能力学園へ(鬼角 正修の場合)
はい!ここからが、本編!!
ここからがフムヒミ!
というわけで、まぁ、取り敢えず読んでみて下さい。
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、
京急線特有のモーター音が、僕たちしかいない車両に響く。
いや、しかし、、、
白色、茶色、灰色の色とりどりのビルの上に乗っかっている清々しいまでの青空。
肌の内側にあるはずの筋肉がほろほろとほころぶような陽射し。
電車特有の有ることに間違いはないのだが、嫌ではない絶妙な揺れ。
確かに、こんな状況に晒されたら眠くなってしまうのは、分からなくもない。
分からなくもないが、俺の肩で寝るの止めてもらえませんかねぇ?
僕の肩には、幼馴染の頭部が乗っている。
あ、別にサスペンス始めようとかそう言うわけではないよ?
アレの事だよ、ラブコメとかで見るヒロインが主人公によっ掛かって寝てるアレ。
ホっントよくこんな恥ずかしい事できるな、感心するわ~~の前に、されてるこっちまで恥ずかしくなるわ!!
実際に、付き合ってないしからなぁ、、、
だがしかし、不幸中の幸いだろうか、周りに他人はいない。
周りの人達にに『付き合ってるんだ~』みたいな目で見られたら、爆ぜて飛んでいきたくなるからな。
ま。そうは言っても、チユがいっつもベタベタ近づいてくるせいで、そういう目で見られるのは、慣れているんだがな。
因みに、毎回爆ぜて飛んでいきたくなっている。
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、
まぁ、そんな事は良いとして、チユは多分寝ていない。
唾をよく呑み込んでいるからだ。
人間は寝ている時、唾液が出ず、唾を呑み込む必要がないらしい。
そういう事のはずなのにチユは唾を呑み込みまくっている。
つまりチユは寝ていない。
あくまで漫画知識だから、ほんとかどうかは分からないが、もし良かったらこの知識を使ってみてくれ、女が寝ているふりしてるのとかも分かるから。
寝ているふりをしていることに気づかれた最高に悲しいコイツの名前は、聖堂院 治癒。
あだ名として、チユと呼んでいる
チユは幼馴染だ。
同じ小学校に最初から共に通っていたらしいのだが、知り合ったのは小学校高学年で、ちゃんと喋ったのは中学校前半だとしても、紛れもなく幼馴染だ。
その後、俺に好意を寄せてくれていたらしくずっと近くにいる。
物理的にも。精神的にも。
毎日、LINEでの返信は欠かさない。
無視しても、メッチャ、[心配してるよ~]みたいな連絡が、やって来る。
やばいだろ?
チユの家は金持ちだ。
聖堂院一家が住まう家に招かれたことがあるのだが、家がマジでデカかった。
漫画とかアニメとかの架空の世界でしか見たことのない様な程の大きさのTHE豪邸。
そんな物が、僕みたいのが住んでいる閑静な住宅街に突如として現れたんだから、チユとチユの両親は近所の奥様方の話題の種とあっと言う間になったのは言わずもがな分かるだろう。
その近所の奥様方の噂だが、どうやら、、、と言うか、疑いようもなく信じることしかできないのだが、チユの父親は大企業の社長らしい。
チユのお母さんは知らないな。
でも、いつも和服でいて極道の妻って感じだったな。
あと、巨乳だった。
そこはちゃんと娘にも、受け継がれている。
閑話休題
中学校の初期に、めちゃめちゃ距離を詰めてきたチユに、その事は『本当か』と聞いたら、何気なしに『そうだよ』と即答した。
そのすぐ後に、『セイくんが住んでるからここに来たんだよ』と清々しい笑顔で言うから、冗談なのかな~と思ってその日は笑って、家路についた。
家に帰ってから、何気なしに、チユの両親の会社を調べてみたら、今現在住んでいるところが、以前住んでいたところより、本社が遠くなっていた。
俺って何かしたっけ?と最近の身の振り方を思い返すほど、その時は今までの人生の中で一番ビビった。
ゴゴォォーーーーーッッ!!!!
びッくぅっ!
「、、、、う、、、っ!!」
はぁ~~~ビビったぁ~~~~今までで一番ビビったわぁ~~~~
青空と住宅街が見えていた視点に、突如として車両の窓が暗くなった。
どうやら電車が、地下に潜ったようだ。
ていうか、チユさん俺よりびっくりしてなかった?ww
「ふっ、、、」
ヤバッ!笑っちゃった!気付いているの気付かれたか?
目だけ動かして、チユの表情を確認する。
まだ寝ているふりをしていた。
ホッ、、、、、って何で安心してるんだ!!
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、
あの事以降のチユの振る舞いを見ていて、ただ単に好意を寄せてくれている事が八割がた信じられるようになった。
まだ信じ切れていない。時々狂ったような行動をとる時があるからだ。
ていうか、直接『その事』を聞いた事がある。
それも、あのストーカー発言の翌日に。
『俺って聖堂院に何かした?』と問いたのだが、『覚えてないの?』と低いトーンの声が僕の耳をひれ伏せさした。
が、瞬間、空気が軽くなり、チユが『分からないなら、そのままで良いよ。私だけが分かってればそれで良いから』と、笑って言った。
その後に、告白された、、、、らしい。
うん、、、、ラノベの主人公みたいでホント申し訳ないのだが、その時の俺は、『こう雰囲気の取り扱い方が、上に立つ者の資格って言うものなのか~~』、と感心してしまって話を聞けていなかった。
これは、当時、ホントに惜しいことをしたと後悔していた。
チユは、中学校で人気がありすぎて他の女子から妬まれる程の美人だし、一番の魅力は、ワンチャン逆玉の輿じゃん?
ま、こんな不埒な事考えている内は、付き合う一番のメリット、『愛し合う』事が味わえないのだから、今となっては良かったと心に言い聞かせている。
言い聞かせないと、身悶えするほど公開してしまうから。
実際に、その状況で付き合っていても、道理が通っていない。
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、
それからは、一度も告白されたことはない。
多分、、、?
一度告白を逃した身としては、断定できないのでな。
もし、チユのトラウマみたいになっているのなら申し訳ないと心の底から思う。
そんな事考えながらも、未だに付き合っていないのは、単に俺が臆病者だからだ。
あぁ、誰かと付き合いたい。
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、
てか、長くない?
いつまで地下に潜ってくつもりだ?
さっきから耳がパクッってして、ずっと嫌なんだよな。
それより、京急線ってこんな長かったんだ。中学時代通い詰めた俺でも、こんなに長い路線とは気付かなかった。
まぁ、方面が違うから分からないのもしょうがないかな。
ゴトン、、ゴトン、、ゴトン、、、、、、、
光るプラットフォームが流れるように現れた。
段々と電車はスピードを捨てて、駅に到着する。
少し左右に揺れる。
プシューーーーー
扉が足早に開いた。
聖堂院 治癒は、動かない。
あれ?あれれ?
少し身体を前のめりにして、顔と目を動かして、チユの喉元を確認する。
唾を飲んでいなかった。
ガチ寝かよ!?
俺は、そっと、本当にそっと、象の足の裏位繊細に、よっかかっているチユを自立させて、自分一人だけ俺は、駅に降り立った。
この時俺は、考えていた。
『このままほっといたらチユはどんなリアクションをするのか』と。
気になってしまったら、やらずにはいられないとか、そう言うわけではないのだが、今日の気分でそうしてしまった。
プシューーーーー
電車の扉が閉まった。
無情にも、そのまま電車は進んでいってしまった。
今になってだが、チユ怒らないかな?
ま、チユ甘い奴だからな。
なんて心に言い聞かせながら、流れ往く電車を眺めていたら、おじさんが見えた。
銀髪―――目が刃物―――人殺してそう―――日本刀―――和服―――強そう(語彙力)
ぞぉわぁあーーーっっ!!!!
身体の芯に竹串でもツッコまれたように身体が固まった。
その老人の視線が俺の心臓を劈き刺すついでに、脳を凍らせた。
ま、、、『マインドコントロール』!!
しらたきがほどけるように心が軽くなった。
「ふっはぁ~~~~」
肺が干しレーズンぐらいになるまで息を深く吐いた。
マジなんだったんだ、あのおじさんの目!
絶対人殺したことあるだろ、って感じの目。
しかも、あの目に銀髪に和服とか確実に堅気じゃないだろ。
極めつけに、刀を肩に掛けていたよな?
ん、、、、あれ?
あの人普通に銃刀法違反じゃん。
ま、関わらないのが一番だな。
「あ」
出口に向かおうと、振り返ろうとした時、危険人物が乗っている電車に寝たままのチユを置いてきてしまったのを思い出した。
流石に悪いから、LINEで言っておこうか。
スマホをポケットから出して、[そこにやばい奴居るから、気を付けてね]と書き込む。
ピッ
これで安心だな。
線路の方に向いていた自分を出口に繋がるであろう階段の方に向け、一歩踏み出し―――――た所に誰かいた!!!
「うおぉっっ!!」
「『うおっ』なんて失礼やな~」
細目―――狐顔―――ズボン?―――性別どっちだ―――髪を後ろで結っている―――性別不明―――てか、顔近!
関西人!?ここは東京だぞ?リスポーン地点間違ってんじゃねえのか?
目の前に居るソイツは、僕が今から向かおうとしている能力学園の制服を着ていた。
なんだ生徒か。
関西弁を喋っているから、考えなしに警戒してしまった。
俺の悪い癖。
「キミいいの?遅刻やん。何吞気に歩いてん?」
「そっくりそのまま言葉を返すよ」
「いやだなぁ~、ボクは大丈夫やって!」
バシッバシッ
狐顔をニヤニヤさせながら、俺の背中を叩く。
「いや、何がだよ!」
思わず突っ込んでしまった。
「良いツッコミするやん!」
お褒めの言葉を頂けた。
関西の人に褒められたんだから、胸を張ってもいいだろう?
「キミの名前は?」
「あぁ、鬼角 正修だ。お前は?」
「笑神 運!めぐみんって呼んでぇな」
「それは著作権!!!」
「ハハッ、めぐちゃんとかめぐっちとかめぐるんとかで呼んでぇな」
「あぁ。よろしくな。笑神!」
笑神 運は、反応してくれなかった。
「あ?」
あぁ、あだ名で呼べってか?
初対面なのに、こっ恥ずかしいわ!!
「、、、めぐっち」
「おう!よろしゅうな!」
洒落が上手いな。ギリで人をキレさせないウザさで嫌いじゃない。
「って!こんな事してる場合じゃないっての!!早く行くぞ!めぐっち!」
もうやけくそだ。
ダダダダダダダダダッッ、、ダダダッ、、、、、、
全力で階段に向かって、ダッシュして、階段を駆け昇る。
後ろを振り向いて、めぐっちが、ついてきているか確認したが、いるはずの場所に居なかった。
トットットットットットッ
階段を気を付けて降りると、ゆる~と歩いているめぐっちが、プラットフォームにまだいた。
「何で急がないんだよ?」
「いやぁ~、体力不足なんや」
「運動してないのか?」
「んまぁ、幸運だからな~~」
は?
驚くほど、まったく答えになっていなかった。
「う~~~~~ん!じゃあ、負ぶってやるよ!」
「は?」
キョトンとした顔を向ける。
「これから困る人が目の前にいたら見捨てられないだろ!それでいて、俺は、入学式にいち早く行きたい!だから負ぶっていくしかないだろ!!」
まだめぐっちは、キョトンとしている。
2、3秒後にめぐっちは、ハッと我に返って、ぶはぅっ、と吹き出した。
「なんやそれ~~、ククク、、、じゃあ頼むわ!乗せってってくれや!」
俺は、めぐっちを背に屈む。
めぐっちが、しっかり乗ったことを確認する。
足をがっちり固定する。
『ブースト』!
ダダダダダダダダダダダダダダダァァァァァァァァ!!!!!!!!
螺旋状になっている階段を全速力で昇っていく。
「うわっち!!」
めぐっちが、グラングランと揺れながら叫んでいる。
俺は、ジェットコースターじゃねえぞ。
「そんな急がなくてもええんやで!!」
「大丈夫!!」
「何が大丈夫やねん!!」
「後、一秒でブーストが切れる!」
ガックゥ!!
ずじゃぁぁぁ~~~~~
顔面から突っ込んでしまった。
「痛って~~~、やっぱこれあんまり使うもんじゃねぇな」
『回復』と『修復』並列使用!
顔の擦り傷と破れかけた制服がジュクジュクと直されていく。
あれ?思ってたより、傷が深くないな。
勿論痛いけど、、、
「オイオイ、ボクの下で考え事すんのやめてくれへんか?」
「すまんすまん」
俺は、めぐっちを背負ったまま、むくりと立ち上がって再度出発を試みる。
「いや!待て待て待て!!」
「別に遠慮することはないぞ?傷とかもすぐに治るし」
「そっちちゃうわ!ボクがガチで怖いねん!それに見てみぃ」
めぐっちはスマホを僕の顔向けて突き出す。
「あ」
「もう時間過ぎてるやろ?今!まさに遅刻しているんやから間に合うはずないやろ!遅れて着いても何か嫌だろ?」
確かにめぐっちの言う事は一理ある。
遅れて着いてコソコソって入るのを、周りの人たちからの奇異の目に晒されるぐらいなら急がなくても良いかもな。
うん、その方がいい。
「しょうがないな。もう間に合わないから、めぐっちに付き合ってやるよ」
「そりゃどうもー」
「メッチャ棒読み!?」
「だってどうせ間に合うからな~」
めぐっちはふてぶてしく言う。
今の言い方スゲーむかつくな。
「どうせってなんだよ、どうせって」
っはぁ~~~
めぐっちはめんどくさそうにため息をつく。
「だから~言ったやん!ボクは幸運だから」
さっきからちょくちょくめぐっちが言ってる『幸運』ってなんだ?
新手の宗教とかか?
あんまり触れとかない方が良いのかなぁ?
「そんなことより君の能力って何なん?」
ギクゥ!
「いや、ほら、あれだよ。回復系の能力だよ」
「ふ~ん、そういえばさっきのコケた傷、治っとるもんな」
「そうそう!」
あんまり言わないように釘刺されてるのに、痛いとこ突いてくるな~
「でも、階段昇る時、メッチャ足早うなってなかったか?」
ギックゥゥッッ!!
「そんなことないよ!いっつも体鍛えてるからそれの賜物じゃね!?それより*の能力は?」
(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)(汗)
「いや、それはプライバシーやから」
「なんでやねん!先に聞いてきたの*じゃん!」
めぐっちが俺の方を見てニヨニヨしている。
会ってからずっとニヨニヨしてるけど、、、
ハァゥアァ!!!!
つい俺もつられて関西弁になってしまった!
「まぁ、それは冗談としといて、僕の能力は
『幸運』
やで」
あぁ~さっき言ってた幸運ってそういう事だったのか~
変な宗教とかのヤツじゃなくてよかった。
でも、聞いた感じ弱そうだな。
「それってどういう能力?」
「ハハッ、見たまんまやろ」
「いや、そうじゃなくて、どこまで幸運になれるのかってこと」
そう俺に聞かれてめぐっちは、う~んとうなだれて考え始めた。
「う~ん、知らんな~」
「なんでだよ、、、」
「う~~ん、でもなぁ、赤信号ってものを知らないし、テストじゃいつも満点だし、忘れ物探し物したことないし、降水確率100%の日に出掛けたら急に晴れ始めるし、怪我もしたことないし、事故に会ったこともないし、あ、そう言えば、僕を狙おうとした通り魔が心肺停止で死んだし、何かに応募したら絶対当たるし、ゲームのガチャでも最高レアのヤツしか出ないし、川に流されても生きてたし、僕が嫌いだった子は皆学校からいなくなるし、、、」
「もういいもういい!!ま、取り敢えず」
因果を捻じ曲げられるほどの『幸運』ってことだな。
「取り敢えず、ナニ?」
「強いってことが分かった」
「そうか?」
そんか感じで、俺たちは地上を目指して階段を昇り進める。
しかし、昇ってもプラットホーム、昇ってもプラットホームの繰り返しで中々地上に出れなかった。
そして、あ、これもデジャブだ、と思い始めたころ。
「ていうか、これいつまで続くんだよ!しかも、なんでこんなにクネクネした道なんだよ!!」
今まで来た道のりを説明する。
最初に降り立ったプラットホームの一番端にあり、しかも、一つしかないのに200段位の螺旋階段を登ったところにまたプラットホームがあり、そこの上がってきた階段と真反対の所にまた200段位の螺旋階段をまた昇るーこれの繰り返しだ。
しかも、白一色でマジで精神が蝕まれる。
「階段やからなぁ~~」
どっかで読んだことあるんだけど(どうせ漫画)、この上に行くのめんどくさい構造ってテロ対策のヤツじゃなかったけ?
まぁ、これを堂々と言って、違う事がバレたら一生後悔することになるからめぐっちには言わないでおこう。
「う~んでも、もう少しで着くと思うで」
何の根拠が。
「あぁ、俺もそれを願ってるよ」
ホントにこのプラットホームは白過ぎるな。
流石、京急線といったところだろうか。
でも、ちょっと色位は欲しかったかな、、、
「そや!キミ!」
「ん?」
「ここまで一人で来たんか?」
「いや、幼馴染と一緒に来たんだが、、、、」
「来たんだが?」
ニヨニヨしながら、聞いてくる。
「はぐれっちゃった」
「ハハハッ!この一直線の京急線ではぐれた?ブプッ!幼馴染少しお茶目やな」
すまん、チユ。お前のあずかり知らぬところで評価が下がってしまった。
ま、俺は、悪くないよな。評価付けたのはめぐっちなわけだし。
「そう言えば、電車にメッチャ怖い人乗ってなかった?和服でさぁ、なんか刀持ってた人」
「あぁ、それボクのお父ちゃん」
「えぇ!?」
「そんな驚かんでもw」
「いや、今日一だよ!!」
だって、全く似てないんだもん。
「ま、養子なんやけどな、、、」
、、、触れちゃアカンヤツだったぁぁあぁぁぁぁ~~~~~~!!!!!!しかも、悲しそうに言っとるぅぅぅぅううう~~~~~~~!!!!!!!
「、、、、」
こういう時の対処法を俺は、まだ知らないんだよ。
「、、、、ハッ!気にせんでええよ?だって精一杯可愛がってくれとるもん。それで十分やろ?」
あ、、、この子メッチャいい子じゃん。
さっき説明した階段を更に数セットした後―――
「あ!外や!!」
めぐっちが階段の先の地上の光を指さす。
はぁ~~~
「やっとかよ、危うくこの学校建築した人殺すところだったわ」
ダダダダッッ!
「ほひゅぅ~~~~~」
頬を撫でる風が気持ち良かった。まるで何十年ぶりに触れたかのように。
「うおっ」
風に気を取られていたが、視界に割り込む形で入ってきた校舎が、そこにはあった。
和風と洋風が混在している少しぎこちなさを持ち合わせている校舎。
今、俺たちが昇ってきた出口から伸び出ている洋風の石畳を目で追っていくと、先には正面玄関だと思われる大きな扉。
正面玄関の縦の幅の数十個分にもなろうかという大きな建物その横には、通路でつながっている左右対称の棟達。
まるで、校舎が今にも俺たちを丸呑みしてしまうかのような怪物に見えた。
にしても、綺麗な校舎だな。
まるで新築みたいだ。
そんなこと考えていると、後ろから
「ちょっ!、、はやっ!、、」
と息が上がり目なめぐっちがやってきた。
「メッチャ綺麗な校舎じゃない?」
この時の僕は、広大な敷地と綺麗な校舎を前に、非常に浮足立っていた。
「あぁ、そやな」
そう言えば、めぐっちは息が上がっていた。
『回復』!
「はぁっ、、、はぁっ、、、ん?お!回復した!!能力使ってくれたんか?」
「そりゃ能力は他人のために使うだろ」
「ハハッ、今のいい言葉やな!ありがとうな!」
「じゃあ行こか」
俺たちは石畳の上を進んでいく。
「いやぁホントに広いな」
「そうか?」
めぐっちはキョトンとした顔をする。
「いや、お前どこの金持ちだよ!」
くだらないこと言っていたら、正面玄関に突き当たった。
スゥゥゥゥ、、、
開けると、明るめで良い雰囲気のベージュ色を主体にした壁色が目に飛び込んできた。
うん、実に良い。落ち着く。
「えと?これからどこに向かうんだっけ?」
「ん?講堂やろ?」
スタスタとめぐっちが歩みを進め始める。
「いや、もうこの時間帯だったら最悪終わってるだろ?ていうか、遅く行かせたのめぐっちじゃん」
「いや、だから、ボク言ったやん『間に合うて』」
あ、そうか。めぐっちの能力って『幸運』だったわ。
「じゃあ急ぐか」
「いや!もう走れん!ゆっくり、な?それでも間に合うのがボクの『幸運』や」
「ん、分かった」
めぐっちのドヤ顔がウザかった。
俺は、入学式が行われている講堂の場所以前に、学校の構造も知らないので、何故か知っているめぐっちの後をついて歩く。
一本の長い廊下にたどり着いた。
遠くに人が見える。
「せ~~い~~く~~ん~~~~~~~」
肉ミサイルが俺めがけて飛んできた。
緊急回避すら出来なかった。
ドンッ!
「ぐえっ!」
「どこ行ってたの~も~起きたら、せいくんいないし~」
電車内に置いていったチユが、俺に馬乗りになりながら喋る。
「分かった分かった、よぉく分かったから俺の上に跨るのやめてくれ」
「そっれっでっゆっるっすっとっ!?」
ぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっ!
7コンボ!!
「俺の上で上下運動するのやめろって!」
「はっんっせっいっすっるっまっでっやっめっなっいっよっ」
ぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっ!
13コンボ!!
「反省したって!」
ぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっ、、、
「それ噂の幼馴染さん?」
「そ、ぐえっ、う、ぐえっ、だ、ぐえっ」
チユの上下運動がピッタリと終わる。
「どちら様?」
「駅降りた後から付いてきた友達だ」
ピリッ
空気が一変する。
「よろしゅうな!笑神 運って言います。めぐっち、って呼んでな~」
コイツ全く動じてない!
大物なのか?それとも、馬鹿なのか?
「聖堂院 治癒と申します。以後お見知りおきを」
怖ぇぇ~~
って、横たわった俺に馬乗りになった状態で言うなよ!
チユさん!今めちゃくちゃにダサいぞ。
「もう良いだろ。プレッシャーは」
「よっくっなっいっのっ!」
ぐえっぐえっぐえっぐえっぐえっ
5コンボ!!
「フルコンボだドン!じゃねぇんだよ!!」
『ブースト』!
強引にチユの拘束から抜け出す。
「いやん!(/ω\)」
「変な声出すな!」
「あ、お父ちゃん!」
ふへぇ?
めぐっちが見ている方に振り返ると、電車に乗っていたヤバ目のおじさんがそこにはいた。
勿論、刀を携えて。
「っ、、!」
相変わらず威圧感が半端ないな。
オーラがヌゥ~~ンと垂れ流しになっている。
そこにいるだけで、ナイフを頸動脈に突き立てられているみたいな感覚だな。
勿論、そんなことされたことないけど。
それでも、めぐっちの親なんだし大丈夫だろ。
「聖堂院くん。本校では過度な不純異性交遊は禁止している」
え、、、本校?
「あら、失礼いたしました。校長先生」
「え!?」
うっかり心が口から飛び出してしまった。
このおじさんが校長先生!?
こんな恐い人が校長とかよくなれたな。
見てくれがヤクザだから、なんか存在そのものが教育に悪いって感じなんだけどな、、、
「あれ?知らへんかったの?うちのお父ちゃんこの学校の校長先生やで」
「いや!言ってくれないと分からんだろ!」
知ってて当たり前みたいに言うなよ!
「パンフレット、セイくんに渡したよね?見なかったの?」
チユは少し呆れ気味に問う。
校長が、つかつかと俺に近づいてくる。
だが、俺はもうこの怖さを克服した!
『マインドコントロール』!
「初めまして。校長の蒼黒 未来だ」
「よろしゅく、、、」
噛んでしまった。
『マインドコントロール』だと、表層的な怖さなら耐えられるが、本能的な物には効かないのか?
「まぁまぁ、今回はいったんそこら辺にしてワシ達は先を急ぎますんで」
うわっ!ビックリした!
おじいちゃん―――白髪―――白ひげ―――若目―――背筋ピーン―――タキシード!?―――メッチャ強い老騎士みたい
校長の後ろに隠れて見えなかった、ていうか、気配すら感じなかったんだが?
「そうやな!じゃ、また」
校長がその老騎士みたいなおじいちゃんに連れていかれる。
「じゃあ俺らも行こうか」
「せやな」
「そだね~」
俺達は入学式が行われている講堂に歩みを進める。
「あれ!?」
「なんやねん!!ビックリさせんなや!」
「どうしたの?」
「俺たちが乗ってた電車に校長が乗ってたってことは、入学式まだ始まっていないってことか!!」
「今更やん、、、」
「今気づいたの?」
あれ?皆気付いてたの?
「因みに遅れたのはボクが寝坊したせいや!」
堂々と言うなよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで講堂に着いた。
「じゃ、入るか」
俺は扉を開けた。
ていうか、めぐっち、って、ねずっちみたいだよね
もう一話出せるけどどうしようか。
もし、良かったら、評価とか感想下さい。
僕から言えることはそれだけ。