魔法と科学
目が覚めると、教会の部屋の天井だった。
今日はミーコに案内され職場に向かった。
牧加東君は、干物の製造所。
私は蒸留所というお酒を造る職場で働くこととなった。
教会の紹介という事で、職場の人たちはすんなり受け入れてくれた。
職場ではみんなにマキと呼ばれた。
牧加東は、カトーと呼ばれているらしい。
私の仕事は、原料とかまだ混然一体となった、どぶろくのような状態のお酒をろ過する効率を上げるために、重力魔法で濾過機に重力をかける作業。
圧力を均一にしろととか、強すぎてはだめとかいろいろ注文を付けられるが、何とかこなせている。
カトーは、干物に風を送り続けて、乾燥させる作業。
こちらも強すぎたら干物が飛ぶ、ほこりを飛ばすな等、注文が付くらしい。
私は職場のみんなにマキと呼ばれ、ヨシダの雫というお酒が、重力魔法でジャーって流れるように濾過されて、効率が上がったと喜ばれ、魔法絞りってラベルに書こうって冗談が出るくらいにだった。
夕方になり、仕事を終えて教会に帰ると、教会の前にアルスタとミーコがいた。
夕食を一緒に食べるために待っていてくれたのだろう。
ミーコが心配そうに、仕事の内容や、疲れすぎなかったかとか、作業的とか人間関係でつらいことなかったか聞いてきたので、仕事の内容や、今日あったことを話した。
アルスタとミーコのやさしさ、に温かい気持ちになった。
「今日は、魔法を使うのは慣れてないからその部分だけ疲れた。カトー君は大丈夫だった?」
「職場の人たちはみんな優しくて、よくしてもらっています。
仕事は、干物に風をあてて乾燥を助ける作業でした。
そこで一つ発見したんです。見てくださいね。」
カトー君は風魔法で風を送りながら、得意げな顔をして一本の四角い鉄の筒を取り出し、説明はじめた。
「風魔法をこの筒の入り口に集中すると、風を一点集中できるんです。」
これは、日本でいう集塵機のようなものね。便利そうね。
カトー君はつづけている。
「ここで、筒の出口に風の出口に風の流れを遅くする魔法を付与すると風の強さがコントロールできます。」
アルスタがびっくりしている。
「カトー、昨日魔法に目覚めて、もうダブルキャストができるのか!すごいやつだな。。。」
カトー君は得意げな顔をしながら、さらにつづけた。
「これをやると、この鉄の筒が熱くなるんですよ。」
ミーコは筒を触ってみた。
「熱っ!カトーさん炎のスキルも持ってたんですか?目覚めた?」
「違います、これは科学です。ボイルシャルルの法則といって、
筒の中の空気が圧縮すると、温度が上昇する現象なんです。加藤博士!すごいでしょう」
私は四角い筒の上にカップを置いた。
「まず、加藤博士というのは、やめて。こちらではみなと同じようにマキと呼んでくれ。
カトー君は、こちらでも我々の科学が、使えることを確認できたんんだね。」
ニヤリと笑うと、カトー君もニヤリと返した。
筒の上の、カップを取ると飲み頃になってた。
ミーコやアルスタには知らない言葉だが、「科学」とは魔力を使わない熱源と理解しているようだ。
皆、筒の上に冷めてほしくないものをのせ、歓談はつづいた。