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01-08 『アカガワ中隊長(6) 燐銅逆蝋花』 4月3日

「まあ、タケヤ君の顔なんかどうでもいいや。実際にタケヤ君と接触した私の所見じゃ、あいつは何度も逃亡を繰り返したり、隊員を相手に戦闘を仕掛けるようなタイプじゃなかった」

「男子三日会わざれば刮目して見よ。という言葉もあります中隊長殿!」

「なんだそれ?」


「そのタケヤが居た世界にあった格言ですな。

 アカガワ中隊長殿に一目惚れしたタケヤ君は、彼女と再び出会う為に自己を磨き始めた。ってのはどうです?」

「目の前でキガシラをぶっ殺した相手に恋心をいだくわけないだろ。

 それにだ、私は一目惚れされないことに関しては絶対の自信がある」


 どんな自信なのか補佐には判らない。副隊長は言った。


「甘いですな中隊長殿! 世の中には人知を超えたド変態がおります! 中隊長殿に一目惚れする高位の変態も」

「ほう」


 副隊長の眉間にアカガワの剣が突きつけられていた。

 今の抜刀は補佐にはまったく見えなかった。副隊長の反応を見る限り、副隊長にも見えてない。

 いや、何かの動きは確かにあった。

 アカガワの右手が抜刀の為に揺らいだのは見えた。そこから神速の抜き打ちならばここまでは驚かない。

 右手が剣を抜く前に抜刀が終わっていた。いやそうとしか思えない何かが起きた。


 副隊長が叫ぶ。


「自分で言っといて、切れて『燐銅逆蝋花りんどうさかろうか』をぶち込んでくるとはあんまりであります!」

「一目惚れされない自信があるとはいったが、ハイレベルの変態に好かれると言った覚えはないぞ! あと、今の技、よく知ってたな。それは褒めてやる」

「恐縮であります!」


 補佐は言った。

「オトボケの後に達人の技で締める展開って、もう三回目ですよ。中隊長もいい加減にしてください」


 やーい怒られたという副隊長のつぶやきをアカガワはどうにか無視する。

「タケヤ君の性格が、変わったかどうかの議論をしに戻ったわけじゃない。

 状況を調べて判断する。

 タケヤに倒された隊員に尋問するぞ。出頭させろ」


 補佐は答えた。

「出頭命令ですか? 来られないこともないですが、こっちから出向いた方が早いかと」

「何故だ? そんなに重傷なのか?」


「骨折と強度の打撲で、現在も医療室で治療中です。打撲が内臓にダメージを与えた可能性を考慮した経過観察も含めていると報告にありました。

 ただ生命に別状はなく会話も可能です。出頭命令だと、医師の許可やら色々と」

「そうか。ならば医療室に行こう」


 立ち上がるアカガワに副隊長が言った。

「少し意見してよろしいでしょうか?」

「やだよ、オッサンがボケたら、相手した私が補佐殿に怒られるんだから」

「補佐殿に怒られないようにおふざけはなしで話ます」

「言ってみろ」


「任務の評価、査定についてなんですが」

「それ、今、相談する話か? まあいい続けろ」

「ハッ! ありがとうございます。

 戦闘任務においての敗走、敗北が責められるのか当然ではありますが、哨戒任務に付随する戦闘での査定が少し厳しいかと。村人の武装解除は行われていないのでどうしても、まぎれは起こります」


 アカガワは鼻で笑う。

「その負けた隊員の話か。検査結果が出るまで時間稼ぎをしたかったんだろ? 内臓へ負傷して解任されるなら仕方なし、本格的な治療も必要だしな。

 内臓に異常はない、ただし敗北の責任で解任は酷だと?」

「さようで」


 副隊長の言い分もアカガワには判る。

 解任されたいのはこっちだよと思うが、口にはしなかった。

 しかし哨戒任務で、発見した敵に倒されていては任務にならない。


「んー、中隊の戦闘練度って、もしかして低い?」

「戦闘試験は当然クリアしておりますが、実戦経験の少なさはなんとも。手練れは哨戒班の各班長に回すのでギリギリですな」

「つまり村人の逃走をキッチリ発見して、班長到着まで時間を稼げればとりたてて問題なし。向こうも武器を振り回してるんだから、たまに怪我したぐらいでガタガタぬかすな。こう言いたいか?」

「はい!」


「判った。隊員の査定は副隊長の独断で構わん。あまりに逸脱した査定をしてるようなら、補佐が私に知らせるように」

「ありがとうございます!」


 真面目なやり取りもやれば出来るんじゃないかと補佐はホッとした。

 が、やれば出来ると判れば、今までのふざけたじゃれ合いが余計に腹立たしく思える。

 補佐の心境を二人は察する。

「いかん、補佐殿が軽くやさぐれてきたぞ、副隊長! 駆け足で医療室に向かうぞ!」

「お供しますであります中隊長殿!」


 疾風のごとく天幕から出て行く二人を見て、補佐は更にイラッとした。

 イライラを募らせながら補佐は二人を追う。


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