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最終章:甘くない逆襲
数年後。
セリエンヌ王国は、新たな時代を迎えていた。
教育の普及、魔法と科学の融合、貴族と平民の共存。
そして、王宮の庭園では、小さな女の子が走り回っていた。
「ママ! パパ! 見て! 氷の蝶ができたよ!」
「おお、すごいな。お前は、母さんそっくりだ」
フェルナンドと私は、笑顔で娘を見守る。
「でも、パパよりはマシよね? パパは、最初、魔法で火を出そうとして爆発したんだから」
「……それは、思い出させないでくれ」
私たちは笑い合った。
夜、ベランダで二人きりになると、フェルナンドがふと聞いてくる。
「……あのとき、本当に、運命を変えたと思えるか?」
私は星空を見上げ、静かに答えた。
「運命は、変えられないものだと思ってた。でも、逆襲すれば、変わる」
「そして、君の逆襲は、本当に甘くなかった」
「当たり前よ」
私は微笑む。
「悪役令嬢の恋は、甘くない──でも、だからこそ、本物なの」
彼は私の肩を抱き寄せ、星空の下、そっと口づけた。
風が、花を揺らす。
そして、新しい物語が、また始まった──
THE END