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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界に転生して知識チートしたかった

作者: あじふらい

毎度おなじみホラー書きたくなる病。

自分の体がきりもみ回転しながら空を飛んでいく。景色が目まぐるしく回っていきながら、ねじり切るような回転が体にかかった。


トラックにはねられたら異世界に行けるなんて、とある小説サイトで見たものぐらいだと思う。ハーレムもチートも最高だと思うし、なんなら一人でする時だってそういうものを使っていた。


異世界に行きたい、という気持ちがないわけじゃなかった。


でもさすがにこの展開は予想していなかった。


「稲葉 忠義さん。あなたは異世界転生する権利が与えられました。おめでとうございます!」

「え、は、はぁ?」


よくわからない場合にはあ、となんとなくわかったような声を出すことが板についてしまっていて、俺は上下にカクカクと首を振った。


「あなたにはいくつか選択肢が与えられます。転生するにあたり、種族などが選べます。魔法を使えるなどのこともできますよ」

「魔法!」

「それから最も重要なのが、これです。あなたは、今の記憶を残しますか?」

「え、記憶を残すことができる?」

「はい」


胡散臭そうな笑みに見えていた天使は、はっきり今神の使い、いや元からそうか、とにかく神々しく見えた。


「じゃあ、残してください。特に支障ないんですよね?」

「はい、ですが最低でも10回は記憶を残したまま転生になります。本当によろしいのですね?」


ああ。

構わない。


そうだ。

それから俺は種族は『ランダム』にした。加えて強くなれそうなスキルをいくつか見繕った。剣術や魔術、そして亜空間スキル。

これらの設定は少なくとも1000回は転生した後変えることができないから、慎重に選んだ。


役には立たなかった。


はじめに生まれ変わったのは、虫だった。地面を這いずる、虫。剣術なんか当然使えない。そして火の魔法を考えなしに使い、今は火に取り囲まれていた。体の産毛が燃える感覚、そして複眼も相まっての司会の気持ち悪さ、吐くに吐けない体の構造。地面に潜ろうとしたが時はすでに遅くて、俺は死んだ。


その時は怒りに満ち溢れていた。


「おい!!どうして虫になんか転生させてんだよ!!」

「さあ、人以外を選択されたものですから」

「ふざけんなよ!そこは魔族とか、ドワーフとか、エルフやダークエルフだろ!!」

「彼らは人ですが?」

「は?」


それは、人間と同じ形をしていれば、人ってことなのか?

じゃあ、まさか俺はひどいミスをしていたんじゃ。


「それではもう一度。良い生を」


ダメだ。

いしきが、


こ ん だ く



のそり、と俺は立ち上がった。殻を破って出た先は、水の中だった。

俺は水中の生き物で、大きさは多分指先くらいだと思う。そして、卵から生まれたばかりの俺は、直後に網のようなものがかぶさってきてぐんぐんと引き上げられていった。


「いやだ!!やめろ、死にたくない!!」


そう言いたかったが、一切の言葉が通じない。俺は声帯を持っていなかったみたいだった。


ヌメヌメした俺を見て、周りを人間が取り囲んでいた。俺に比べて随分と小さい。

いや、俺が大きいんだ。多分俺は人間にとって獲れる大きさで、母親のようなあの影は、俺の成長した姿だ。

ま、まだ逃げられる。大きく暴れると、背鰭と胸ビレに釘を打ち込まれた。


口をパクパクとさせたが、ひりつくような、痛みが走る。えらに空気が入って、痛みを訴えかけてきた。それでも呼吸はしなければ死ぬ。まさに拷問だった。それから尾びれに穴を打ち開けられて、吊るされると一気に腹を割かれた。


どぅる、と内臓がすべり出た。


「うわああああああああああ!!!!」


気が、狂いそうだった。





「な、なんでだ。なんで俺が。こんな目に……」

「いやあ、でもこれはね、あなたが選んだことですから。しょうがないでしょう。大腸菌もまた生命でしょ?ねえ、その生命、どうしてたと思います?」

「い、意味がわからないことを、言うな……俺は、俺は人間なんだぞ……」


「さあ、それはどうなんでしょうかね。あなたは少なくとも特別な存在じゃないですよ。何度も転生を繰り返して日本人になったわけでしょう、元がなんだったかどうしてわからないと思います?」

「お、俺が、記憶をなくすことを選んだと……」


いや。

まだだ。

ドラゴンを引けば、目はこちらにある。


耐えるんだ。

耐えれば、いつかは。



「おかあちゃーん!雑草抜いていくわよ!」

「リシャはいい子ねえ!」

ぶちぶちぶち。


「ギチギチ……ギチギチ……」

ぐちゃ。ずぞぞ。べりべり。むしゃ。ぼき。


「美味しそうなうさぎだ!捕まえろ!!」

「わなの方にかかったぞ!」

めき。


しぬ。

しぬ。

しぬ。

しぬ。




10回目を迎える前に、心が折れた。早く死にたかった。俺は10回目の転生を終えて、それから死んで、天使に「記憶を消してくれ」と頼み込んだ。


「はい?……記憶を、ですか?あの、私申し上げました通り、『少なくとも』10回は定着しちゃった記憶を消せないですから。あなたの存在が薄まる程度に生きながらえないと、あなたの記憶をうまく消せないんですよ。もうちょっと長生きしてくださいね」


そうして、俺は幾度となく転生を繰り返して、殺されて死んで殺されて死んでる。


死んでた。



*********

「あなたは誰ですか?覚えていますか?」

「ぁ、……あぁうー……」

「よしよし。これで記憶が消せそうですね、それじゃあ、もう少し転生しておきましょうか」


ニコニコしている男に向かって、ある日本人男性だった男は、へらりと形にならない笑みを浮かべた。

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