表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/63

第57話:合宿7日目①│序列3位、無慈悲のクラッシャー

───翌日


「シューファさん、お久しぶりです!」

次の日、俺はある人物を呼んでいた。

そう、目の前にいる若い爽やか系イケメンだ。


「あ、サラさんは会ったことあったけど君たちは初めましてだったね。」

その男は卓越したコミュニケーション能力で3人に話しかけていた。


「俺はラルト!聖級魔導師、序列3位だよ。

なぜかここに居るとかすれて見えるけどね………。」


そういうラルトの目には光が宿っていなかった。序列1位の俺と2位のサラがいるから、自分が目立たないのが悲しいのか………?


「聖級魔導師第3位………つまりセシリアさんよりも実力が上なんですね。」


「そうだよ!というか、セシリアは俺とシューファさんで稽古つけてたからね、それはそれは強いよ〜。」


そう3人の自信をなくそうとしているラルトだったが、その目は真面目なことを発している目だ。おそらく、3人を試しているのだろう。


「俺も教えたっていっても、ほとんど俺は師匠というよりも親という感じだろう。」


「それもそうですね!大きくなるまでシューファさんの家に住んでシューファさんは父さんとも呼ばれてますしね。」


「先生はセシリアさんと仲がいいんですね。」

「一応な。仲がいいというのとはまた違った感じなんだけどな。」


そう、実はセシリアはもともと俺と一緒に住んでいて、俺とラルトで稽古をつけていた。そして強くなっていく途中、聖国にスカウトされて俺の元から旅立った。だからミラとも面識があって2人とも姉妹のようだ。


「それはそうと、俺は今日なんで呼ばれたんです?」

「………この3人に、魔術消去(キャンセル)を教えてほしい。」


「………シューファさん、それは本気なんですか。」

さっきまでおちゃらけてるようなイメージだったラルトが、真面目なトーンと口調に変わった。


「あぁ、本気だ。おれが見込んだ通りであれば、この3人のうち誰かは必ず習得できる。」


俺もまた、真面目な話し方でラルトに応えた。

その時、ラルトはいつものように顔を緩ませて話し始める。


「シューファさんが言うなら、そうなんでしょうね。それに俺も、さっき見た3人の目でもしかしたら………とも思いましたしね。」


やはりさっきのあれは、そのことをそのことを確認するためだったのか。


「あの、魔術消去って………どういう魔術なんですか?」

「あぁ、魔術消去は文字通り、“発動した魔術、発動する前の魔術に介入し、消去”する魔術だ。」


「そうそう!これは俺が創った魔術だし、色んな人に教えようとしたけど、実際に使えるようになったのは俺とシューファさんだけだから………。」


そこでラルトは1度言葉を区切り、3人に目を合わせてまた口を開く。


「諦めた時、俺はすぐに帰る。正直、俺の稽古は単調で疲れないが、だからこそキツイ。

お前らは俺………聖級魔導師第3位、またの名を『無慈悲のクラッシャー』の稽古に、ついてこられるかな?」


意地悪な顔をしながらそう言うラルトは、どこか期待しているような、何も関心を持っていないような、どちらとも感じ取らせ、感じ取らせない。そんな目を3人に向けてこちらに来いと言わんばかりに手招きをする。


それに応えるように3人はラルトの元へと向かう。

その刹那、3人の目の前からラルトの姿が消える。

次にラルトが現れた時は、目と鼻の先ほどの所にいた………


「っ………!!」

ラルトは拳を差し出す。だがそれよりも早く、3人は守護結界を張った。


「魔術消去。」

───トン

ハルトの右手は、守護結界を割ることなく、リオナの肩へと届く。その事実は3人にとってこれまで起きたことのないことで、起こることとも思っていなかった。


「これが魔術消去だ。もしこれまでに使えるやつで悪い奴がいたら、人殺しは簡単だったろうな………今みたいに自分の力を過信してるやつだと尚更な。」


「……………………。」

別に過信はしていなかっただろう。ただ、ラルトの拳を止められなかったという事実、それだけで3人に沈黙をつくるには充分だった。


「あんまりからかってやるなよ。」

「わかってますって〜!じゃあ3人とも行くぞ。」


本当にわかったのだろうか………?

今度こそラルトについて行く3人は、妙に警戒しながらゆっくりと、ある程度の距離を空けながら付いて行った………信頼がない状態をつくってからスタートするなんて、ラルトらしいっちゃラルトらしいな。


ラルトはこれまで何十人、何百人とこの魔術を教えようとしてきた。だが、誰も使えることはなかった………その度、俺らには想像できないことを言われたらしい。「騙された。」「才能があるのを良いことに。」「どうせ俺は………。」

そんな言葉が生ぬるいほど。


その時はまだ、ラルトは序列5位だった。そして諦めようとした時、セシリアと出会った。セシリアは魔術消去を使えなくても、ラルトから離れることはなかった。それだけで、ラルトは救われた。


そのことからラルトは、信用出来る者以外とは関係を築かなかった。


「だからこそそれを糧に、ラルトは強くなったんだろうな………。」


その男の背中は、俺が初めて出会った時より大きく、頼もしかった。きっとこの3人の背中も、いつかは誰かが追いかける背中となるのだろう───。

この作品が良いなと思ったら、下の☆☆☆☆☆やブックマークをしていただけると励みになります。これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ