✒ 挨拶回り
全ての作業を召喚したキノコンに丸投げしたセロとオレは、村人達に挨拶回りをする事にした。
村人達の弱味を握──じゃなくて、村人達と打ち解けて良好な関係を築く為、ミニマムキノコンがオレの肩に乗っている。
立ち止まっては村人と話している内容をミニマムキノコンが記録してくれている。
どうやってミニマムキノコンが記録をしてるのかオレには分からない。
もしかしたら伝達念話的な能力を使って、何処かに居るキノコンに教えてるのかも知れない。
キノコンはセロみたいな美文字でスラスラスラ~~と素早く書いちゃうんだよな。
村人達の赤裸々な秘め事迄、セロにリークするんだろうな──って思う。
キノコンは悪用しないだろうけど、情報を利用するのがセロだからな~~。
今から村人達の将来が心配だ……。
その村人達はと言うと──、セロの美貌と美声に釘付けだったりする。
錬金術師が珍しいのか、興味津々に近付いて来るんだ。
錬金術師が≪ 村 ≫で暮らす事を素直に喜んでくれているみたいだ。
近寄って来た子供達は “ 遠慮 ” を知らないのか、セロの白いコートを素手でベタベタと触りまくる。
刺繍が気になるのか──、肌触りが良過ぎる高級品が珍しいのか──、オレには分からない。
セロは笑顔を絶やす事なく子供達に優しく話し掛けながら、然り気無く取り調べをしている。
セロが如何にも楽しそうだから、オレは後が恐くてハラハラしっぱなしだ。
子供から年配者まで、世代も性別も関係無く、セロは村人達から歓迎されている。
勿論、テイマーでセロの弟子って事になってるオレも歓迎してもらえている。
この≪ 村 ≫が数年もしない間に≪ ミッダロント男爵領地 ≫の中で1番発展するかも知れない。
そうなった時には村長もキノコンに代わってるかも知れないな……。
何時ものパターンだから、面白味は無い。
セロフィート
「 マオ、この≪ 村 ≫には、共同で利用する洗濯所が在るそうです。
行ってみましょう 」
マオ
「 洗濯所?
オレ達は使わないじゃん 」
セロフィート
「 修理を出来る者が居なくて困っているそうです。
枯れてしまった井戸も幾つか在るそうです 」
マオ
「 ふぅん?
それを使える様にするつもりなのか? 」
セロフィート
「 恩は売るものですし。
古代魔法で直しても良いですけど、若手の村人と共に直そうと思います 」
マオ
「 セロが日曜大工をするのか? 」
セロフィート
「 はい?
ワタシはしません。
キノコンへ任せるに決まってます。
キノコンが村人と打ち解け、受け入れてもらう為の手段です。
村人達から信頼され、無くてはならない存在となれれば、村長の座はキノコンのモノです 」
マオ
「 やっぱり、≪ 村 ≫を乗っ取る気なんだな。
行く行くは他の≪ 村 ≫も──ってパターンだな 」
セロフィート
「 実験施設と実験台は必要不可欠です。
キノコンには今回も張り切って頑張ってもらうとします 」
マオ
「 ははは……。
じゃあ、とっとと洗濯所に行こう 」
そんな訳で、セロと一緒に《 共同洗濯所 》へ移動する事にした。