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第11話 官志
浪の宮城には官志(官表)というものがある。
それは城に出仕する中級までの文官武官の名と官位が記されている名簿であり、それぞれの秩石(俸給)はここに記載された官位から算出されることになる。
官志は身の厚い竹篇で編まれている。入殿出仕、退去下野、人事の刷新、出世に降格……と、その都度竹篇を削り記されるのだ。宮城に務めているのは千人や二千人という比ではないので、官志の一巻は非常に重く、これらを管理するのはかなりの重労働だ。
さて、その日、官志を管理する官僚に賜勅がくだり、新たな記載がなされた。
真新しい竹篇に、細い筆で次のように名と出身、官位が書かれる。
『臣朱考、南陵出、禁衛二等」
そこまで書くと官僚は再度筆に墨をふくませ、文字の上に――しゅっ、と一息に縦線を走らせ、その下に新たな文字を加えた。
「回家」
官僚は竹篇の空いている箇所にそう埋める。
回家というのは郷に帰るという意味である。
墨が乾くまでのあいだ、官僚は奥の方から別の竹巻を取り出してくる。
それはやや古いもので、翼宮につとめる宦官や女官達を記したものである。
かれは淡々と、賜勅――指示のとおり、そこにあったひとりの女官の名の下に、今日の日付と「回家」の但し書きをつけたが――こんどは比較的取り出しやすい場所に置き直した。




