二人の夜
創作BLです
診断メーカー《あなたに書いて欲しい物語》から出た書き出しと終わりを使わせていただきました。
あなたには「二人きりの夜には」で始まり、「そろそろ認めてくれますか」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。
短いですが甘い二人を。
二人きりの夜にはこのひとはただの男になる。オレよりひと回りも年上だけれど、人生の先輩だとか会社の上司だとか、そんなことは忘れて恋をしてるただの男になるんだ。
「今週も忙しかったね」
「上司がしごできで助かります」
「いやいや、こちらこそ優秀な部下で助かってますよ」
「ほんとに?」
「はは、本当にそう思ってるよ」
「ならいいけど、はい」
「うん」
「「乾杯!」」
金曜の夜には缶ビールをわざわざグラスに注いで二人で乾杯をする。上司と部下から恋人同士になるための儀式のようなものだ。
「あなたの役に立ててるならよかった」
「おい、僕のためじゃなくて会社と君自身のために頑張ってくれよ」
「あなたにかっこいいと思われたくて、これでも必死なんです」
グラス一杯のビールで酔ったわけでもないだろうに、うっすら頬を染める愛しい恋人は、会社でのキリリとした姿とはまるで別人に見える。
「もういい?」
「うん?」
「チュー」
「……どうぞ」
ビールで湿らせた唇を重ねる。キスの時、必ず目を閉じる恋人がオレは愛しくてならない。
「それはまだ、ダメ」
舌先で唇をこじ開けようとすると、そっと胸を押された。
「どうして?」
「そういうキスをすると、君は止まらなくなるから」
シャワーも浴びてないし、とまるでうぶな乙女のようなことを言う。乙女と恋をしたことはないけれど。そういうのがオレを堪らなくさせるんだって、このひとわかってんのかな。
「じゃ、一緒にシャワー浴びる?」
「ダメです」
「ちぇ」
なかなか手強い、ちっとも流されてくれやしない。
「せっかくのビールがぬるくなっちゃうし」
「はいはい、じゃビールのあとのお楽しみにします」
新しい缶を開け、互いのグラスに継ぎ足している間なぜか愛しい恋人は難しい顔をしている。
「どうかした?」
「……お楽しみになるのか?」
「え?」
「だから、僕なんかがお楽しみになるのかって……」
「まだそんなことを言うの?」
「だってっ、んんっ……」
憎らしいことを言う唇に噛みついてやった。強引に舌を割り入れて、口の中を執拗にねぶってやる。荒っぽいキスの間もうぶな恋人はぎゅっと目を閉じていた。こわばっていたカラダから力が抜けた頃、ようやく唇を解いてやる。
「ふっ」
「なっ、なにがおかしい!」
「可愛いなって」
「!?」
「このあとシャワーを浴びて、もっと可愛いあなたが見られるかと思うと楽しみで仕方がないよ」
耳元で囁いたら、もの好きにも程がある!とゆでダコみたいに顔を真っ赤にしてグラスを煽った。
このひとときたら、二人きりで過ごす週末の夜をオレがどれほど楽しみにしているのか全くわかってないんだ。
「お、おじさんだぞ!君よりひと回りも上のかっ、加齢臭だってっ」
「なんだ、そんなこと気にしてたの?だからいつもシャワー浴びてからじゃないと触らせてくれないんだ?」
いい匂いなのになぁ、って首すじに鼻を寄せたら、さらに顔を赤くして喚いてる。
特定の相手を作らず、あっちこっちフラフラとしてたオレがあなた一人だけと決めたんだよ?
「加齢臭がするようになったあなたも抱きたいんだけど」
「……シャワー、浴びてくるからっ」
バタバタと足音を立ててバスルームに向かう愛しい恋人を見送った。
まだまだあなたの稼ぎには届かないけど、一生離さないってもう決めたから。オレを生涯の伴侶だと、そろそろ認めてくれますか?