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空冥の檻  作者: 清水刻灼
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プロローグ

空冥シリーズの初期案から。檻と名付けて投稿させて頂きます。

宜しく御願い致します。

冷たい視線、薄ら笑いを含んだその中を少年は堂々と歩き証言台に立つ。

まだ幼さが残る顔立ちに、黒い艶がある髪をした少年だった。

静まり返った裁判室で部屋の奥ーー正面で座る初老の裁判長はその姿を感情を殺した視線でみつめると、小さく頷いた。

ゆっくりと木槌を上げ、次の言葉の為に息を吸う。

少年は裁判長から目を反らずに真っ直ぐと顔を向ける。その表情は悲壮感に満ちたものではなく、運命を受ける者のそれだった。

「判決を言い渡す」

振り下ろされた木槌の後に宣告される。

「被告人、柊火雲に死刑を処す」

その一言で傍聴席では歓喜に満ちたざわめきが広がり、数人の男たちは飛び出していった。

ただ、1人の少女だけはその光景と少年の後ろ姿を悲痛な表情で見つめていた。


「判決が言い渡されました。死刑です! 被告人、柊火雲に死刑が宣告されました!」

裁判所から転がるように出てきた男は、息を切らせながらテレビカメラの前で伝えると満足そうな表情で頷いた。

画面が変わり、スタジオでは自称評論家達が口々に彼が犯した罪がいかに重く、この判決が実に正しいのか憶測と妄想を交えて発言していた。ネットでもこの判決の賛否を討論されていたが、次第に人々は彼の本当の行いに目を向けずーー最年少の死刑囚として注目を浴びた。

少年があるビルにて武器を持った男達6人を殺害し、多くの人々を救ったーーという最初の報道は完全に忘れさられていた。



火雲は冷たい牢獄の中、いつ執行されるとも分からない死刑に対し、何も感じられずにいた。

自分は犯罪者なのか、という幾度もした自問に嫌気が差し、その後は何も考えないようにしていたのかもしれない。

ふと、顔を上げれば鉄格子が嵌められた明かり窓から赤い光が差している事に気が付いた。

その光が手についた血のように感じて、ふと両手へと視線を落とす。

真っ赤に染まった両手、息も絶え絶えな犯人。

そしてーー笑いながら飛び降りていった男ーー。

彼は最期に何と言ったのだろうか?

思い出そうと記憶を探るが、うまくみつからずにその時の光景が映像として流れ出した。

幾人もの半裸の男達が裸にした女達を犯して、抵抗すれば殴って、笑っていた。

その光景に頭に血が上り、持っていたナイフを投げて近くにいた1人を殺した。

それからは簡単だった。

抵抗された事に驚いた男達を嘲笑うかのように、壁も天井も足場にして文字通り縦横無尽で走り回り、1人ひとりを殺していった。

ある者は首を折り、ある者は身体を切り裂き、ある者は奪われた銃で撃たれてーー。

そうして半裸の男達を全て殺した後に、泣き叫ぶ女達を見向きもせずに1人の男が笑いながら現れたのだ。

「お前は最高だ」と言って。

そこまで回想して、その先はうろ覚えになり、次第に記憶から消えていった。

ため息が出そうになるが、頭を振って振り払う。目を閉じて深呼吸をしていると、ふと扉の向こう側に人の気配がして振り向いた。

取手も何も無い壁と見間違うかの鉄製の扉に、申し訳程度に付いた監視窓があるだけだ。

その監視窓が今は開いていた。

それは妙に惹きつけられる眼だった。意識が強そうなキリッとした眉に、優しさと切なさを秘めた瞳だった。

「誰だ?」

火雲は感情が妙に欠如した声を発しながら誰何する。

相手はふぅ、と深呼吸をすると、悪魔の導きかと聞き間違える事を口にするのだ。

「貴方の生命を私に頂けませんか?」

予想外の言葉と少女の声に火雲は面を食らって情けなく「は?」と聞き返す。

「失礼、私はアイリス・アーカディア。所属は言えないけれども、貴方の身体と生命を未来の為に使いたいの。もし、協力してくれるならば、貴方はここから出て自由になれる。どうかしら? 私の下で1度死なないかしら?」

アイリスはみえなくても分かるほど、嬉しそうな声で話した。


それから十数年の月日が流れた。

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