第3話:かつての弟子との再会
「おぉ………すげぇ……。」
城門をくぐり帝国の中へと足を踏み入れた俺は、その活気溢れる街並みに圧倒されていた。
「………すみません、少しいいですか?」
「あぁ、はい。どうしました?」
黒のローブを身につけているということは帝国の中でかなり位の高い人間のはずだ。そんな人が一体なんの用だ?やけにジロジロ見てきているし。まさか………不審者!?
「やっぱりシファ先生ですよね!」
シファ………それは俺の名前、シューファをもじって仲のいいやつが呼んでいる、いわばあだ名のようなものだ。
「なんで俺のことを知って………」
でもよく見てみるとどこかで見たような気もするな…?一体、俺はいつこの子を見たんだろう。
「覚えていませんね………?私ですよ。サラです。」
「あぁ!サラか!」
サラは俺が魔導師団の指南役をしていた時に、俺に弟子入りを望んで来たやつの1人だ。サラの実力は魔導師団の中でも群を抜いていて、その実力は魔導師団の誰もが認めるものだったほどサラは強い。
「先生覚えていませんでしたね、悲しいです。」
「いや俺が教えてた時から時間も経ってすっかり大人っぽくなってたから一瞬おれにこんな美人な知り合い居たかって思っちゃったよ。」
「んなっ……//」
相変わらず先生はなんの躊躇いもなくそんなことを言うんですね………社交辞令的なものとわかっていても、他の人にも同じような気持ちを持っていると考えると………なんだか複雑な気持ちです。
いやぁ、それにしてもサラがねぇ。綺麗な白髪に整った顔立ち。こんなに大人っぽいのにまだ20前半とかだもんなぁ。そう考えると、魔導師団にいた頃は10代だったっけか。全く、10代の女の子が魔導師団の要って他の奴らは何をしてたんだ………まぁ、俺もなんだけどな。
「そういえばサラはその黒いローブを着てるけど仕事は何をやってるんだ?」
黒いローブ………帝国には来たことがないが、王国の本で読んだ記憶だとサラの着ている黒いローブは帝国の偉い立場の人間(一部を除く)にしか渡されない。
「あぁ、今は国立の魔導学院の学院長をしているんですよ。ですからこのローブを私が持っているわけです。」
「おぉ、学院長か!」
帝国では王国とは違って教師や学院長は強さ順に位が高くなっていくらしい。つまり、サラはこの強さが支配しているといっても過言ではない帝国で、最もくらいの高い人間の1人というわけだ。
「しかも私が学院長をしているガイル魔導学院は帝国の中でもトップと言われているんですよ。」
「へぇ、サラに教えてた頃は1度も負けたこと無かったのに、今じゃ考えられないくらい出世したんだな。」
そう、俺がサラに教えていた頃に何度か手合わせをしたことがあるんだが、その時は一度も負けたことがなかった。そんなサラが今では敵なしという程に強くなっている。師としてはとても誇らしいことだ。
「いえ、今でも私シファ先生には勝てませんよ?教えて貰ってた時からずっと感じていたんですが、やっぱり帝国に来ても先生より強いひとは居ませんでした。」
………何を言っているんだこの子は?こんなしがないアラサーのおっさんがこの強者の集まる帝国のトップと言っても過言ではないサラより強いだと?そんなわけないじゃないか。
「いや、サラ。俺を上げてくれるのはいいが、お世辞は時に人を傷つけるんだぞ。」
「いえ、私はお世辞のつもりで言ったわけじゃありませんよ?試しに今からでも学院は空いてるので私と模擬戦でもしてみますか?」
「久しぶりにサラと戦えるのか………じゃあ1回だけやってみるか!………あ、でもお手柔らかにね。俺ももう30だからさ。」
今はもう若い頃みたいに怪我してもすぐ治るという訳にもいかないんだよな。ぎっくり腰とかしたら………って考えるだけで、背筋がぶるっと震える。
「フフフ…お手柔らかに、ですね。」
あれ、俺ちゃんとお手柔らかにって言ったよな?すごく嫌な予感がしてきたんだけど………気のせいだよな?
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