episode.1
連載始めました!
よろしくお願いします!!
「あのさ、僕ら別れよう」
シクラはその決断を聞いた途端、目を見開き、そして涙を目頭に溜めた。
その悲痛な表情にサンの胸はズキリと痛んだ。
シクラの為にも別れを告げなければならなかったんだ。
そう言い聞かせながら皇帝邸への帰路を急ぐ。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
こうなってしまった事の発端は、先月の社交界での出来事が原因だった。
本来婚約者を連れて参加する社交だが、
当時婚約者であり皇后になる予定であるシクラが他国に留学中だった。
「父上、私の婚約者は留学中です。社交を欠席する事はできませんか?」
「ならん、これは参加度の高い社交だ。1人でも良いから行け。」
そんな事を言われ、気乗りはしなかったが仕方なく社交場に足を運んだ。
社交場に着くとすぐ、
「是非とも我が娘との婚約を。」
「どうか今晩私と踊って頂けませんか?」
などと、シクラが居ないのをいい事に近寄ってくる貴族は山ほど居た。
だが、次期皇帝という事もあり、波風を立てるのは良くないと父に言われ、
「すみません、僕には婚約者が居まして。」
と、やんわり断りつつも他の貴族と程々な距離を保っているつもりだった。
しかしサンは、妖しい視線に気付かなかった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
事件が起きたのは社交が終わってすぐだった。
皇族との子供を作ろうと目論んだ女貴族スイが、サンの飲む酒に毒を盛ったのだ。
サンは我を忘れスイを自邸に招き入れ、スイと一緒に私室にあるベッドに向かった。
「…嘘だろう……?」
翌日目が覚めたサンは、横で寝息を立てるスイを見て、
毒を盛られてしまったとはいえ最低な行為をしてしまったと気付く。
大切な人であるシクラが居るにも関わらず。
騎士を呼び、そのまま隣で寝ている女を連行させた後、
サンはシクラとの事を考えていた。
こんな自分がシクラの横に居ていいはずがない。
シクラに顔向けできないと自分を責めた。
そしてサンは泣いた。
シクラの為にも別れようと思うのに、そうしたくないと心が叫んでいる。
シクラとの思い出が脳裏に蘇ってくる。
他国に旅行した思い出、食事をした思い出、お互いの洋服を選びあった思い出。
その度にサンはまた涙を流す。
自分から別れを告げられた時、シクラの悲痛な顔と声が容易に想像出来る。
想像する度に胸がズキズキする様に痛んでいる。
「ごめん……ごめんなシクラ。こんな僕で。」
悩みに悩み、葛藤した末に、サンは別れることを決心した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
翌日皇帝邸に呼び出されたシクラは、サンから別れを告げられる。
サンは別れる理由を言わなかった。
シクラを余計傷つけることになると思ったから。
サンはシクラに責められることも、
なんなら引っぱたかれるのも覚悟していた。
だが、
シクラの口から発せられた言葉は
「分かりました。今までありがとうございます。どうかお元気で。」
だけだった。
その言葉を聞いて、逆にサンが拍子抜けしてしまう。
「…どうして僕を責めないのか?」
その時シクラは、悲しそうな表情で黙って首を横に振るだけだった。
サンは後に、何故もっと強くシクラに聞かなかったのかと後悔する事になる。
読んで頂きありがとうございました!!
実はこれが人生で1作目なのです。
至らない点もありますが、どうか広い目で見て頂けると幸いです。
ブックマークや✩評価をして頂けると嬉しいです!