第33話 労働 贅沢 勉強
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「働きたくないでござる。」
「勉強しないと……やる気でないけど……。」
相談依頼の集団講座・第2回。
今回の依頼人たちは、やる気がない。
「働きたくないなら、働かなければいい。
勉強したくないなら、勉強しなければいい。」
開幕の一言に、会場からどよめきが起きる。
「はあ?」
「何言ってんだ?」
「それができれば苦労しねぇよ。」
俺は手を挙げて、彼らのざわめきを制する。
「そもそも、どうして働くのか?
そもそも、どうして勉強するのか?
君たちは、そこが分かっていない。」
収入を得て生活していくために働くのだと思っているなら、それは勘違いだ。
世界的な大富豪――たとえば、国際企業の社長とか、国王とか、彼らはもう働かなくても食べていけるほどの財産がある。だが、それでもなお働いている。なぜか? 彼らは働きたくて働いているのだ。国王は生まれながらにそういう家系だから自覚してないかもしれないが、社長はその事をよく自覚しているだろう。
働かなくてもいいのに働いている。彼らはそういう人たちだ。なぜ彼らは働くのだろうか? それは、働くのが楽しいからだ。直接的には人の役に立ちたいとか思っている。その欲望を満たすための行動が「労働」なのだ。
彼らにとって働くという行為は、趣味のようなものだ。やる必要のない事をやる。生きるためだけなら粗食でもいいのに、わざわざ贅沢な食事をするのと同じである。
逆のパターンを考えてみよう。
ひどく貧乏で、働き口もない。そういう人たちは、どうやって生きていけばいいか?
自給自足しかないだろう。畑を耕し動物を狩猟して食糧を集め、住居も衣服も自分で作る。そんな原始的な生活をするしかない。ほとんど獣のような生活だ。
だがそこに「働いて賃金を得る」という行動が加わると、その金で何かを買うという自由が生まれる。自分でやらなくても、他人の成果を金で買うことができる。同じ物を作るために消費するはずだった時間を、金で買うことができる。そして、買った時間で何をするかは自由だ。
つまり働くという事は、この自由、この贅沢のために、実行される。
「つまり、働くことは贅沢なのです。」
では、勉強はどうか?
原始的な生活をするのに勉強は必要なのかといえば、不要だ。むしろそんな暇があったら少しでも多く畑を耕し、動物を狩り、衣服を作らなくてはならない。不足したら死ぬからだ。食糧が不足すれば飢えて死ぬし、衣服が不足すれば凍えて死ぬ。それが嫌なら働くしかない。勉強する余裕なんかない。
ところが「働いて賃金を得る」という行動が加わると、生活が豊かになる。そして、より多くの賃金を得るには、より専門的な知識と技術が必要になる。勉強はそのために必要なものだ。
「すなわち、勉強もまた贅沢なのです。」
獣が勉強する事はない。
猫が「ねずみ取りの作り方を勉強したいにゃー」とか、熊が「鮭をもっと効率よく取るために定置網漁法を学びたいクマ」とか言わない。生きるためだけなら、必要のない行動だからだ。
勉強と労働は、すべて贅沢をするために実行する、贅沢な行為だ。
「そんな贅沢を『やりたくない』というのなら、やらなければいい。」
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介護士無双
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