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外れスキル【地図化】を手にした俺は、最強パーティーと共にダンジョンに挑む 作者:鴨野 うどん

第1章 外れスキル持ちの俺が最強パーティーの一員になるまで

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第1話 彼と彼女の運命を分けた日



「嘘だろ……」

 その呟きが、自分の口から発せられたものだと気づくのに、だいぶ時間がかかった。そのくらいショックだったのだ。
 俺こと、ノート・アスロンにとって。目の前の石盤に浮かんだ文字が。

『【地図化マッピング】 
 レア度 SR(スーパーレア)
 消費スロット 3

 効果
 自身の通過した地点のおよそ半径1000mの範囲を、脳内で地図化し、知識として保存する能力』

 漏れ出た言葉は、喜びからではない。むしろ、逆。絶望から訪れたものだ。

 【地図化マッピング】——。

 このスキルの存在を依然から、俺は知っていた。自分以外の大抵の人も、存在を知っていると思う。

 そのくらい【地図化マッピング】というスキルは、この世界で有名なのだ。

 ——外れスキルとして。



 贈与の儀。

 それは15歳以上になった者が、各地に点在する神の石盤に祈りを捧げることによって、神からスキルという、固有能力を与えられる儀式だ。

 スキルとは?
 その答えは至って簡単だ。

 【剣術】のスキルを手に入れたら、剣術の適性が発現し、【千里眼】のスキルを手に入れたら、遠く離れた地を見通すことができるようになる。と、言ったものである。

 【剣術】のスキルを手に入れて無くても、剣を振るうことは出来る。しかし、【剣術】スキルを持っている者は、確実に剣の才能を保証されてる。
 剣術の上達速度が違うし、辿り着ける剣術の限界点も違う。

 ならば【剣術】スキルを持ってない人は、スキルを持っている人より倍、努力すればいいじゃないか、と考えるかもしれない。

 しかし、才能が無ければ、努力は無駄になる。ある程度の才能があろうとも、スキル持ちは、スキルを持っていない人が剣に向ける努力のリソースを他の方面へ回せる。身体を鍛えて、身体能力を上げたり、簡単な補助魔法を覚えたりといった分野に回せるのだ。

 そもそも、才能がある人が、才能の劣ってる人より努力しないなんて保証は何処にもない。

 そういった理由で、この世界では持っているスキルが重要視される。

 ちなみに【千里眼】のような、人間がどう努力しようとも手に入れられない能力は、スキルでしか手に入らない。
 【地図化マッピング】も、同じ部類のスキルである。

 では何故、【地図化マッピング】は外れスキルなのか?

 スキルの効果を見れば、『あれ? 便利じゃね?』と思うかもしれない。
 レア度を見れば、『SR(スーパーレア)って当たりなんじゃないか?』と思うであろう。

 しかし、【地図化マッピング】は外れスキルなのだ。

 レア度とはそのスキルの贈与の義によっての与えられにくさ。つまり、持っている人がどのくらい少ないかを示す。レア度が高い程珍しいスキルということだ。
 強いスキルであろうとも、出現頻度が高ければ、レア度は低くなる。
 まあ、一般的にレア度が高い方が高性能なスキルであることが多いのだが……。

 消費スロットとはそのスキルが、持ち主のキャパの内、どのくらいの容量を占めるかを表す。

 【地図化マッピング】というスキルはこの消費スロットに問題があった。

 全ての人類が持てるスロットの数は3つと決まっている。
 1つ多いことも、少ないこともありえない。例外はない。

 要するに、【地図化マッピング】を手に入れたものは、他のスキルを手に入れる事が出来ないのだ。

 普通、贈与の義で手に入れるスキルは1スロットな場合が多い。一般的な人はスキルを3つ持っていることとなる。

 稀にレア度の高い、強力なスキルは2、3スロットを使う羽目になる。
 人々が努力しても手に入れられないスキル、【千里眼】のようなものは複数のスロット使う傾向がある。

 そのような理由により、【地図化マッピング】も3スロットを浪費するのだ。

 しかし、【地図化マッピング】の効果は有能である。自身の半径1000mを自動でマッピングしてくれるというのは便利なものである。

 だが、ここにも落とし穴があった。

 この世界で確認されている地図系スキルは3つである。【地図化マッピング】、【世界地図ワールドマップ】、【地図エリアマップ】だ。

 【世界地図ワールドマップ】、【地図エリアマップ】の効果は以下の通り。

『【世界地図ワールドマップ
 レア度 UR(ウルトラレア)
 消費スロット 3

 効果
 この世界、全ての地点を、脳内で地図化し、知識として保存する能力』

『【地図エリアマップ
 レア度 R(レア)
 消費スロット 2

 自身が存在する、この世界のある一定の範囲を、脳内で地図化し、知識として理解する能力』

 【世界地図(ワールドマップ】は完全に【地図化マッピング】の上位互換になっているし、【地図エリアマップ】は知識として保存出来ないものの、消費スロットが2である。
 道に迷わない程度であれば、このスキルで充分だ。

 それでも、知識として保存出来る【地図化マッピング】の方が、広い範囲の地図が分かり、便利だと考えるかもしれない。

 しかし、その考えは間違いである。

 何故なら、この世界では世界地図が流通しているからだ。【世界地図ワールドマップ】持ちによって。正確に書かれた地図が。

 だから誰が何と言おうと【地図化マッピング】は外れスキルなのだ。

 何代前かの、この国の、有能であったが性格に難ありの王子が、贈与の義によって【地図化マッピング】を手にした途端、無能扱いされ、蔑まれ、王位継承権を剥奪され、没落し、田舎でひっそりと死んでいった有用エピソードもあり、このスキルは外れとして一際有名である。

 俺のような一般人ですら、このスキルの詳細を知っているのも、こんな理由であった。



「ノート、どうだったの?」

 この部屋にある、ただ一つだけ扉の、向こう側から、女の子の声が聞こえる。聞き馴染んだ声だ。張り上げたにも関わらず、その声は鈴の音のように美しい。

 俺はその声に応えることなく、扉を開く。

 目に映るのは、幼馴染であるハーフエルフの少女。
 その姿は朝日に照らされて、普段にも増して美しく見える。

 三つ編みに紡がれ、肩から下ろしている金色の髪は透き通っていて、輝いている。
 細やかで、なびやかな睫毛。深い碧色の瞳。この世の白といった概念を表したような肌。その純白を強調させるかのような鼻だち。薄い唇。

 俺は彼女に惚れていた。同郷の幼馴染である、ミーヤ・ラインに。

 ミーヤは、俺の落ち込む姿を見て、何かを察したようだ。

「もしかして駄目だった?」

 ミーヤはこちらに近づき、上目遣いに俺の目を覗き込んでくる。

 俺は実のところ、ミーヤのこの癖を苦手に感じてる。
 不意に詰められる距離。眼の前に来る瞳。その深い碧。瞳に映る自分。
 それをずっと眺めてるとまるで自分が吸い込まれるような気がして——。

「ま、まあね……」

 慌てて、一歩下がり、彼女から視線を外す。
 ミーヤには何年も一緒にいるはずなのに、この癖には慣れなかった。むしろ反対。どんどん苦手になっていった。ミーヤを一人の女の子として意識すればするほど。

「見てみなよ、俺のスキル……」

 動揺を悟られまいと、狭い部屋の中央に位置する石盤を指さす。そこにはまだ、俺が神から与えられたスキルの詳細が写っていた。

 ミーヤもそこに写る文字を見て、理解したようだ。俺が外れスキルを引き当てたことを……。

「そう、落ち込まないでよ……。【地図化マッピング】って便利だと思うよ、私! なんだって、道に迷わなくなるし!私達が一緒に冒険するのには便利なんじゃないかな……?」

 たどたどしく言い訳をするミーヤ。流石にそれは無理があるんじゃないのか? でも、嬉しかった。

 【地図化マッピング】スキルで冒険者としてやっていくのは難しい。そんなことは、俺はもちろん、ミーヤも恐らく分かっているのだ。
 だからミーヤの言葉は、昔からの二人の夢。一緒に冒険者になって、一発当てて、名を轟かせてやろう! といった約束を守る、と伝えているのだ。たとえ、俺が外れスキルを引き当てたとしても、だ。

 そんなミーヤの優しさが、誰かを思いやれるところが、俺は大好きだった。

「次は私の番だよね……。見ててね! 冒険者向きの良いスキル当てて、ノートを助けるんだから!」

 ミーヤは両手にグーを作りながら意気込んで、神の石板に祈りを捧げる。

 通常、この部屋には一人で入るものである。
 自分の保持するスキルが何なのか、他人にバレる事態は避けるべきだからである。

 巨万の富を手に入れられるスキルを手にしたり、【読心】等の癖のあるスキルを手に入れて、周囲の人間の対応が変わってしまったというエピソードは、この世界でも有名な教訓となっている。
 たとえ、どんな親しい人でも、自分の持つスキルを見せるのは躊躇するべきだ。

 だから、この部屋は、神の石盤に写しだされたスキルを偽れるよう、四方を囲む壁で遮られているのだ。

 しかし、ミーヤは俺が部屋に居るにも関わらず、祈りを始めた。それは彼女からの信頼の賜物。
 嬉しいような、恥ずかしいような、もうちょっと用心した方がいいんじゃないの? ってような、心配な気持ちも。でも、やっぱり嬉しかった。

 ミーヤが俺に恋心を抱いているのかは、俺自身まだ分からない。確認もしていない。
 確かに聞いてはみたい。ミーヤは俺のことをどう思っているのか? 恋心があるのか?
 ただ同時に、聞かなくてもいいんじゃないか? とも思う。
 俺とミーヤの関係はこのままでいいのだ。

 手を繋いでどこかに出かけてみたいし、キスだってしてはみたい。

 でも、ミーヤは自分には勿体ないくらいの素晴らしい女の子である。

 俺とミーヤはチャングスという小さな村のに生まれた。畑しかないような、小さな村だった。同年代の子供は俺とミーヤしかいなかった。二人が仲良くなるのは当然のことだったのだろう。
 だからこそ、広い街に出て、たくさんの人に出会ったら、ミーヤは俺より相応しい人間を見つけることができるんじゃないかとも思う。

 ミーヤが俺より相応しい人を見つけたとき、俺は笑顔で彼女を祝福してあげたい。彼女に「おめでとう」って言ってあげたい。ただの幼馴染として。

 だから、今のままのこの関係でいいのだ。たとえ、恋人になれなくとも。彼女の傍にいれさえできれば。


 ミーヤの顔に視線を向ける。彼女の作り物のような、欠点の一つもない整った顔は、突然青い光に照らされていた。

 石板には文字が浮かんでいた。

『【森精霊王の加護】
 レア度 SR(スーパーレア)
 消費スロット 1

 効果
 大地、風、水、三属性の精霊術適性を持つ。また、森の領域において、自身の身体能力を20%上昇させる。エルフ固有スキル』

『【弓術・極】
 レア度 UR(ウルトラレア)
 消費スロット 1

 効果
 弓術最上位適性を持つ』

『【身体強化・大】
 レア度 SR(スーパーレア)
 スロット 1

 効果
 上位の身体能力補正を持つ』

 石板に写る文字に、思わず息を飲む。

 ——ありえない。

 全てのスキルがSR以上。
 しかも、能力の方向性が噛み合っていて、無駄なスキルが何も無い。

 ミーヤほど無駄のないスキルの組み合わせは規格外である。
 ここまで恵まれた存在など、世界で10人もいないであろう。

 それほどまでに、石盤に写る文字は異常であった。

 ミーヤも目を開け、自分のスキルに、その異常さに気がついたようだ。

「やったー! 強そうなスキル!」

 彼女は俺の手を握り絞め、飛び跳ねる。

 強そうなスキルどころじゃねえだろ……おい……。そんな簡単な言葉で言い表すミーヤに、少しばかりの苛立ちを感じる。

 握られた手の感触を確かめながらも、胸の内に複雑な心境が渦巻く。

 ——多分、俺が良いスキルを手に入れてたら、もっと素直に喜べたのに……。

 喜びに夢中になっているミーヤは俺のそんな様子を気にする余裕もないようだ。
 彼女は曇りない笑顔を向けてきた。

「やった! これでノートと一緒に冒険して行けるね! 二人で一流冒険者になっちゃおう!」

 ミーヤの素直で真っ直ぐな言葉と微笑みに、俺は目を逸らす。

 ——どうして俺は、自分の事しか考えられないんだろう……。

 ミーヤより劣っているのが悔しかった。羨ましかった。空虚で尊大なプライドだ。

 でも、いいじゃないか。
 ミーヤと一緒に居れるのなら。
 そう、心に誓ったじゃないか。

 こんな外れスキルを引いた、俺でもミーヤは一緒に冒険してくれると言う。
 最高じゃないか。

 それだけで充分だ。

 ———そう、それだけで充分なんだ。きっと、絶対。





 多分、自分は慢心していたのだ。

 ミーヤの好意に。優しさに。甘えていた。

 だから、俺は半年後裏切られることになる。彼女に。その慢心に。

「ノート、私達。別々の道を歩みましょう」

 普段のミーヤの口調とは違う。落ち着いて冷酷な鈴の音のような声で、別れを言い渡されるのであった。

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