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望郷  作者: 白山月
3/21

異世界

暗闇で声が聞こえる。


「博士!加藤博士!」

牧加東君の声だ。。。

うぅぅぅ・・・


目を開くと牧君がのぞき込んでいる。

「近い!」

ハッとしながら、後ずさりながらも、心配そうに声をかけてきた。

「大丈夫ですか?」

手足は動く、身体にも大きな痛みはない。


周囲は石の建造物の廃墟だった。

大きな建物だ。

いつの間にか昼間になっている。

「ここって、どのへん?」

「さっぱりわからないんです。空にオーロラみたいなのでうっすら出てるし、月が・・・」

牧加東は空を指さした。

「輪っかがあるんです」

!!!

どういうこと?

地球以外の星?

私騙されてる?


そうだ新型センサーで移動量がわかるはず

「牧君、移動量のデータを確認しましょう」

牧加東は軽ワンボックスに乗り込みコンソールをのぞき込んだ。

「地震の時の微振動の場所から水平移動距離5m、垂直0mほぼ同じ場所です。

時計も異常な変化はありません。

ただ、3次元以外の移動を示す、紫のセンサーがレベル5に到達しています。

あとは、最初と同じで赤が少し光るくらい」


「移動していないのに、次元が変わることね。それで景色が変わってしまうって、どういうこと?牧君どう思う?」

「ここは、よその星ではない、遠い未来でもない、もともといた、富士吉田の異世界と推測します」

高次元を利用した移動方法の研究をしていたのに、予想外だなぁ。。。


紫のセンサーってことは、このクリスタルの影響?

魔法陣みたいなのも見えたが、魔法?

魔法なんて、この世にある?

考え事もしていると、牧加東が話しかけてきた。


「博士、まず周囲の確認をしましょう。」

牧加東は、便利そうなものをリュックに詰め、二人は出発した。


歩きながら、私は、テストコースが虹色に光った時から、発生したことを順番に思い出して整理している。

・呼吸ができるってことは、空気はあるんですね

・ここって人間住んでるんですかね

・異世界って剣と魔法の世界ってイメージがあるんですけど

・魔物とかいるんですかね

・何か食料になるもの見つけないと

・その前に飲める水をかくほしなくっちゃ

・どうやったら帰れるんだろう


横から、牧加東が、余計なことを、いろいろ言ってくるのが煩わしい。

なんか人が、今までの事を頭の中で整理しているのに、イライラしてきた。。。。

「ちょっと、黙ってってくれる!」

牧加東は驚いたような表情をして、黙って前方を指さした。


何?


草原の遠くに何か水色のブヨブヨした塊が動いている。

粘菌・・・巨大粘菌?

「博士、スライムです!・・・逃げましょう」

「牧君、あれは粘菌ではないのか?」

「かもしれませんが、危険かどうかもわからないし、コミュニケーションも取れそうにないから逃げましょう」

二人は走って逃げるが、スライムは追いかけてくる。


スライムはどんどん追いついてくる。

「博士!時間稼ぎします!このまままっすぐ逃げて!」


突然、牧君がUターンして、スライムに向かって走り出した。

スライムを交わして、回り込むように走って誘導している。

私はその場を全力で走りさった。

牧加東はスライムをかわすが、引き離すことはできず、完全に持久走になっている。


牧君のおかげで、スライムに追われることなく一直線に走った。

すると、正面に金髪で、みどりの瞳、腰に大剣をさしている男前が、こちらを見ている。

コスプレ?


いや、今はそれどころではない。

「た、助けてー!!!」

「どうしたー?」

よかった、言葉が通じる!


「向こうで、牧君が大きな粘菌みたいなやつに襲われてるの、助けて!」

「スライムかな?とにかく行こう」

「行ってくれるのじゃないの?」

「君一人をここに放置していくのは危険だ。一緒に来て」

それもそうだ。。。冷静に対処してくれているし、大きな剣を持って強そうだ。


走って戻っていくと、スライムがいた。

!!!!!

スライムの中にぐったりした牧加東君が!

状況を把握した金髪の男は、剣を抜いて、スライムを一刀両断した。


飛び散る粘着質。。。

その場に、牧加東君が倒れている。

そして、息をしていない!


男が加藤君の顔を覗き込みながら、聞いてきた。

「この人の名前は?」

「加藤真紀」

いやそれは、私の名前だ!このひとの名前は牧加東なのに、、、


男は大きな声でよびかける。

「カトウさーん、カトウさーん」

なんか、私の間違いは結果オーライだった。。。


それより、返事がない、男は呼びかけながら呼吸が止まっていることを把握した。


そして、いきなり人工呼吸を始めた。

く、クチビルは・・・見ていいのだろうか。

今は牧君の蘇生が最重要だ。

私は牧君の回復を祈るしかできなかった。


どれくらいしただろう、しただろう?

牧君の呼吸が回復した。

よかった、牧君が無事で。。。


やがて。牧加東も意識を取り戻した。


助けてくれた男の名前はアルスタ、金髪に、緑の瞳、端正な顔立ち。

びっくりするくらいの男前だ。

勇者を目指してスタッカという街にある、冒険者の訓練所で学んでいる。

回復魔法の習得がスタッカの街の教会ではできなかったので、

ヨシダ村の教会に向かっているところだった。


巨大な虹の柱を見かけたので、周辺を散策していたところに、全力で走ってくる私を見つけたそうだ。


私たちは、昨夜のことを話し、ここがどこかもわからず、途方に暮れていることを話し、どうしたらいいかもわからず、途方に暮れていることを伝えた。


「僕は今からヨシダ村の教会に行く、一緒に行って教会に頼ってみるのはどうだろう?」

アルスタの一言で、私たちはヨシダ村に向かうことにした。


私はカトー君とアルスタの顔を見ると、人工呼吸をする姿を思い出すのを、何度も頭の中から振り払った。

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