第24話:フェンリルにご主人と呼ばれる
───数時間後
「パーティーも終わっちゃったわねぇ〜。」
あの世界樹のイベントが終わってから数時間が経ち、お母さんが急に開催したパーティーも終わり、日も暮れてきた。
「そういえばシューちゃんはここにどれくらい居るの?さっきの話だと1ヶ月ちょっと休みがあるらしいけど。」
「数日かなぁ。満月の日の次の日には帰ろうと思ってる。」
「え〜せっかく久しぶりに来たんだからもうちょっと居なさいよ〜。」
「そう言われそうだなとは薄々思ってたよ。」
結局あの後、お母さんに押し通され数週間エルフの里に滞在することになった。
でもまぁ、久しぶりに戻ってこれたし、ゆっくりするのも悪くないな。
そんなことを考えながら、俺は実家のような安心感のある………いやようなじゃなくて実家か。昔を思い出すこの天井を最後に眠るのだった。
───翌日
気持ちのいい朝、俺は里のみんなよりも早く起きた。別に歳をとったなーとは少しも………思わない訳では無いが、エルフの里のほとんどのエルフは俺よりも歳上だ。だからいつもよりは心が楽なのである。
それにしても、エルフの里は人間の街とは違って危険も少ないし、俺がここで育った間の頃は誰も死ななかったはずだ。それはエルフが長寿だからというのもあるんだろうが、やはり魔獣の被害も少ない。全員が人間の中の最上位クラスだし、お母さんなんかは精霊と一緒に全力で戦ったら大陸1つは簡単に消し飛んでしまうくらいには強い。
「こんなにゆっくり出来るのは久しぶりだなぁ。もういっそ、この街に住むのもありだよな………。」
『みんな逃げろ!!魔獣だ!!』
「魔獣?エルフはそんなの簡単に倒せるんじゃないのか?」
『違う!あれは魔獣じゃない!“聖獣”だ!』
大声を出すその2人の後ろに大きな影が見えてきた。大きな狼のような姿、鮮やかな銀色に輝く毛、凛とした佇まい。
「あれは………フェンリルか!?」
フェンリル………聞いたことがある。幻の存在と言われていたから話でしか聞いたことがなかったが、この威圧………間違いなくフェンリルだ。
「クソ!」
フェンリルは話によるところ黒龍などとは比べ物にならない!俺が本気で戦っても恐らく敵わないのは明らかだ。お母さんもミラは一緒に狩りに行ったから今は里を出てるし………。
どうする?全力で戦って時間を稼ぐか?いやそれでも大した時間は稼げないだろう。この威圧は黒龍3体の時よりは弱いとはいえ、総合的にはそれですら比べ物にならない。
一体どうすれば………!?
『そなた………名はなんと言う?』
話を持ちかけてきた?………今は大人しく話をするのが得策か。
「………シューファだ。」
『やはりそうだったか………ご主人。』
「………ご主……人?」
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