✒ 弟子として 1
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── 薬屋
《 新居 》の壁に貼られているドアを通れば、秒で仕事場となる《 薬屋 》に着く。
ドアとドアを繋いでいる “ 転移ゲート ” って凄いよな!
繋いでるのは古代魔法だけど──。
マオ
「 えぇと──、此処は1階かな?
あっちが[ 店内 ]か? 」
リボンカーテンを潜って先へ進むとカウンターがある。
会計に使うレジカウンターだ。
レジカウンターには赤色の魔法陣と緑色の魔法陣が描かれている。
赤い魔法陣の左側には、黒線で四角が書かれていて、四角の中には黒字で〔 買い物カゴ 〕と書かれている。
多分だけど、お客から受け取った精算前の買い物カゴを置く場所だと思う。
多分だけど、買い物カゴに入れた商品を赤い魔法陣の中に入れるんだと思う。
緑の魔法陣は何だろう??
後でセロに聞けばいっか。
レジカウンターを出ると壁側に棚が設置されていて、商品が丁寧に並んでいる。
良く良く見ると現品じゃなくて見本品だ。
商品の写真がラミネートされているペラペラの見本品が立て掛けられている。
どうやら必要な枚数を取って買い物カゴへ入れる仕様みたいだ。
万引き防止かな?
こんなのんびりした辺境の≪ 村 ≫で万引きする様な不届きな輩は居ないと思うけど、念の為って感じかな?
色んな種類の薬の見本品が掛けられてるな~~。
これ……全部、セロが用意するんだよな?
いっその事、≪ 日本国 ≫で販売されてる薬を売れば良いんじゃないか~~?
まぁ、それだと村民を実験台には出来ないか。
セロは妙な薬を作るの好きだもんな。
[ 店内 ]にも清掃スライムが居るんだ。
放し飼いとは大胆な事するぅ~~。
出入り口のドアは左右に付いている。
[ 店内 ]から外へ出る時は右側のドアを使って、外から入る為に開ける時は左側を使うみたいだ。
右側のドアは内側へ開けて外へ出るけど、左側のドアは外側へ開けて[ 店内 ]へ入る。
開ける側のドアには、目印にキノコンの絵が描かれている。
お客が入店する側のドアにはベルが付けられていて、ドアが開くと「 チリリン 」って鳴るんだろうな。
ドアベルのデザインがキノコンで可愛い。
態々薬を作って売らなくても、ドアベルだけで稼げるんじゃないかな?
グレーの買い物カゴにもキノコンの絵が描かれているし、買い物袋にもキノコンの絵が描かれている。
専用の買い物袋は布製で、精算する時に出すと商品を入れてもらえるサービスと割り引きサービスが受けれるみたいだ。
≪ ミッダロント男爵領地 ≫だけかは知らないけど、この≪ 大陸 ≫では薬ってのは高額らしい。
専用の買い物袋を出すだけで、割り引きサービスを受けれて安く買えるなら、お客は喜ぶかも知れない。
大人用の薬と子供用の薬を区別する為に、子供用の薬のパッケージにはキノコンの絵が描かれている。
薬が苦手な子供が食べれる薬入りのクッキーやゼリーの見本品も置いてある。
オレがテイムしてる怪物って事になってるキノコンを、《 薬屋 》の宣伝キャラクターとして起用するなんて、流石だよ。
薬膳茶まで置いてあるしぃ~~。
和茶,紅茶のパッケージにもキノコンの絵が描かれている物が有る。
子供にも安心して飲ませられる和茶,紅茶も用意してるって事か。
子供用の薬を集められている棚も作られていて、見本品が並べられている。
どうやら子供用の薬を買うとレジでキノコンのシールを貼ってもらえるらしいな。
因みに大人用の薬を買うとレジでセロカ君のシールを貼ってもらえるらしい。
10枚目のシールは大きなシールを貼ってもらえて、50枚集めると粗品が貰えるらしい。
豪華な景品で御客を釣るなんて、《 薬屋 》がして良いのかよ?
キノコン
「 マオ様、御早う御座いますエリ 」
マオ
「 キノコン、御早う。
キノコンも店を手伝うのか? 」
キノコン
「 接客するのは〈 器人形 〉ですエリ。
キノコンは外で清掃警備をしたり、森の調査、材料,素材の調達、地下の[ 工房 ]でマオ様の御手伝いをしますエリ 」
マオ
「 オレの手伝い? 」
キノコン
「 はいエリ。
マオ様には地下の[ 工房 ]で採集した雑──薬草の仕分けをして頂きますエリ 」
マオ
「 今、“ 雑草” って言い掛けなかったか? 」
キノコン
「 何の事ですかエリ?
きっと幻聴ですエリ★ 」
マオ
「 幻聴?
本当にそうかな? 」
キノコン
「 マオ様、[ 工房 ]へ行かれますかエリ 」
マオ
「 そうだな。
どんな[ 工房 ]なのか見てみたいし 」
キノコン
「 案内しますエリ 」
キノコンに案内されて、[ 店内 ]から[ BR ]へ下がる。
地下って何階まで在るんだろう。
一寸聞くのが怖いな……。
マオ
「 キノコン、地下って何階まで在るんだ? 」
キノコン
「 100階は在ると思いますエリ 」
マオ
「 100階ぃ~~?
何でそんなに深いんだよ? 」
キノコン
「 地下は[ 秘密基地 ]だと思ってくださいエリ。
自給自足の生活を送る為に必要な物を地下で用意してますエリ 」
マオ
「 必要な物? 」
キノコン
「 はいですエリ。
キノコン達の住居となる≪ キノコンタウン ≫も在りますエリ。
穀物を育てている田圃、野菜を育てている畑、果物を育てている果樹園、家畜を飼育する牧場、魚介類の養殖場…等々が≪ ダンジョン ≫の中に在りますエリ 」
マオ
「 ダンジョン??
セロがオレの為に作ってくれた≪ ダンジョン ≫と繋がってるって事か? 」
キノコン
「 うっかりんりん丸エリ~~。
これは内緒でしたエリ~~ 」
マオ
「 内緒ぉ~~。
今のは聞かなかった事にしとくよ 」
キノコン
「 マオ様、有り難う御座いますエリ 」
マオ
「 ははは…… 」
本当に “ うっかり ” なのか怪しいけどな。
キノコン
「 マオ様が作業される[ 工房 ]は地下1階ですエリ。
[ 工房 ]では錬金術師としてセロフィート様も御利用されますエリ 」
マオ
「 そうなんだ。
昨晩は[ 寝室 ]に来てくれなかったけど、セロは[ 創造主の館 ]に居たのかな? 」
キノコン
「 《 薬屋 》の管理を任されているボクには存じませんエリ。
昨晩は[ 工房 ]には来て居られませんエリ 」
マオ
「 そっか。
じゃあ、[ 創造主の館 ]に居たのかも知れないな。
セロめぇ~~!
新居で迎える記念すべき初めての夜だったのに!! 」
キノコン
「 マオ様、其処は地団駄を踏んで悔しがってほしいですエリ 」
マオ
「 ちゃっかりスマホで撮ろうとしてるしぃ!
何で持ってるんだよ 」
キノコン
「 色んなマオ様を記録する為ですエリ。
新しいマオ様メモリアルを増やしますエリ 」
マオ
「 マオ様メモリアルって………… 」
キノコン
「 マオ様の頑張りが、キノコンのオカ──励みになりますエリ★ 」
マオ
「 オカ?
励みにしてくれるのは有り難いけど、オカ──って何だ? 」
キノコン
「 マオ様、此方が[ 工房 ]ですエリ 」
──*──*──*── 地下1階
──*──*──*── 工房
真新しい[ 工房 ]は全てが新しくてピカピカしている。
マオ
「 此処が[ 工房 ]かぁ~~ 」
キノコン
「 マオ様に担当して頂きたい作業は此方ですエリ 」
[ 工房 ]にはキノコンが1体居て、大きなカゴを床に置いている。
棚には拡大した写真が貼られている。
マオ
「 キノコン、これって? 」
キノコン
「 マオ様には写真を見ながら、カゴの中に入っている雑──薬草を仕分けて頂きたいですエリ 」
やっぱり “ 雑草 ” って言い掛けてた!
キノコンからしたら人間が “ 薬草 ” や “ 山菜 ” って呼んでる野草の類いは “ 雑草 ” に入るって事かな?
正直だよなぁ~~。
マオ
「 写真を見ながらするなら簡単だな。
初心者に対するキノコンの優しさが嬉しいよ 」
キノコン
「 痛み入りますエリ。
写真に無い薬草は此方のカゴに入れてくださいエリ。
写真を見ても似ていて判断の出来ない薬草は、此方のカゴへ入れてくださいエリ 」
マオ
「 分かった。
任せてくれ! 」
オレを[ 工房 ]へ案内してくれたキノコンは、オレに向かってビシッと敬礼をしてくれた後、[ 工房 ]から出て行った。
マオ
「 よし、一致ょ気合入れてやるか! 」
オレは両腕の衣服を捲ると、カゴに入れられている薬草の仕分けに取り掛かった。




