第21話:シューファの過去
「く、勲章!?」
「もちろん勲章だけじゃないぞ。黒龍3体分の報酬はもちろん、一世代限りだが爵位だってやろう。」
「勲章はありがたいが、爵位も報酬も今はお金には困っていないので大丈夫です。しかし黒龍の報酬分、孤児院に寄付して貰えないでしょうか。」
「おのれの欲よりも、孤児の今や将来を守る、か。ガハハ!聞いてはいたが、本当に面白いやつだ!気に入ったぞ。金に困ったらいつでもここに来い。いくらでもやろう。」
「ありがたきお言葉です。しかし、そのような理由ではここには来ないと思いますが。」
「それもそうだな。それに黒龍3体分の報酬は国を動かすほどのお金だ。今の帝国の孤児全員が成人できるほどに。それに関しては我でもどうにもできなかった。本当に、ありがとう。帝王の名を持ち、ここに敬意を表そう。」
「そんな!頭を上げてください!」
「本当にありがとう。いつでもここに来てくれよ。その時は我は歓迎しよう。」
「ありがとうございます。」
───数日後
あの後俺は『賢者』の勲章を貰った。いや、こんなプレゼント貰ったみたいな感覚なものではないが、俺は勲章を貰った。
それよりも帝国の孤児全員の将来までの保証がされたということの方が嬉しかった。俺みたいなやつが2度と生まれないようにする、というのが俺の将来の夢だったから、心から嬉しい。
そう、俺は孤児だったのだ。いつからなのかも分からない。何日、いや何ヶ月かも分からない。あの時、俺のお母さん、と言っても血は繋がっていながお母さんに拾われていなければ俺は今死んでいただろう。
昔のことを思い出すとどうしても長くなるが、今日くらいは昔のことに浸ってもいいだろう。
───シューファの幼少期
俺は物心がついた頃から1人だった。お母さん曰く、俺の両親が魔物から俺を守ってくれて、そこにたまたま居合わせたお母さんが俺を助けてくれたらしい。
だけど俺の本当の両親は………助からなかった。いや、俺のことを捨てれば逃げられただろうけど、俺のことを死んでも魔物から俺を守ってくれたから、俺は生きれた。
だから俺は本当の両親にも、お母さんにも、感謝してもしきれないほど恩がある。それからというもの、お母さんに鍛えられ、今ではお母さんも超えて俺は世界一とまで言われるようになった。
俺のお母さんはランキングに載っていないものの、恐らく、『サラより強い』それも遥かに。俺がサラと実力が離れているという自覚にもなってしまうが、本当に俺とお母さんの力は拮抗している。
まぁお母さんは『エルフ』だからな。それ相応の年を過ごしてきたのだろう。
まぁそろそろ寝る時間だし、これ以上感傷に浸るのはやめにするか。そういえば、最近お母さんに会ってないな。次の休日にでも会いに行こうかな。
そうして俺は、眠りにつくのであった。
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