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うつけもん、死にま~す
やはり、そうか。
乱世は、新たな世界を目指すわしを許さなかったのか。
「是非もなし。」
わしは、武士の美学などが嫌いである。
潔く死ぬ事があっぱれ?
ふざけるな。
死んでは、今までの功績が、全て無に還るではないか。
そう思って、今日まで生きてきた。
だが、今度こそは終わりだ。
炎に焼かれて死ぬくらいなら、自らの手で終わりを迎えよう。
これは、武士の美学ではなく、首を取られぬようにする為の手段だ。
「人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻の如くなり 一度生を得て 滅せぬ者のあるべきか」
わしは、日頃から好む『敦盛の舞』を踊り、短刀を握った。
短刀を首にそっと当てた。
帰蝶との出会い、父の死、義父との会見、村木砦の戦い、義父の死、弟との対立、弟の始末、桶狭間、清須同盟、稲葉山城の戦い・・・
記憶に無いほどの戦を経験してきた。
記憶に無いほど人を殺してきた。
ただ、新たな世界を目指して突き進んでいただけなのだ。
わしは首に当てた短刀を、ゆっくりと下に滑らせた。