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プロローグ
広い草原、遠くにそびえ立つ壁、澄み切った青空。
そんな場所に1人の少年が立っていた。
『貴方の大切な方はその世界にいます』
『取り戻したいのなら……』
「…何を失っても、あいつだけは帰してやらねえと…」
そう呟くと少年は壁の方へと歩き始めた。
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これでよかったんだ。これで正しく始まるから。そう呟いた青年は降り注ぐ雨を見上げた。
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所詮は紛い物の体。何年、何十年、何百年経てども変わらない。
「私、一体どうしたらよかったのかしら」
家に帰ろうと思えていたのなら、こんな風に悩まなくても済んだのだろうか。
少女の尻尾がゆらりと揺れた。