✒ 弟子として 4
──*──*──*── 地下1階
──*──*──*── 工房
キノコン:本体
「 マオ様、仕分けの次に行う工程の説明をさせて頂きますエリ 」
マオ
「 次の工程? 」
キノコン:本体
「 はいですエリ。
仕分けの済んだ薬草を擂り鉢へ入れ、擂り潰しますエリ。
擂り潰した後、濾し器を使い、薬草を裏漉しますエリ 」
マオ
「 擂り潰して濾すんだな 」
キノコン:本体
「 先ずは擂り鉢を用意しますエリ。
道具の管理,手入れ,準備はキノコンに任せてくださいエリ 」
マオ
「 有り難な、キノコン 」
キノコンが用意してくれた擂り鉢は一般的な擂り鉢と違ってデカい。
明らかに調理に使う家庭用の擂り鉢とは異なる。
左回りにも右回りにも対応している擂り鉢の中へ、カゴに入っている野草を全部入れる。
専用の擂り粉木で野草を叩きながら、左右に回しながら、巧みに動かして、野草を徐々に擂り潰して行く。
“ 丁寧に ” 意識をしながら根気良く丁寧にペースト状に近い状態になる迄擂り潰した。
これはかなりの重労働だ。
苦労の末に擂り潰せた後は、作業台の上に濡れた布巾を敷く。
布巾の上にボールを置き、その上にキノコンが用意してくれた濾し器を乗せる。
濾し器の上に野草を乗せたら、専用のヘラを使って丁寧に野草を裏漉した。
ボールの中に溜まった裏漉しされた物は、草汁と分ける。
用意された野草の名前が書かれている写真が貼られた瓶の中へ別々に入れる。
作った年月日を記入したら、キノコンが保管庫へ入れてくれる。
濾し器の上に残った物も捨てずに、野草の名前が書かれている写真が貼られた瓶の中へ入れる。
この一連の作業は野草を変えて、ひたすら繰り返す。
これもかなりの重労働だ。
だけど、弱音は吐けない。
キノコンとキノコン達が手伝ってくれるんだから、頑張らないとな!
オレは無心になってひたすら作業を繰り返した。
──*──*──*── 約20時間後
マオ
「 ふぅ~~。
やっと終わったぁ~~。
結構、時間が掛かっちゃったな 」
キノコン:本体
「 マオ様、お疲れ様ですエリ。
次の工程では、擂り潰した後の作業が違いますエリ。
布巾に包み草汁を搾りますエリ。
初めは粗目の布,次に中粗目の布,最後に細目の布の順に包み搾りますエリ 」
マオ
「 裏漉しとは違う方法で草汁を取るって事か? 」
キノコン:本体
「 はいですエリ 」
キノコンが透明で薄いビニール手袋と粗目の布,中粗目の布,細目の布を用意してくれる。
作業台の上に濡れた布巾を敷いたら、その上にボールが置かれる。
薄くて透明なビニール手袋を嵌めてから、粗目の布の中に擂り潰した野草を入れて搾る。
ただ搾れば良い訳じゃなくて、ちゃんとした搾り方が有るみたいだ。
キノコンが正しい搾り方のコツを丁寧に教えてくれる。
目の違う布に変えて草汁を搾り終えたら、野草の名前が書かれている写真が貼られた瓶の中へ入れる。
搾りカスも捨てずに、野草の名前が書かれている写真が貼られた瓶の中へ入れる。
どちらの瓶にも作った年月日を記入したら、以下省略。
この一連の作業も野草を変えて、ひたすら繰り返す。
これもかなりの重労働だったりする。
何て地味な作業だろう。
野草を薬に使う為にはこんなに面倒な工程を終えないと駄目なんて──。
──*──*──*── 約18時間後
マオ
「 はぁ…………やっと終わったな。
裏漉しするより少しだけ早く終われたな~~ 」
キノコン:本体
「 マオ様、お疲れ様ですエリ。
次の工程の説明をしますエリ 」
マオ
「 未だ有るんだな…… 」
キノコン:本体
「 今迄は草類に対する作業工程でしたエリ。
次は実に対する作業工程ですエリ 」
マオ
「 実?
野草の実も使いのか? 」
キノコン:本体
「 勿論ですエリ。
種も茎も根も全て使いますエリ。
雑草に捨てる場所は無いですエリ 」
とうとう “ 雑草 ” って認めたぁ!!
言い直しもしないのか~~。
逆に潔いな。
キノコン:本体
「 実は細かく砕いて粉末にしますエリ。
擂り鉢と擂り粉木を使いますエリ 」
キノコンが用意してくれた擂り鉢の中へ、実を入れると擂り粉木を使い粉末になる迄、確りと擂る。
水分が多くてベチャッとしている実に対しては、また方法が違うからキノコンが教えてくれる。
野草の名前が書かれている写真が貼られた瓶の中へ入れて、作った年月日を記入したら以下省略だ。
それからも種類で中身がなく、固い物は細かく砕いて粉末にしたり、種類の中身が柔らかい物は擂り潰した。
種類の場合は種汁とカスを分けないで瓶に入れるらしい。
作った年月日を記入したら以下省略だ。
固い殻や皮は砕いて粉末にする。
柔らかい殻や皮は擂り潰すみたいだ。
汁とカスを分けて使う種類,分けずに使う種類が有るみたいだから、間違えない様に気を付けないといけない。
瓶に入れて作った年月日を記入したら以下省略だ。
大体の下処理の仕方をキノコンから教わった後は、使った道具を洗う作業が待っていた。
擂り潰す為に使った道具一式、搾る為に使った布巾一式は、水魔法で確りと洗い、風魔法で確りと乾かすか──、浄化魔法を掛けて汚れを落として綺麗にしないといけない。
以上の作業が錬金術師セロの弟子であるオレに与えられた主な仕事らしい。
オレは未だ携われないみたいだけど、調合前には調合に使用する道具一式に必ず浄化魔法を掛けて綺麗にする事を忘れたら駄目らしい。
キノコンから「 今日の仕事は終わりましたエリ 」って言われたから[ 工房 ]を出て1階の[ 店内 ]へ上がる。
──*──*──*── 1階・店内
壁に掛けられている時計を見て時間を確認すると、未だ数時間しか経っていない。
どうやら[ 工房 ]と[ 店内 ]の時間の流れは違うみたいだ。
[ 店内 ]での1分が[ 工房 ]では1時間なのかも知れない。
本来なら約52時間は経ってる筈だけど、実際には60分も経っていない。
人間なら時差ボケしちゃうかも知れないな。
その前に逆浦島太郎みたいな体験をしちゃうかもな。
古代魔法なら時間の流れを変えるなんて朝飯前だし、慣れてるから何て事はない。
今日の仕事が終わったなら、≪ 村 ≫を散歩しようかな?
それより《 未開の地 》に入って散策してみようかな~~。
──*──*──*── 外
《 薬屋 》の外に出ると腰エプロンを着けたキノコンが《 薬屋 》の前を藁箒で掃いている。
他のキノコン達は《 薬屋 》の宣伝をする為にチラシを村民達と打ち解けながら配布している。
意欲的に売り込んでるな~~。
オレはキノコンの目を盗んで、見付からない様に≪ 未開の地 ≫へ踏み込んだ。




