01-28 『タケヤ対拷問官(完) 贈り物』 2月1日
「無茶するなよジジィ。死の繰り返しなんて下手すりゃ発狂してたぞ。慣れてたから大丈夫だったが。
追い込まれても俺は出てこられないのに、えらくいじめてくれたじゃないの。
最初からその変な薬煙でタケヤの人格を、もっと抑えりゃよかったんだよ。
そうだ三十一桁って何か教えてくれよ。
世界の同一性の計測値? 次元の絶対座標? つまり、そいつがどの世界のどの時代のどの場所から来たか判るってことかい? 概算値? あぁ、似た数値のヤツは同じ世界の同じ時代から来たって判る程度の話か。
つまりあれか、この世界に到達する異邦人の属する世界……
……ややこしいな、無限に存在する次元のどこからもここからも来てるわけじゃないってことだな。おぉ、やっぱりそうか。
数十桁で判断出来るならそうだわな。
ほう。
で、アレが起きた時の数値は判ってて、その数値と俺が三十一桁まで一致してる、だから俺がその場に居たと思ったか。
はははっ。悪いがその計算は間違えてるぜ。
……三十一桁の一致どころじゃない。俺がその爆心地、何桁まで出してるか知らないが俺がそのものなんだよ!
顔色が真っ青だなジジィ。心臓に悪いなら止めるよ。あ? 構わない? 肝っ玉が据わってるね。
え? ならば俺がオリジナルの鬼か? だって?
そこだ、そこ。
だからなんで鬼なんだ。
判ると言えば判るけどな。時間が経過しすぎて全てが変質しちまったか。
いにしえの儀式、約束がヒノデ村のこんな馬鹿げた冗談に変質か。
だから判ってるって。ヒノデ村にそこまで歴史はないんだろ? 過去の文献やら資料を見て再現したか、因果の巡りで偶然の産物でこういう風になったか。
前の呼び名よりは『鬼』の方がマシだが、炭焼き小屋はいかんだろ、わけが判らん。
炭焼き小屋の正体ってアレなんだろ? そうか。
怖いな因果って。結局似た形に落ち着いてしまう。悪趣味なパロディだが同じ意味に落ち着く。
じゃあ、貴方という存在は何かって?
面倒だから三十一桁って名前でいいよ。
そういうことじゃない? 俺はタケヤの別人格というほど大げさなもんじゃない。タケヤの一部だよ。
秘密の守護者? それは誤解。ジジィ本人がさっき言ってたろ。世界は甘くないが、かといって貴方を特別に憎んでるわけじゃないって。
俺以外でセーフティが掛かってるかも知れないが、本人にはセーフティはついてない。
そこらも情報が錯綜してるな。推論としてなら鋭いが。
……こんな有様だが、本物は俺よりもタケヤの人格に近いぞ。
だから違うって。タケヤは爆心地ではあるが、爆弾の残骸みたいなもんだ、爆発しちまったあとのな。恐ろしくレアだが、使い道があるとも思えん。
無意味だ、無意味。無意味、無意味。
だが、無意味だから駄目ってことでもねぇしな。
……ほう。ほう。ほう。
そうか、ソイツは面白いかもな。
教えてやるよジジィ。
『本』だ。『本』を探せ。これも変質しくだらん冗談みたいになってるかもしれないが、絶対に存在する。デイレルみたいに七分冊じゃない。一冊の『本』だ。
さて、それじゃあの時に何が起きたか教えてやるよ。気にするな、剣の使い方を教えてくれたお礼のささやかな贈り物だ
まず最初に……」