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明かされる能力  作者: 吉川明人
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めまい


——世界は異次元から侵入があった場合にそなえ、自分自身を守るために、直接思いを伝えることができるものを一つ選びました。

 我々はそれを『おさ』や『ひ』と呼んでいます。君も見たでしょう。祭壇の中心で光り輝いていた存在です。

 おさもかつては人間として生きてこられたのでしょうけれど、世界から選ばれたため「人であって人ならざるもの」として、その役目を終えるまでずっとあの場所に在り続けるのです。少なくともこれまでに数百年単位の時間を過ごされてきたと考えられています。


 そして長を補佐するために、わたしたち四人の選ばれて『四神ししん』や『よ』と呼ばれており、わたしはそのうちの一人。西を意味する『毛犢もうとく』です。

 他には東の『介鱗かいりん』、北の『介潭かいたん』、南の『羽嘉うか』と呼ばれるものがいます——


 ……何だが難しい名前だな? 四神って、青龍せいりゅうとか朱雀すざくとかじゃなかったか?


——例えば朱雀を産んだのは飛竜、飛竜を産んだの羽嘉と、それぞれの先祖の名前がつけられています。これは、かつて我々に与えられた役目を行なっていた場所が古代中国であった名残りといえるでしょう。

 今は日本ですので呼び方は少し変わっていますし、次にこの場所を受け継ぐ場所では、日本での呼び方が影響を与えるでしょう。

 四神にはそれぞれ7人ずつ補佐するものがおり、その合計二八人を『ふたや』と呼び、その補佐に各7人の一九六人が『ひとここのむゆ』、さらに各7人、一三七二人の『ひとみななふた』がいます——


 7人ずつって、ややっこしいな。


——主となるものと補佐するものと合わせて8人、八はとても安定している数字で、世界は長を除く合計一六〇〇人に役目を与えているのです。

 そして役目を与えられたものは、同時に特殊な能力が与えられます。その能力とは8種類の自然現象を操る能力で、


 光。

 分子。

 空間。

 電磁波。

 気圧。

 温度。

 重力。

 音波。


 それらをたがいに組み合わせ、次元のバランスを崩す存在から世界を守るのです。

 過去の歴史において、この場所はいくつも変化し、各地に伝説や物語を残して行きました。

 自然がどうやって我々を選んでいるかは分かりません。ですがはっきりしているのは、わたしたちが目覚めてからは、精神的つながりが深く、血のつながりより深い絆があるということです。その例として、朝日奈葵さんと君の父、天凪義鳳さんがそうです——


 確かに葵ちゃんの親父へのなつき方はとても他人とは思えない。ほんとに親子だと言っても疑われねぇだろうな。


——役目を持つ者は、この星に限られたことではありません。宇宙すべてが自然。世界なのです。

 異次元からの侵入には、した側もされた側もおたがい大きな混乱を引き起こします。できる限り無傷のまま元の世界に送り返す努力はしますが、次元の入り口が閉じていたり、自分の意思で次元を破って来たものは、返せない場合があります。

 この異次元からの侵入への対処、我々が『次元バランス修正』と呼び、世界から存在の記憶を保護する役目を持って生み出されたのが、わたしたちなのです——


 わたしたちってなんだよ。

 俺は知らねぇぞ、そんなこと。

 そんなバカな話は信じられねぇ。


——信じなくともすぐに分かります。すでに君の能力は開放し始めているのです。

 君の能力は世界から押しつけられたのではなく、君だからこそ、世界が信用してまかせてくれたのですから——


 もう自分が考えているのか、『もうとく』って人が俺の意識に話しかけているのか区別がつかなくなっていた。

 俺は……何なんだ? 

 次元のバランスを護る役目?

 世界に選ばれたって? 

 ラノベじゃあるまいし、そんなこと言われても実感なんてねぇ。


 それに、親父も?


 俺は。


 ……俺は……。




「さて、そろそろだな」

 親父がつぶやきながら路肩に車を止めた。

 景色はさっきの続き……親父と葵ちゃんと雄綱さんの三人が乗っている車に戻っていた。

「さすが。普段ならこの高速道路、かなり交通量が多いんですけど」

 見渡すと、見通しのいいまっ直ぐの道には、後続車どころか対向車の姿さえ、まったく見当たらない。

「そりゃあそうだ。俺ら以外に被害が及ぶわけにはいかないからなぁ」

 親父たちがそんな会話をしていると、対向車線に明かりが一つ見えて来た。

「たぶん、あれだな」

 三人に緊張が走る。


 明かり……車のヘッドライトは明らかに様子がおかしい。右に左に蛇行している。

 だんだんそれが近づくにつれ、その車が大型トレーラーだと分かった。

 あれは親父を爆発に巻き込んだっていう車じゃねぇのか? しかし親父は車を路肩に止めて待っているぞ……と思っていた矢先。

 目の前で、ものすごい音を響かせながら、トレーラーが中央分離帯を突き破って横転しながらこっちの車線に突っ込んで来る!

「運転手を!」

 親父は叫ぶと同時に、勢いを弱めることなくアスファルトの摩擦で火花をまき散らしながら迫り来るトレーラーに向かって突っ込んで行く。


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