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一週間で魔王倒せと言われた  作者: 斉藤 瞬
一日目
2/7

一日目その1 なんかオークと女騎士に出くわした

視界が黄金一色だ。

だんだん輝きが薄くなっていき、視界が開けていく。

気が付くと俺は、深い森の中にいた。


「って一週間て短すぎだろ!」


なんでそんな末期になるまでほっといたのか。

ああ。へタレだから何もできなかったのか。


さて、これからどうすればいいのだろうか。

俺はとりあえず歩いてみることにした。

適当に進んでれば、手がかりか何か見つかるかもしれない。


「あっ、待って、大事なこと忘れてた!」


あのへタレ女神の声だ。

俺は振り向く。


「魔王の場所もわからないのに行けったって無理あるよね」


へタレ女神が駆け足で俺のところに来る。


「あれ、見えます?あれが魔王の居場所です」


俺は指差された先の空を見る。


「・・・な、なんだあれ・・・?」

「あれが魔王の住処にして魔王軍の本拠地、通称 天突槍の塔です」


森の葉がじゃまでやや隠れてはいるが、確かに見える。

黒色の細長いものが、大地から天空のさらに先まで伸びている。

塔は天に近づくにつれて限りなく細くなっている。

ひょっとしたらあの塔の先端はただ遠近法で見えなくなっているだけで、実はもっと高いのではないかと思ってしまうほどその塔は長かった。


「・・・・・・・・」


俺はその光景に絶句した。


「基本的にあれを目印にして進めば辿り着けるでしょう。回り道が必要になるかもしれませんがそこんところは臨機応変にお願いします」

「おいおい、あんな遠いところ一週間で行けるのかよ!」

「大丈夫です。あなたに与えた『活力』の魔法を使えば十分間に合います。試しに使ってみてください」


ん?使うったってどう発動するんだ?


「発動の仕方ならあなたはすでに知っているはずです。魔法と一緒に取扱説明も脳に焼き付けておきました。完璧に使いこなせるはずです」


俺は記憶を探る。

するとだんだん思い出してきた。

体験したこともないのに存在する使用経験を。


「こ、この魔法は・・・・」

「五つの魔法の中で最もシンプルな強さを持つ魔法、それがこの『活力』の魔法です」

「す、すごい・・・チートというだけはあるな・・・」

「ふふ、気に入ってもらえましたか?」

「ああ、気に入った。何だって倒せる気がする」


俺は試しに魔法を発動し、虚空にパンチを繰り出した。

あたりに衝撃波のいい音が響く。


「魔王に立ち向かうのはあなただけではありません。世界中から勇者が駆けつけています。もしそのような者に出会ったら、なるべく仲間にしてください。必ず、助けとなるはずです」


女神がさらに付け加える。


「あ、あと、おそらく魔王軍の刺客があなたの行く手を阻むと思います。倒して進んでください」

「マ、マジかよ・・・」


倒すの魔王だけじゃないのかよ・・・

まあ、当然か。


「魔王を倒したら何でもしてあげますから、がんばってね。では話は終わり。ご健闘を」

「うむ」

「・・・いってらっしゃいませご主人様♥」

「・・・・・・・・・・・」


女神が閃光に包まれ、姿を消した。


俺は再び歩き始めた。

魔王を討伐するために、そして、女神にエロいことをするために・・・・

俺たちの戦いは、これからだ!!!





終わるな。まだ終わりじゃねえぞ。

勘違いすんなよ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺は今、魔王の塔めがけて走っている。

体のあちこちに枝や草が当たるが、それをもろともせず走る。

俺は走り続けた。


ふと人の声が聞こえた。

俺は立ち止まり、耳を澄ませる。

よく聞こえないが、話し声が聞こえてくる。

敵かもしれないので、足音をできるだけ立てずに近づく。


「くっ、は、離せ!」

「へへ、離せと言われて離すわけがないだろ?」


女の声と男の声だ。

俺は声の出所らしき人影を見つけると、すぐ近くの木陰に隠れた。

顔をわずかに出して様子をうかがう。


「・・・貴様ら魔王の手先だろう?何が目的だ!」

「そんなの決まってるじゃねえか」

「くっ、殺せ!やるなら早くしろ!」


鎧を着た女を、豚のような顔をした三人が取り囲んでいた。

そのうち二人が女の腕をそれぞれ掴んでいる。

残り一人は女の正面に立って女と話している。


「・・・うわ、ベタだなあ」


俺は思わず呟いた。

オークと女騎士って。さすが異世界。


「おいおい、殺すと思ってんのか?」

「違うのか?ならば何だというのだ」

「ククク、分からねえのか?俺らオークだぜ」


どうする俺、止めに入るか?

だが怖い。助けに行くのが怖い。

オークと女騎士のクロスを見れなくなってしまうことが怖い。


「ま、まさか・・・」

「そうだ、そのまさかだ」

「ま、待ってくれ。それだけは、それだけは・・・」


ヤ、ヤバい、止まらない。

俺の興奮が止まらない。

だ、駄目だ、落ち着かなければ!鼻息が響きそうだ!


「それじゃ、誇り高き女騎士様の匂いをクンカクンカさせてもらうとするか!」

「や、やめろぉ!体を動かして汗が出たての脇をクンカクンカしようとするのはやめろぉ!」

「ククク、どうだ?恥ずかしいか?オークごときにクンカクンカされるのは恥ずかしいか?」

「は、恥ずかしい!!私の汗臭い脇をクンカクンカして他の女騎士の中でどれぐらい臭いか鑑定されるのは恥ずかしい!」


!?

な、なんでコイツら急に飛ばしてんだ?

トップアクセルすぎだろ!?


女の正面のオークが他二人に言い放つ。


「お前らそのまま女の腕を上げろ。脇が出るようにな」

「はっ」「はっ」


女騎士がバンザイの格好になる。


「ああ、やめてくれ・・・お願いだ、他の事なら何でもする、だから・・・」

「ククククク・・・」


オークが不敵な笑いを浮かべながら、ナイフを取り出した。

女騎士の脇にナイフをあてがい、脇の布を切り裂く。

両指を入れて中をかきわけ、切れ目を開く。

すると女騎士の生脇が姿を現した。

オークがゆっくりとその豚のような鼻を脇に近づける。


「あ、ああ・・・」


女騎士が、あきらめたような、気の抜けた弱い声を発した。

その時だった。


「グワアアァァァ!!!」


正面のオークが叫び声を上げて飛びのいた。


「軍曹殿っ!貴様、何をした!」「殺されたいのか!?」

「わ、私は何もしてないぞっ」


部下のオーク二人が女騎士を睨みつける。

オーク軍曹が地面に這いつくばって言う。


「く、臭いっ、臭すぎる!何百何千の女騎士の脇をクンカクンカしてきた俺だが、こんな臭い脇は始めてだ、は、鼻が痛い!」

「何!?どんな臭い匂いでも悦とする軍曹殿でさえ苦痛を覚えるほどの匂いだと!?」

「一体どんな匂いなんだ!?」

「えっ?えっ、えっ?」


困惑する女騎士。


「お前ら・・・早く逃げろ・・・」

「? 軍曹殿、今何と・・・グハァッ!」


部下オークが倒れこんだ。

続いてもう一人のオークも倒れこむ。


「えっ?えっ、えっ?」


困惑する女騎士。


そんなに臭いのだろうか、あの女騎士の脇。

さっさと逃げたほうがいいな。


俺は気付かれないように静かに離れる。

直後、俺の鼻奥に激臭が走った。


「臭ッッ!!!」

「誰だッ!!」「!」「!」

「う、うえぇぇぇぇん!ひどいよぉ!」


し、しまった!バレた!


「そこにいる奴、出て来い!出てこないなら攻撃するぞ!」


オーク軍曹が鼻をつまみながら立ち上がり、剣を抜いた。

部下オーク二人も後から立ち上がり構える。

俺は鼻をつまみながら、素直に前へ出て姿を晒した。


「ん?なんだその妙な服は?何者だ!」


そういえば俺学生服のままだな。

あの女神、この世界の服ぐらいくれればいいのに。


「俺が誰だと・・・俺の名は斉藤瞬だ」

「名ではないっ!所属と目的を訊いているのだ!」


所属と目的?

たまたま居合わせた異世界人ってだけだ。

だが俺はあえてこう答える。


「俺は・・・神に選ばれし者、勇者だ」

「・・・勇者だと!?」


女神と取引をし、魔王を倒す目的に行動する。

間違ってはない。


「ほう、我らが魔王様に宣戦布告とはいい度胸だ。それにその怪しい格好、生かす意味もない。死ね」


そう言い放つと軍曹は剣を構えながら、ゆっくり俺に近づいてくる。

俺は動きやすくするため、学ランのボタンをすべて開ける。

ついでにズボンに入れてたシャツも全部出す。


ふと、女騎士の横に転がっている、やたら柄の長い斧が目に入った。


使えるかもしれない。


「借りるぞ」


俺はその斧に手を伸ばす。

すると、軍曹がそれに気付いたのか、一気に俺に飛びかかった。

俺は魔法を発動する。


「死ねええええ!!」


軍曹の巨体が飛んでくる。





俺は軍曹を、丸ごと左に吹き飛ばした。


「ガハッッ!!」


軍曹の巨体が木に叩きつけられ、地につきうつ伏せになった。

部下オーク二人が唖然とする。


俺の右手には柄の長い斧が握られていた。


「今のが柄でよかったな。刃だったらお前はもう死んでるぞ」

「・・・ば、馬鹿な、速いッ・・!」


何が起きたか分かりやすく説明しよう。

軍曹が俺に飛びついた時。

軍曹の攻撃より先に、俺は斧をすばやく掴んで高速で柄を軍曹に打ち付けたのだ。


「・・・筋力強化魔法か。ククク、戦士に見えなかったんで、少し驚いたぜ」


余裕を取り戻したのか、不敵な笑いを浮かべる軍曹。

地に手をついて、鼻をつまみながら立ち上がる。


「今度は油断しねえ。お前らも何やってる、早く奴を取り囲め!」


部下オーク二人が剣を向けて俺の背後を取る。

軍曹も剣を構え直す。

完全に取り囲まれた。


「筋力強化!」「強化!」「強化!」


オーク三人がそう叫ぶと、オークの体が筋肉で膨れ上がった。


「さあどうする勇者さんよ。筋力強化魔法が使えんのはお前だけじゃねえんだ。降参すれば楽に死なせてやるぜ」

「降参はしない」

「そうか。ならば死ね、攻撃ィ!!」


軍曹の攻撃の掛け声に合わせ、三人が突きを繰り出した。

俺は軍曹の突きを斧で払い、勢いに乗せてそのまま後方二人を打ち払った。

後方二人が吹き飛ぶ。


続けて軍曹の手を足で蹴り上げた。

剣が真上に打ちあがる。


「なんだと!」


俺は斧を手放し、すかさず軍曹の背後に回りこんだ。

軍曹の首根っこを右手で掴む。


「さっきよりも速度が増してやがる・・・この野郎」


軍曹が悔しそうに声を発した。


「おい部下ども。軍曹の命が惜しくば武器を捨てて地に伏せろ。何かおかしい動きでもしたら、分かっているな?」

「くっ、軍曹殿っ、クソッ」「おのれっ」


部下が剣を投げ捨て、地に伏せた。


「ハッ、殺すなら殺せ。やるなら早くしろ」

「殺しはしない。だが、このままただで逃がすのも癪だ」

「ま、まさか・・・」

「そう。そのまさかだ」


ククク、目の前にちょうどいいものがあるからな。

コイツに地獄を思い知らせてやる。


「お前にも脇をクンカクンカする趣味があったとはな。しかも男とは、いやはや」

「違うわ!」


お前と一緒にするな。


俺は軍曹を掴んだまま、前に歩み進む。


「オ、オイ、まさか・・・・」

「そう。今度こそそのまさかだ」


女騎士の前に立ち止まり、俺は命令する。


「おい女騎士。ばんざいしろ、ばんざい」

「う、うう・・えっ、ばんざい?」

「そうだ早くしろ」


女騎士がばんざいした。


「ま、待て、金ならやる。いや、女もやる、ほ、他にも言えば何でもやるぞ、だから・・・」


俺は無理やり軍曹の手を鼻から引き剥がし、首を掴んで、

思い切り軍曹の顔を女騎士の脇に押し当てた。


「ぎゃああああああああああああ!!!」


軍曹の絶叫が響く。

しばらくすると軍曹が動かなくなった。


「ま、こんなもんだろ」

「うう、そんなに叫ばなくても・・ヒクヒク」


俺は地に伏した部下オークに顔を向ける。


「さあ、次はお前らの番だな、どっちからにしようか」

「ヒ、ヒィィィィィィィィ!!!」「うわああぁぁぁぁ!!」


部下オークは恐ろしくなったのか、一目散に逃げ出した。

もう一人のオークも追うようにして逃げ出す。


「ま、見逃すか」


ふう、なんとか助かったな。


森の中には、立ち尽くす勇者と、気絶したオーク、

そして、

地に座り込んでむせび泣くワキガの女騎士だけが残された。




俺「今のが柄で良かったな。刃だったらお前はもう死んでるぞ」

軍曹「いや今のハメでしょ?俺のシマじゃ今のノーカンだから」

俺「ハメじゃねえよ」

軍曹「汚いなさすが勇者きたない」

俺「だから違えって」

騎士「お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ?」

俺「そうだぞお前が油断してるから」

俺・軍曹「今の誰だ」



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