✒ フィールドで 3
キノコン:分身体
「 マオ様、子供が怪物に襲われてますエリ 」
マオ
「 えっ?
子供!? 」
キノコン:分身体
「 苦戦してるみたいですエリ。
見捨てますかエリ 」
マオ
「 いや、助けるから! 」
のほほんとしているキノコンが教えてくれた場所へ走る。
確かに子供が怪物に襲われていた。
でも何で子供が1人で??
兎に角、助ける為に腰に提げている鞘から剣を抜く。
今回、装備している武器は刀じゃなくて剣だ。
怪物に気付かれない様に気配を殺して──、怪物の背後へ回り込む。
背後から攻撃した事で、油断した怪物に大ダメージを与える事が出来た。
オレが怪物を攻撃してダメージを与えている隙に、キノコンが子供の保護をしてくれる。
怪物を倒すと、すかさずキノコンが怪物の死体を笠の中へ入れて回収してくれた。
マオ
「 ふぅ……。
危ない所だったな。
コイツは昼間でも強い怪物だからな 」
キノコン:分身体
「 食後の運動には物足りなさそうですエリ 」
マオ
「 まぁな。
あの程度なら800体は余裕かな。
君、大丈夫だったか?
間に合って良かったよ 」
???
「 有り難う……助けてくれて!
人形達が壊れちゃって……もう駄目だって覚悟してたんだ…… 」
マオ
「 キノコンの御手柄だな。
気付いてくれて有り難な 」
キノコン:分身体
「 どう致しましてエリ。
子供が夜間のフィールドを彷徨くのは危ないエリ。
感心しないエリ 」
マオ
「 そうだな。
1人なんて無謀だぞ 」
???
「 違うよ!
1人じゃなかったんだ……。
組んでいた冒険者達に置いて行かれたんだ……。
遭遇した怪物との相性が悪くて……戦力だった人形達を壊されて………… 」
マオ
「 自分達が安全に逃げ切る為に置き去りか。
こんな子供を── 」
キノコン:分身体
「 不逞ぇ輩エリ。
仲間を囮にして逃げるなんて許せねぇエリ! 」
マオ
「 冒険者の風上にも置けない奴等だな、全く── 」
子供は壊れた人形を拾っている。
かなり使い込まれている人形みたいだ。
マオ
「 結構ボロボロだな。
修理は難しいかも知れないな。
酷い事するな── 」
キノコン:分身体
「 セロフィート様に相談してみますエリ。
セロフィート様なら新しい人形を用意してくださいますエリ 」
マオ
「 嫌な予感しかしないんだけどなぁ~~。
でも、セロなら壊された人形も新品の状態に戻せるもんな 」
???
「 人形を新品の状態に戻せる?? 」
マオ
「 昨日の≪ ヒッドユ村 ≫に永住する為に引っ越して来たんだ。
セロは錬金術師だから、壊された人形を直せるよ 」
???
「 錬金術師!?
で…でも……オレ……金貨なんて持ってないし!
修理はしてもらいたいけど…… 」
マオ
「 いや、金貨なんて要らないし。
腐る程持ってるし、見飽きてるから……。
対価はセロが決めるだろうけど、無理な対価を要求しない様、オレも一緒に頼むからさ 」
???
「 ………………有り難う(////)」
マオ
「 あっ、自己紹介が未だだったな。
オレはマオ・ユーグナル。
錬金術師の弟子で調合薬師でテイマーだ。
キノコンはオレがテイムしたテムモンな 」
キノコン:分身体
「 宜しくエリ 」
???
「 人語を話すテムモンなんて初めて見た……。
オレは……人形師で人形使いのクルチェール・シェムリジ。
“ クルチェ ” って呼んでほしい。
“ シェムリジ ” は師匠の流派を表してるんだ。
人形師には流派が幾つも有って、免許皆伝を貰えたら、名前の後ろに付けるんだ 」
マオ
「 人形師に人形使い?
初めて聞いたよ(////)
オレの事も気軽に “ マオ ” で良いからな 」
クルチェール・シェムリジ
「 うん…… 」
マオ
「 キノコン、そろそろ≪ ヒッドユ村 ≫に戻ろう 」
キノコン:分身体
「 はいですエリ。
クルチェ、人形の回収を手伝うエリ 」
クルチェール・シェムリジ
「 有り難う……(////)」
3人で壊された人形の回収を終えた後、今度こそ≪ ヒッドユ村 ≫を目指して歩く。
マオ
「 人形使いって人形に戦わせるのか? 」
クルチェール・シェムリジ
「 うん。
“ 自動式戦闘型人形 ” って言うんだ。
師匠曰く古代文明の技術らしくて、古代文明では高度な魔法が使われていたみたいだよ。
その高度な魔法は失われた魔法って人形師の間では呼ばれてるんだ。
古代文明では “ 自動式警護型人形 ” って呼ばれていたらしくて、身体に障碍を持った人達を危険から衛る為に作られた人形らしいんだ 」
マオ
「 護衛か。
確かに障碍者は状態に依って異なりはするけど──、健常者みたいに自分で自分を守る事が難しいもんな。
人形でも危険から衛ってくれる護衛が傍に居たら安心かもな 」
クルチェール・シェムリジ
「 うん……。
人形師は古代文明の “ 自動式警護型人形 ” を現代に合わせた “ 自動式戦闘型人形 ” に変えて復活させたんだ。
戦争の道具としてじゃなくて、戦闘経験の無い人々を怪物から衛って代わりに戦ってくれる人形をね。
冒険者や傭兵に頼むのが一般的だけど、支払う金額が高くて依頼し難いから、気軽に何度も頼れないからね…… 」
マオ
「 確かに。
ボッタクリに近いからな~~。
冒険者や傭兵は報酬額の多い依頼を受けたがるしなぁ 」
クルチェール・シェムリジ
「 うん。
それで昔の人形師達は、古代文明に活躍していた “ 自動式警護型人形 ” に目を付けたんだよ。
お金が無くて、冒険者や傭兵に頼めなくても怪物や盗賊から自分達の≪ 村 ≫を衛れる様に、“ 自動式警護型人形 ” を改良して “ 自動式戦闘型人形 ” を生み出したんだ!
人形師にしかメンテナンスが出来ないのがネックだけど、現在は挙って “ 一寸した冒険に護衛として連れて歩ける ” をテーマにして “ 自動式戦闘型人形 ” を開発してるんだ 」
マオ
「 何か白熱してそうだな。
軍事利用とか悪用とかされないと良いよな 」
クルチェール・シェムリジ
「 そうだね。
≪ エンデカル公国 ≫を衛る防衛の為に使われるなら良いけど、他国を攻める道具に使われるのは嫌だな……。
悪用なんかされたら悲しくなるよ 」
マオ
「 軍事利用とか悪用とか出来ない様にデータを組み込めたら良いのにな 」
キノコン:分身体
「 人間が関わる以上、軍事利用も悪用も避けられないエリ。
使う人間側に問題が有るエリ。
全面的に人間が悪いエリ 」
マオ
「 生み出した発明者や物が悪い訳じゃないもんな。
使う側が責任を持って正しく使うべきだ 」
キノコン:分身体
「 ≪ ヒッドユ村 ≫に到着エリ 」
クルチェール・シェムリジ
「 な…何かキノコンが沢山だね…… 」
マオ
「 ≪ ヒッドユ村 ≫の中と外に分かれて、警備と見張りをしてくれてるんだ。
夜間は昼間より危険性が上がるからさ。
夜な夜な≪ 村 ≫を出てフィールドへ行こうとした無謀な若者が居たしな 」
クルチェール・シェムリジ
「 それは……危険な行為だね…… 」
マオ
「 《 自宅 》のドアの前で、キノコンに朝まで番をしてもらってるんだ 」
クルチェール・シェムリジ
「 其処迄してるんだ 」
出入り口で見張りをしてくれているキノコンに声を掛けて≪ ヒッドユ村 ≫に入る。
お供をしてくれたキノコンと別れて、クルチェを連れて《 自宅 》を目指して歩いた。




