✒ 弟子の憂鬱 1
──*──*──*── 未開の地
──*──*──*── 森の中
別に普通の森だよな~~。
特に変わった所なんて無いし。
怪物も出ない。
もしかして、≪ 未開の地 ≫を調査してるキノコン達が怪物を狩ったかな?
これじゃあ、運動にもならないな。
帰ろうかな…………。
何て思っていたら、奥から怪物の鳴き声が聞こえた。
何だよ、居るじゃん!
オレは気配を殺して、怪物の鳴き声が聞こえた方向を頼りに奥へ進んだ。
──*──*──*── 森の奥
マオ
「 うわっ、酷いな──。
襲われて喰われちゃったのか……。
確し汚ない喰べ方だな~~。
にぃさん……ごぉ……6人も居て全滅したのかよ?
未だ近くに居るかも知れないな。
6人掛りを全滅させる怪物か──。
どうしようかな…… 」
周りを見回していると血痕の跡を見付ける。
奥に続いてるな。
もしかしたら生き残りかも知れない。
怪物に気付かれない様に、気配を殺したまま移動する。
怪物の気配はしないから、血の匂いや痕跡を辿って無いみたいだ。
6体も喰えば、腹も膨れるか?
《 洞窟 》を見付けた。
中に入らないと深いか浅いか分からない。
《 洞窟 》に入ってから怪物に襲われても困るから、匂いや音を遮断する結界魔法を発動させる。
《 洞窟 》に入って来れない結界魔法も発動させた。
これで安心して《 洞窟 》の探索が出来るな。
暗いから元素魔法の “ ポタル ” を発動させる。
明るくなった《 洞窟 》の奥へ1人で進む。
暫く歩いていると、苦しそうな呻き声が聞こえて来た。
もしかしたら、血痕の主──生き残りの人かも知れない。
慎重に先へ進むと、人影が見えた。
人影の主は深傷を負っているみたいで、辛そうに見える。
どうやら人型では有るけど、人間じゃないみたいだ。
異形……とは言わないよな。
亜人の類いかな?
この≪ 大陸 ≫には来たばっかりだから良く知らないんだよな。
言葉は通じるから何とかなるだろう。
深傷を負っている人物に近付くと警戒される。
そりゃそうだ。
見ず知らずの人間が近付いて来るんだから警戒しない方がどうかしてるからな。
深傷を負って動けない自分に危害を加えようとしてるんじゃないか──って、不安に思うのは同然だ。
マオ
「 オレはマオ・ユーグナル。
森の近くに在る≪ ヒッドユ村 ≫に引っ越して来た調合薬師だよ。
この森には薬の材料になる野草を摘みに来てたんだ。
血痕を見付けたから辿って来たんだけど──。
アンタ、怪我してるよな?
オレに手当てさせてくれないかな 」
怪我人
「 пклёеж 」
マオ
「 応急処置はしないと、傷が化膿して膿んじゃうからさ 」
怪我人
「 яэтсушп 」
マオ
「 警戒するのは分かるけど、手当てするだけだって。
怪我人に危害は加えないよ。
オレは手ぶらだろ 」
怪我人
「 жбайгдв 」
マオ
「 有り難な。
じゃあ、傷の手当てをするよ 」
オレに対しては未だ警戒しているみたいだけど、手当てをさせてくれる事になった。
静かに怪我人へ近付いて、隣に座る。
先ずは汚れた身体を綺麗にしないとな。
マオ
「 手当てをする前に汚れを落として綺麗にするな 」
清掃魔法は掃除用の魔法だから、浄化魔法を発動する。
浄化魔法にも色んな種類が有る。
今回は身体の汚れを消して綺麗にする魔法を使う。
怪我人の身体が綺麗になる。
次は回復魔法で深傷を癒す番だ。
オレは回復魔法を発動させる。
マオ
「 ん?
うぅん?
回復魔法の効き目が弱い??
傷が癒されない?!
何でだ? 」
怪我人
「 хцэыои 」
マオ
「 回復魔法が効かないなんて──。
キノコンから貰った塗り薬なら効くかな? 」
腰に付けてるポーチの中から救急セットを取り出す。
救急セットの中からキノコンがくれた塗り薬を取り出す。
フタを開けて、薬を指で掬い取ったら、全ての傷口に塗り込んでいく。
回復魔法が効かないなんて、こんな事は初めてだ。
戻ったらセロに相談しないとな。
薬を塗った部分を包帯で巻いて──。
救急セットから包帯を取り出して、傷口に包帯を丁寧に巻く。
何とか手当ては出来たかな。
キノコンの塗り薬には “ キノコンじる ” が入ってるから効いてくれる筈──だと思いたい。
暫くは安静にしとかないとだけど、こんな場所で “ 安静 ” は無いよな。
取り敢えず、羽織る物を出さないとな。
ポーチから未使用のバスローブを取り出す。
袋から出して、バスローブを怪我人に差し出す。
袖に腕を通させて、腹の前でバスローブの紐を結ぶ。
半裸で居るより、バスローブを着てる方がマシだろう。
マオ
「 バスローブしかなくて御免な。
アンタにオレの服は小さいからさ。
半裸で居るよりはマシだと思うから、そのまま着てて 」
“ ポタル ” を置いては行けないから、火を起こして周囲を暖めないとな。
怪我人の身体も暖めた方が良い。
水分補給と食事も必要だ。
マオ
「 今から火を起こすよ。
お茶も淹れる、食事も用意するから待っててな 」
怪我人
「 κροαгйч 」
土魔法を発動させて、ПとШの形をしたキャンプ用の竈を作る。
ポーチの中から薪セット,火付けセットを取り出したら竈に入れて、焚き火の用意する。
火魔法で火を着けたら、ПとШの竈の上に網を置く。
П竈の網の上に水を入れたヤカンを置いて温める。
Ш竈の右側の上にはスープ用の鍋を置く。
Ш竈の左側の上にはフライパンを置いて、スライスされた味付け肉を焼く。
調理をしている間に土魔法で調理に使う作業台と食卓用のテーブルを作る。
土で作たから汚れない様に汚れが付き難い防水用のシーツを掛ける。
お湯が沸いたら、魔法で飲み易い温度に調整してから湯飲みに薬膳茶を注ぐ。
マオ
「 こんな所じゃちゃんと休めないけど、飲み物と食事を用意するよ。
一応ベッドも作るから 」
傷の治りを早める為に薬膳スープを作る。
薬膳料理も作って、食卓テーブルの上に並べる。
食具一式も出した。
マオ
「 休む前に腹拵えしないとな。
アンタの口に合うかは分からないけど、食べてくれな。
薬膳茶と薬膳スープはおかわり出来るから 」
怪我人
「 μεπτёры 」
怪我人が寝る為に使うベッドも土魔法で作る。
ポーチからキャンプ時に使う為の就寝セットを取り出す。
ベッドの上にシーツを掛けた後、就寝セットの敷き布団,枕,毛布を置く。
マオ
「 ふぅ……寝床はこんな感じで良いかな?
アンタ達を襲った怪物が未だ近くを徘徊してるかも知れない。
流石のオレでも怪我人のアンタを運びながら怪物の相手をしつつ《 森 》を出るのは難しい。
だから、怪物を倒しつつキノコンを連れて来る。
それまで此処で待っててくれ 」
怪我人
「 знлёчх 」
マオ
「 この《 洞窟 》に怪物は入って来ないから、安心して良いからな。
その前に奥を見てくるよ。
何かが居たら危ないからさ 」
怪我人
「 υνъэятж 」
怪我人は不安そうな顔をしている。
元気なオレが安全を確保してやらないとな。
見付けた側の義務だ。
《 洞窟 》の奥へ進むと行き止まりだった。
生き物は特に住み着いて無さそうだ。
清潔感は必要だから、《 洞窟 》の中に清掃魔法を掛けておく。
マオ
「 よし、これで清潔な空間に早変わりだ。
日が暮れる前にキノコンを呼んでこないとな 」
食事をしてくれている怪我人に声を掛けてから、《 洞窟 》を出る。
気配を殺しながら≪ 未開の地 ≫を調査しているだろうキノコンを探しながら歩く。
気配を殺してるから怪物はオレに気付かないからスルー出来て楽だ。




