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僕は君を殺せない  作者: 堂若華
2/2

episode.2

2話です。

よろしくお願い致します。

シクラは、小さい頃から病に侵されていた。




熱が出る度母親がリンゴをすり潰して、シクラに与えてくれたのは良い思い出だ。


「はい、どうぞ」


「リンゴだ!お母様、ありがとう!」


「いえいえ、早く良くなるといいわね」



しかしながら、病状は年々回復傾向にありつつあった。


それを見たシクラの父であるキクロス伯爵は、



「そのくらい元気になれば、縁談も大丈夫だろう。」



と皇帝から来ていた婚約を通した。

もちろん自身の意思も尊重し、何度も話し合いを行う。


だが話し合いは不必要だった。


なぜならシクラには、縁談を断る理由が無かったから。


小さな頃親の社交等で出会い、明るく前向きなサンを慕っていた。






縁談を二つ返事で了承したシクラを見たサンは、思わず腕を手繰り寄せ強く抱きしめた。



「ありがとう…ありがとう…シクラ」


「いえいえ、私もサン様と婚約する事が出来て嬉しいです!…それはそうと、少し苦しいです……」


「はっごめんつい嬉しくて…僕とした事が」



と頬を赤らめながら離れるサンはとても愛らしかった。


この幸せな時間がいつまでも続けばいいのに、と強く願った。





キクロス伯爵の薦めで留学にも行った。


咲き乱れる花々、綺麗な景観、進歩した学問を感じ、今度はサンとも来たいと思った。




だが、定期検査の結果でそれらの願いは崩れる事となる。


回復傾向にあった病が突然悪化したのだ。




「ここまで悪化してしまうと恐らく…もう回復は見込めません。延命治療に入ります。」



「そんな…!どうにかならないのか?」



「…もう私達には、シクラ様をできる限り長く生きてもらう手助けをする事しかできる事はありません…」



「お父様、お母様、ごめんなさい…」



この医師の宣告を両親は泣きながら、シクラの手を握りながら聞いた。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


翌日、入院先の病院に駆け込んできた親友、ベラが言った1報に更にシクラはどん底に突き落とされることになる。



「シクラ、居る!?あなたの旦那の事件知ってる!?」



実はシクラとは違う大学在学中であるベラは、サンに毒を飲ませたスイと同じ大学だった。



首を傾げたシクラにベラは大声でまくし立てる。



「学校で噂が回ってて、それを聞いたのだけど、実はあのスイが次期皇帝の飲むワインに毒を盛ったらしいの!それで……」



「それで?どうかしたの?」



「…翌朝スイは次期皇帝の私室のベットに居たらしいわ。」



シクラの声にならない声がベラを突き刺した。


「嘘…なんで…どうして…」



涙がシクラの頬を伝った。



「…でもね!もちろん次期皇帝が誘ったわけじゃないわ!」



「分かってる…あの人は誠実な人だもの…ごめんね、ベラ。今日は1人になりたいの。また今度来て欲しいな」



辛うじてそう声にした。


ベラが心配そうに病室を出た後、シクラは考える。



もちろん辛い。留学や婚約手続き、婚約パレードなどで一緒に寝たことは1度もなかった。



でも1番今辛いのはきっとサンだ。


あの誠実な彼だ。


私が悲しんでいてはいけない。


元気づけたい。


でも病気の事は?私がサンに迷惑をかける事になる?



シクラは思い悩んでしまった。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼



そんな矢先に皇帝邸に呼び出された。


例の件を話されるのかと覚悟をもってサンと会った。



しかし、サンから告げられたのは別れの言葉。




別れるなんて片隅にも無かったシクラは、必死で自分は既に全部知っている事を打ち明けようとした。


だが焦って声が出ない。


喉を犯していない病魔は、この時だけは喉に這い上がって来ていたに違いない。



だが。シクラは思い直す。



私はいずれ死ぬ婚約者。


そんな婚約者が居てもサンに迷惑がかかるんじゃないか?


私は婚約者が困る所を見たいのか?


幸せになれない所をみたいのか?




そんなはずはない。



私は愛しい人の言葉を、完璧な礼を以て受け止めた。


読んで頂きありがとうございました!


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