婚約者が義妹を選んでも政略結婚なので無問題。
は? なんですか、藪から棒に。
婚約を破棄する? 我が家に喧嘩を売っているのでしょうかね。殿下は。
三番目と甘やかされていたツケがここに。
いえいえ、なんでもありません。
後ろにいるのは義妹ですね。
やってしまいましたわね。愚妹。
婚約破棄は了承できかねます。リート家として……。
ええ、不敬とか意味がわかりません。
最後まで話を聞きなさいと言われたことはないのでしょうか。
そこまで仰るのでしたら構いませんが、リート家の娘と婚約しているのです。そこの義妹とも婚約を解消することになります。
驚愕という顔をしないでください。
何をバカなことを。婚約していたのはファラだろう。って。
政略上の婚約をどうお考えで? リート家の娘でしたらどの娘でもよいのですよ?
私は長女であり、一族の年頃の娘として一番歳が釣り合うというだけの話です。
なんなら臣下の家の娘でも養女にするから問題ないわけです。
我が家の影響下にある娘を王家の婚約者にする。発言権が増す、これが家として大事。何だって父上が必死に押し込んだと思っているのでしょうか。
私一人では心許ないと遠縁のかわいい系少女を養育していた。結果がこの義妹であり、見事王子を射止めたわけです。
喝采を叫ぶところですよ、ここ。
それが何をとち狂ったか婚約破棄!
有り得ません。
私が義妹にいじわるを?
必要あると思われます?
家のために頑張ってるから邪魔しないように厳命していた気苦労を無為にされたのですね。
ひとまず、私ではありません。他家からの妨害なのでは? 姉妹の関係が悪化して利を得るものを疑った方がよいでしょう。
リート家としてはどの娘でもよかったのは本当なんですから。
あのね、あなたにもわかるように言えば、最初からなにも障害はありませんでした。お姉ちゃんごめんなさいも全く意味がわかりませんでした。
むしろ、でかした、と褒めるところです。
それが、なぜこのようになると言えば、殿下が、婚約が個人間で為されると思い込んでいたからでしょう。
私たちは幸い生きておりますが、世には大人になれず亡くなることもあります。そのときに婚約を継承するものがいない方が問題でしょう。
陛下のもとへお行きなさい。お説教くらいは受けてくださいね。
はぁ、ようやく終わりました。
ああ、ありがとう。
あなたの香草茶は一番なごみます。なんですか、急に照れて。
怒っていないのか?
いいえ?
殿下は出来の悪い弟のようなもので、可愛いくらいです。
旦那様にはしたくありませんけどね。
それに最初から殿下の好みじゃないと言われていたので、その気も出ませんでしたから正直ほっとしました。
もう一人の義妹なんて全く殿下の目に入ってませんでしたし、よそに嫁に行ってもらって、家に残るのは私でよいでしょうか。
高位貴族として生き残るには彼女は善良すぎますし、殿下はちょっとお馬鹿さんですからね。
一生あの娘のお守りとはぞっとする話ですけど。
でも旦那様くらいは自由に選んでよいのですって。
中々に心躍る話ではなくて?