⭕ 出逢いもん 1
横転した馬車をキノコンが起こしてくれる。
馬車のドアを開けると女の子が気を失っていた。
女の子の側には、光の加減で虹色に見える翅を左右に生やしている妖精が居た。
マオ
「 この≪ 大陸 ≫には妖精が居るのかよ!
ファンタジぃ~~ 」
キノコン:分身体
「 妖精が “ 実体化している ” なんて有り得ない事ですエリ 」
マオ
「 そうなのか?
兎に角、今は女の子が怪我をしてないか確認しよう。
馬車から出すぞ 」
キノコン:分身体
「 レジャーシートを敷きますエリ。
折り畳み敷きマットの上に寝かせてくださいエリ 」
マオ
「 頼むよ、キノコン 」
妖精
「 キノコン!? 」
気を失っている女の子を折り畳み敷きマットの上に静かに寝かせる。
先ずは身体の汚れを綺麗に消す為に浄化魔法を使う。
次に怪我を治す為に回復魔法を使う。
マオ
「 傷は塞がったから、後は安静にするだけかな。
大怪我してなくて良かった 」
???
〔 有り難う!
見ず知らずの春加を助けてくれて……。
お礼をしたいんだけど、生憎と手持ちが無くて── 〕
マオ
「 お礼なんて気にしなくて良いって!
怪我人は無条件で助けるもんだしさ 」
???
〔 そんな考え方の人間と出逢ったのは初めてだよ 〕
マオ
「 そうなんだ……。
まぁ、オレは錬金術師の弟子で、調合薬剤師だからな。
職業柄って言うか…… 」
セロが考えた設定だけどな~~。
???
〔 錬金術師?
調合薬剤師?
そいつ等って≪ 王都 ≫で私腹を肥やして贅沢三昧に暮らしてる筈だけどな~~ 〕
マオ
「 オレの師匠は変わり者でさ、放浪旅が好きなんだ。
≪ ヒッドユ村 ≫の近くには “ 未開の地 ” って呼ばれてる森が広がってて、師匠が此処で暮らしたいって言うからさ──。
弟子は何時でも師匠に振り回される損な役回りだよな~~ 」
キノコン:分身体
「 マオ様、今のもセロフィート様へ報告させて頂きますエリ 」
マオ
「 止めてぇ~~ 」
キノコン:分身体
「 《 薬屋 》へ運びますエリ。
[ 療養室 ]を用意させますエリ 」
マオ
「 有り難う、頼むよ 」
キノコンは気を失っている少女を笠の上に乗せて歩き出す。
折り畳み敷きマットとレジャーシートは、畳んでからオレのポーチに入れた。
≪ ヒッドユ村 ≫に向かう途中でオレは宙に浮いている妖精と会話をした。
マオ
「 そう言えば、さっき “ 春加 ” って言ってたよな。
もしかして──だけどさ、≪ 日本国 ≫出身の日本人だったりするかな? 」
???
〔 そうだよ~~。
春加は≪ 日本国 ≫出身の日本人だよ。
本名は舘嵜春加、14歳の女の子だよ~~ 〕
マオ
「 ≪ 大陸 ≫で≪ 日本国 ≫出身の女の子に出逢うなんて吃驚だな!
こんな出逢いも有るんだな~~。
フィールドでウロチョロしてて良かったよ 」
???
〔 ボクは妖精のチックだよ。
春加が5歳の頃からの相棒なんだ 〕
マオ
「 ≪ 日本国 ≫で妖精なんて見た事が無かったけど、居たんだな。
妖精は異形に入るのかな? 」
妖精チック
〔 えぇと、≪ 日本国 ≫ではボクの姿は実体化してないから、春加以外にしか見えないよ~~。
この世界に転移した時からボクの姿は実体化してるんだ。
この世界では春加以外にもボクの姿が見えるし、話せるんだよ。
向こうからボクに触れないのは変わらないけどねぇ~~ 〕
マオ
「 そうなんだ。
妖精って虹みたいなもんで触れないんだっけ。
人間から悪さをされないから安心だよな。
妖精を連れてる春加さんが悪い奴に狙われたりするんだろうな 」
妖精チック
〔 悪い奴からはボクが守護ってるよ~~。
彼奴等の心臓もボクが喰べるつもりだったんだよ~~ 〕
マオ
「 うん?
心臓を喰べる??
妖精って肉食だったっけ?? 」
キノコン:分身体
「 肉食では無いと思いますエリ 」
妖精チック
〔 心臓を喰べると “ 神聖力 ” を得られるんだよ。
神聖力は奇蹟を起こす為に必要な原動力なんだよね~~。
良かったら、彼等の心臓、ボクにくれないかな? 〕
マオ
「 えと……どうしよっか? 」
キノコン:分身体
「 構わないと思いますエリ。
心臓を抜いた後の肉の塊はキノコン達で美味しく頂きますエリ 」
マオ
「 証拠隠滅だな~~。
キノコンが良いなら、オレも構わないよ。
どうやって肉体から心臓を抜くのか分からないけど、≪ ヒッドユ村 ≫に到着する前に済ませちゃおうな 」
妖精チック
〔 有り難うだよぉ~~ 〕
妖精チックが全裸の男達の肉体から心臓を抜いて、キノコンが男達の死体を笠の中へ入れている最中、オレは妖精チックに話し掛ける。
マオ
「 そう言えば、チックは春加さんと一緒に “ 転移した ” って言ってたよな。
≪ 日本国 ≫でそんな事が起こるのか? 」
キノコン:分身体
「 “ 無い ” とは断言は出来ませんエリ。
≪ 大陸 ≫には勇者召喚,聖女召喚,英雄召喚,光の聖女伝説,光の勇者降臨説…等々数多の伝説が存在してますエリ。
転移魔法が有れば、召喚魔法も有りますエリ。
チックさんと春加さんは何等かの事情で≪ 日本国 ≫から転移召喚されたと思いますエリ。
本来、転移召喚される人物の近くに居たが故に巻き添えを食らった場合も有りますエリ。
現在、まともな召喚儀式を執り行えるのは≪ 神都ミリスムルパ国 ≫ぐらいですエリ~~ 」
マオ
「 神都ミリスムルパ国??
また新しい≪ 国 ≫が出て来たぁ~~ 」
妖精チック
〔 ≪ 神都ミリスムルパ国 ≫ねぇ……。
聞いた事の無い名前かな。
もしかして、春加とボク以外にも強制的に≪ 日本国 ≫から転移召喚された日本人が居るかも知れないって事だよね? 〕
キノコン:分身体
「 可能性は有るエリ。
行方不明の人間の中には≪ 大陸 ≫へ強制的に転移召喚された者も入ってるかも知れないエリ 」
マオ
「 強制的に転移召喚された日本人ってさ、≪ 日本国 ≫に帰って来れるのか? 」
キノコン:分身体
「 それは分かりませんエリ。
転移召喚にも様々な紋様が有りますエリ。
魔法陣も異なりますエリ。
帰れる場合も有れば、一方通行の場合も有りますエリ。
条件を満たせば強制帰還が出来る場合も有りますエリ 」
マオ
「 色々と複雑なんだな……。
転移召喚は “ されない ” に限るな! 」
漸く≪ ヒッドユ村 ≫が見えて来た。
話してると直ぐだよな~~。
村民達は妖精を恐がったりしないかな?




