「瞬間移動」
俺には超能力がある。念じた場所に瞬時に移動できる、テレポーテーションというヤツだ。そして、念じながら触れたものを移動させることもできるようになった。もちろん、滅多に使わないし人にも知らせない。
しかしコロナ禍で家庭ゴミの処理に困るようになった今日この頃、いい商売を思いついた。ゴミを安価で引き取り、飛ばしてしまえばいい。
「よう、最近、羽振りがいいらしいな」
こいつ‥‥昔から誰かに集ってたヤツだ。こういうことには耳ざといもんだ。
「何でも、ゴミを消しちまう方法があるんだってな」
消す、か、まあ間違ってはいないがね。
「俺と組もうぜ、世の中には、生かしておいてもしょうがない奴が大勢いる。そいつを消したがっているヤツから金を貰って‥‥」
殺し屋みたいなことを企んでいるのか。こいつらしい考えだな。
「いいだろう」
「よし、よろしくな、相棒!」
俺が差し出した右手を握った男は、瞬時に姿を消した。
「同じことを考える人はいるもんだ、お前、相当あくどいことをやってたそうだからな‥‥」
俺は眩しい陽光を見上げてつぶやいた。奴はどこへ行ったかって? 超巨大な溶鉱炉、太陽の中さ。今まで処分したゴミと同じく、ね。