✒ 弟子の憂鬱 2
──*──*──*── 未開の地
──*──*──*── 森の中
マオ
「 キノコン!
やっと会えたぁ~~!!
《 洞窟 》からそんなに離れた場所じゃなくて良かったぁ~~ 」
キノコン
「 エリ?
マオ様、どうされましたエリ。
セロフィート様から≪ 未開の地 ≫への “ 立ち入り禁止令 ” が出ていた筈ですエリ 」
マオ
「 それ処じゃ無いんだ!
怪物に襲われた人達が居てさ、喰い散らかされた死体を見付けたんだ!
その生き残りを見付けてさ、手当てをしたんだ。
怪我が完治する迄は安静に休ませたいから《 新居 》に運びたいんだ。
オレだけで怪我人を守りながら≪ ヒッドユ村 ≫へ戻るのは難しいから、キノコンに手伝ってもらいたくて探してたんだ 」
キノコン
「 マオ様……。
それは “ 魔国人 ” と呼ばれる種族ですエリ 」
マオ
「 まこくじん?? 」
キノコン
「 ≪ エンデカル公国 ≫の北方面に在る≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫の住人ですエリ 」
マオ
「 ≪ ミッダロント男爵領地 ≫って≪ エンデカル公国 ≫の辺境に在るのか──。
その北方面に在る≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫に亜人類が暮らしてるって事か? 」
キノコン
「 亜人類は≪ エンデカル公国 ≫の西方面にある≪ トゥクルッテ国 ≫で暮らしてますエリ 」
マオ
「 居るには居るんだな 」
キノコン
「 魔国人達は厳しい山岳を越え、川を渡り、≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫から≪ エンデカル公国 ≫へ密入国して来た輩だと思いますエリ 」
マオ
「 密入国?? 」
キノコン
「 川を渡ると≪ 未開の地 ≫に入りますエリ。
もしかしたらマオ様が出会した以外にも魔国人が≪ 未開の地 ≫に避難して来てるかも知れませんエリ 」
マオ
「 避難って? 」
キノコン
「 ≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫では激しい内乱が起きてますエリ 」
マオ
「 内乱? 」
キノコン
「 怪我が完治しても≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫へ帰すのは得策とは言えませんエリ。
死にに帰らせるだけですエリ 」
マオ
「 じゃあ、どうしたら── 」
キノコン
「 マオ様、その《 洞窟 》を案内してくださいませエリ。
密入国して迄、逃れて来た魔国人達が安心して暮らせる場所をキノコンが作りますエリ 」
マオ
「 キノコン、良いのか? 」
キノコン
「 勿論ですエリ。
マオ様が善意で助けた魔国人をみすみす死なす訳にはいきませんエリ。
魔国人に恩を売る絶好の機会ですエリ。
セロフィート様も今回は大目に見てくださると思いますエリ 」
マオ
「 ははは…………そうだと良いけどなぁ…… 」
キノコン
「 マオ様が見付けられた《 洞窟 》を出入り口として、避難して来た魔国人達の故郷を再現しますエリ 」
マオ
「 キノコン、有り難な!
キノコンが居てくれて助かるよ! 」
見付けたキノコンと一緒に《 洞窟 》を目指して歩く。
マオ
「 他の魔国人達もキノコンが探してくれるのか? 」
キノコン
「 勿論ですエリ。
魔国人探しもキノコンに御任せくださいエリ★
見付けたら即、拉致して捕縛しますエリ 」
マオ
「 拉致して保護?
それって保護って言うのかな?? 」
キノコン
「 魔国人は人間に恐れられてますエリ。
見付かれば、迫害や差別の対象になりますエリ。
臆病で弱い人間が戦闘に特化した魔国人を受け入れる事は難しいですエリ。
なるべく人間と関わらない様にしますエリ 」
マオ
「 じゃあ、≪ 村 ≫に連れ帰って療養させるのは止めた方が良いのか? 」
キノコン
「 《 新居 》より《 薬屋 》で療養した方が良いですエリ。
《 薬屋 》の方が≪ 未開の地 ≫と近いですエリ。
何か起きた時には直ぐに避難が出来ますエリ 」
マオ
「 キノコンに一任すれば安心だな。
行く行くは≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫も手中に治めてセロに献上しちゃったりとかな? 」
キノコン
「 マオ様が御望みなら、検討しますエリ★ 」
あっ…しまった!
余計な事を言っちゃったみたいだ。
キノコンなら本当に≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫を乗っ取りそうだ。
──*──*──*── 洞窟
マオ
「 キノコン、此処がその《 洞窟 》だよ。
安全を確保する為に一応、結界魔法を張ってるんだ。
この奥に居るよ 」
キノコンと一緒に《 洞窟 》の中に入ると、怪我人が焚き火に当たっている。
オレが作った料理は食べてくれたみたいだ。
口に合ったみたいで良かった。
マオ
「 ただいま!
遅くなっちゃったな。
無事にキノコンと会えたから、日が暮れる前に≪ 村 ≫帰れるよ 」
怪我人
「 яжтασυл 」
マオ
「 警戒しなくて良いよ!
キノコンはドラゴンすらもワンパンで倒せる地上最強の怪物だけど、オレがテイムしてるテムモンなんだ。
危害は加えないから 」
キノコン
「 マオ様、“ ドラゴンすらもワンパンで倒せる ” は付けない方が良いですエリ。
余計な恐怖を植え付けてしまいますエリ 」
マオ
「 それは御免な……。
キノコンが凄い怪物だって事を周知してほしくて…… 」
キノコン
「 マオ様の御気持ちは嬉しいですエリ。
その御気持ちが怪我人への配慮を欠いてますエリ。
メンタルケアの妨害になりますエリ 」
マオ
「 御免…… 」
キノコン
「 マオ様、この者は間違いなく魔国人ですエリ。
頭の角が魔国人の証ですエリ。
折れた角は元気になれば生え変わりますエリ 」
マオ
「 亜人にも角が生えてる種族が居るけど……。
オレにも区別が付かないんだからさ、亜人で誤魔化せないかな? 」
キノコン
「 それは無理ですエリ。
≪ エンデカル公国 ≫で認知されている亜人類は、獣族と獣人族ですエリ。
≪ トゥクルッテ国 ≫で暮らしている亜人類に人獣族は居ませんエリ 」
マオ
「 えっ、居ないのか? 」
キノコン
「 ≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫には居ますエリ。
≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫で産まれた人獣族は皇帝の所有物ですエリ。
逃亡は出来ませんエリ 」
マオ
「 そうなのか?
所有物だなんて酷くないかな? 」
キノコン
「 エリ?
マオ様もセロフィート様の所有物ですエリ 」
マオ
「 オレは良いんだよ。
セロとオレは両想いで相思相愛なんだからさ。
式は挙げてないけど、ちゃんと夫婦だぞ(////)」
キノコン
「 左様でしたエリ。
( 今の発言もセロフィート様へ報告するエリ )」
マオ
「 じゃあさ、≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫には獣人族や獣族が居るんだな 」
キノコン
「 ≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫に居るのは獣人族だけですエリ。
獣族は主に≪ トゥクルッテ国 ≫を衛る鉄壁の楯みたいな存在ですエリ。
≪ トゥクルッテ国 ≫から出るのは戦争になった時だけですエリ 」
マオ
「 そうなんだな。
獣人族は他の≪ 国 ≫にも居るのか? 」
キノコン
「 現在は≪ トゥクルッテ国 ≫と≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫にしか居ませんエリ。
≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫に捕らわれている獣人族の雌は帝国兵の成人男性と子作りさせられますエリ。
産まれた子供が獣人族なら成人してから子作り要員として生きますエリ。
産まれた子供が人獣族なら、代々皇帝の玩具として生きますエリ 」
マオ
「 どっちも嫌な人生だな。
男子が産まれたら? 」
キノコン
「 食用家畜として飼育されますエリ。
10歳を迎えると解体され、調理されますエリ 」
マオ
「 え゛……食うのか? 」
キノコン
「 はいですエリ。
上級階級者しか食べれない高級料理として振る舞われますエリ 」
マオ
「 酷い≪ 国 ≫だな…… 」
キノコン
「 ≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫では人獣肉,獣人肉は、純粋な人肉より美味しいそうですエリ。
獣族は食用の対象外とされてますエリ 」
マオ
「 ≪ ラトヒアギニマ帝国 ≫は此方からは関わりたくないな…… 」
怪我人
「 ъэчящог 」
マオ
「 あっ、御免な。
ついつい話し込んじゃって(////)
キノコンがな、≪ 魔国ヲヲフベルグ ≫から避難して来た魔国人達の為に、この《 洞窟 》に避難場所を作ってくれる事になったんだ。
魔国人達の第2の故郷になるかは分からないけど、キノコンが頑張ってくれる事になったんだ。
アンタには完成する迄《 薬屋 》で療養してもらう事になるよ。
《 薬屋 》は≪ 未開の地 ≫の直ぐ側に在るんだ。
裏口を使えば、村民達に見付からずに≪ 森 ≫に入る事が出来るよ 」
キノコン
「 ボクは分身体だから、分裂は出来ないエリ。
本体に伝達したから別の分身体が来て、作業に取り掛かってくれるエリ。
≪ 村 ≫迄キノコンが護衛しますエリ。
怪物もキノコンに任せてくださいエリ 」
マオ
「 頼むな、キノコン 」
そんな訳で、《 洞窟 》へ来てくれたキノコン達の一部と一緒に怪我人を連れて《 洞窟 》を出た。




