうか?せっかくだから何か聞きたいことがあったら質問していいぞ?でも、山岸は普段の授業態度も真面目だから特に問題ないかもしれないけどな」


斎藤先生が私の名前を知っていることに少し驚いた。私のクラスの担任ではない、斎藤先生にとってはいくつか受け持っている教科担当クラスの生徒だというのに。しかも悍ましいソレらのこともあって私が斎藤先生にまともに近づいたのは今日が初めてのはずで、まさか顔と名前を覚えられていたなんて。また斎藤先生の人気の秘訣を知ってしまった気がする。


そんな斎藤先生ならば。今ならそれとなく聞けるかもしれない。あくまでもソレらに私が気づいていることを知らせないようにさりげなく日常の会話の延長のように、他の生徒みたく話してみようかと思案してしまう。そして再度何かあったかとさりげなく問いかけてくれる斎藤先生に、ついに私の重い口が開いてしまう。


「その……先生はつかれてますよね」

「え?俺そんなに疲れているように見えるか?一応睡眠時間は9時間取るようにしているんだが」


思った以上に直球になってしまった。けれど、斎藤先生は特に気にした様子もなく話に付き合ってくれるようだ。数学についての質問ではないし、突然の話題にも関わらず首を傾げながらも真面目に返答をくれる斎藤先生は、それだけでも生徒想いの先生なんだとわかる。これ以上変なことは言いたくないけれど、私の口は今まで言えなかったことを聞きたくて慎重に動いてしまう。


「健康優良児ですね」

「俺は寝たら朝まで目が覚めないタイプなんだよ」

「へぇ、よく眠れますね」

「おかげで友人にはよく図太い奴だと言われるな」


私は本当はソレらに憑かれているのかと聞きたかったのだが、斎藤先生は疲れていると解釈して話してくれているようだ。今時の学生よりも確保している睡眠時間に驚きつつも、ソレらが常にそばに居るのに金縛りなどの不調もなくしっかり休めていていることの証明のようで二重に驚きである。斎藤先生とは違う、前にソレが一体だけ肩に憑かれている人を見かけた時は目に濃いクマが出来ていたが、その人よりも悍ましいソレらがいくつも取り巻きになっている斎藤先生の良質な睡眠がとれていることがすごい。友人から図太いと評価されるのも納得である。


「その、つかれていても気にしない感じですか?」

「実感がないのかもな。ほら、肩こりも気づかなければ辛くないっていうだろ」

「あー、先生は鈍感なんですね」

「そうだなあ、多少問題があったとしてもあまり気にならないというか。大学の時はそれでよく友人に怒られたよ」

「どんなことで怒られたんですか?」

「別に気にならないからって放置せずに、迷惑だったら自己主張はちゃんとしろ、とかはよく言われたな。山岸も問題が出来たらすぐに解決したほうがいいぞ。まあいっかでそのままにしておくと面倒な事になる時もあるからな。ってこれは疲れとか肩こり関係ないな」


それはよく分からない現象とか、背中にいるソレらのことですか、とは聞けなかった。斎藤先生は話をしている間も一切背中の方を気にしていなかったので、ソレらについての話なのだとは思えなかったからだ。ごくごく自然に日常の話をしている気がしてしまい私も気が抜けていたのだろう。ソレらも特に斎藤先生にどうにかしてやろうという感じでもなかったから油断をしていたのかもしれない。


私はうっかりソレらに視線をやり意識してしまった。そうして、ソレらも私が見えていること認識していることを理解したことが私にはわかってしまった。思わず息を呑んで一歩後退りする私を見て、ソレらの一つが私に手を伸ばしてきたのが見えた。


私が危ないと思った時、開いていたはずの入り口の扉が勢いよく音を立てて締まった。その大きな音に私は肩を震わせて動けなくなったが、目の前には斎藤先生の背中から伸びているソレの手が私を捕まえようとしていた。初めての恐怖に私が怯えていたのと同じ時、同じく大きな音が聞こえていたはずの斎藤先生は、何も気しないように自然に席から立ち上がり、手を伸ばしていたソレより早く私の肩を安心させるようにポンと叩くと、にこりと微笑んだ後そのまま締まったドアに近づいて一発蹴り込んだのだった。


「俺の生徒をビビらせるんじゃねぇ。とっとと消えろ」


斎藤先生がそう言うと、斎藤先生の背中にいるソレらの一部が本当に消えていくのが見えた。勢いよく締まったドアを勢いよく蹴って凄みを効かせるとソレらは消えるのだろうか。ソレらとなるべく関わらないように生きてきた私にとって未知の対処方法であり、初めて立ち向かうという選択を見た気がした。


ドアを蹴り上げた斎藤先生は静かになった資料室に満足したのか座っていた席に戻ってくると、今も動けないでいる私に向かって困ったように笑って声をかけてくれた。


「山岸すまなかったな。たまにこうやって喧しい音が聞こえるんだ。そういう時はハッキリと迷惑だって意思表示するのが大切らしいぞ。無視していると調子に乗ってずっと喧しいからな」

「先生はよく体験するんですか?」

「こういう個室で扉を締め切っていると時々ドンドンされるくらいかな。だからいつもは開けっぱなしにしてるんだが、それでもこうやって仕掛けられる時があってな、その場合はこちらも相応の態度をすればこうして静かになる」


トイレとか家なら別にいいんだが、出先でドンドンとやられるのは困るんだよな。と朗らかに笑う斉藤先生はやっぱりソレらが見えていないのだろうか。突然の物音なんて恐怖以外の何者でもないのに一切気にしていない斎藤先生はやはり凄い。いや凄いを通り越した畏れすら感じる。でもこの人の側ならソレらも怖くないのかもしれない。逃げる避けるばかりの私の処世術にはない対処方法で生活している斎藤先生がとても頼もしく見えた。


「先生は音の原因が何かを知っているんですか?」

「体質なのかな。大学で一人暮らししてからよくあるんだが、まあ煩いくらいで特には問題ないから特に気にしたことはなかったな」

「少しは気にした方がいいですよ」

「ああ、友人にもよく言われる。しかし、いつもは誰かと一緒の時は静かなんだけどな。なあ、山岸はさっきの原因とやらが何かわかるのか?」


斎藤先生からの質問に私は固まってしまう。だって見ないようにしていた斎藤先生の背中に残っている取り巻きのソレらのいくつかが私をじっと注目しているのを感じてしまったから。ここでもう一度ソレらと目が合い認識してしまうなんて失敗をすれば今度こそ私は危ない。私には斎藤先生みたいな対処はできない。だから極力不自然にならないように顔を背けて答えるしかなかった。


「私にはわかりません」

「だよな。すまん、煩かったら怒れば静かになるってわかってからは原因なんて考えたことなくて山岸は賢いなと感心しただけなんだ。せっかく受け持っている生徒なのに山岸とはこうして話したことなかっただろ。それでちょっと先生的には嬉しくて色々喋っちゃって。ごめんな」

「いえ、私も先生とお話しできて嬉しかったです」

「そう言われると教師冥利に尽きるなあ。これからもまた聞きたいことがあったら何でも声かけてきていいからな」


そう言って何でもないように話す斎藤先生の背中には、やはりソレら取り巻きが憑いているのを感じてしまい怖い。私はありがとうございますと言いながら逃げるように教室を出て行った。斎藤先生もあっさりと気をつけて帰るように声をかけて仕事に戻ったのだろう。あんな音がしたのにやはり誰もいない廊下を私は一人歩いて帰る。遠ざかる斎藤先生とソレらがいるはずの準備室から音は無かった。


次の日、学校に行くと茜が案の定、昨日の斎藤先生との会話を聞き出そうと絡んできたので私は宣言通り適当に流して終わらせた。またも茜はつまらないなどと言ってきたがそういう類の話ではないので、別に楽しくなくていいのだ。ソレらに纏わる恐怖体験など話さなくていい。斎藤先生が思ったより鈍感だったけど頼もしかったことは言わなくていいことだ。


一限目開始のチャイムがなり教室に入ってきた斎藤先生の背中は相変わらず凄く、私はソレらに気づかれないよう黒板を眺める風に装いながら斎藤先生の取り巻きをマジマジと見てしまう。その視線を感じてなのか、斎藤先生が私を見つけると小さく笑った気がして、私は自分の顔が瞬間熱くなるのがわかってしまった。それが何だか恥ずかしくて俯いてしまうと、今度は視界の隅にちらつく斜め前の席にいる茜からの視線を感じる。それは確実に恋愛に結びつけているであろう楽しそうな視線なので私は無視をすることにした。だってこれは未だ恋愛に繋がるような話ではないのだから。


「おはよう。前回の続きからだ、教科書を開いてくれ」


溌剌と授業を進める斎藤先生は、今日もおぞましいソレらに憑かれている。


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