金時ー黄金をこの世でつぶせといわれたモノです
使命をことづかり転生して来たモノ。
モノは、前方に見える街を目指して歩いていた。すにーかーにちのパンとてぃーシャツを身に着ているモノはこの世界にとっては異様だ。ここはモノにとって全く未知の世界なのだ。モノはいわゆる転生者。別名神の命を授かった使徒ともいう。今回授かった命は、黄金をこの世でつかいつぶせまわせと言われたものです。黄金は価値ある物らしいです。しかし、しかしですね、しかしですよ?黄金を腐るほどいただいたのはよろしいのですが、黄金しかいただけないのはいかがなものなのでしょうね?物騒な世の中なら獲物一つくらい下賜してくださってもよろしいではありませんか。服とか水とか生活必需品をいただきたかったと思ってしまいます。でも、そうですね。黄金を価値ある物だと見ている人には価値あるのでしょう。しかしながら、モノは遭難一歩手前であったと自負しているのでなかなかに危険を冒していたと思ってしまうのです。大事にならなくて本当にようございました。完全なる手ぶらとは勇気ある者か万有ある者かはたまた蛮勇ある者かわかりませんよ。大事は無いので万有かもしれませんね。うぬぼれてはおりませんよ?そこのところよろしくお願いしますね。
では街の中に入りまして早速御役目に参りましょう。
幸い日が真上に登った頃なので、幾分かの時はあります。
時は神なり。金は下なり。行きましょう。あ、居ました。第一街人だいいちまちびと発見です。早速出会えました。お声かけしてみましょう。
「こんにちは」
「おう、なんかようか?」
「不躾な質問をして申し訳ありませんが、何か、お困りごとはありますでしょうか」
そう言えばどういった感じで黄金を授けるか考えるのを忘れていました。しかし、この世界の人となりをモノは知らないので、第一街人には知ることのできる機会であることとしましょう。申し訳ありません、知ることをお許しください。
「困りごと?」
(赤の他人になんで困りごとをぶちあけなきゃならねえんだ、こいつ何様だ?)
「あるにはあるが知ってどうするんだ」
(こいつの出たちは簡素な奴だ。こんな奴に何ができるってんだ。ちょっとばかし酒に使って金がねえ。たかるのもいいかもしれねぇが、出方を見るか)
「…いえいえ、警戒されるのも十分承知の上です。そういうあなた様の疑心も踏まえて、あえて具体的にわたしができることを申し上げるならば…"黄金をくれてやろう"」
ふむふむ。なるほどなかなか染まってありますね。であるならばモノの口調、態度、雰囲気はこういうのが良さそうですね。
「?!はぁ?黄金だと?何言ってやがる。お前が黄金を?持っているわけねぇだろ。お前手ぶらじゃねぇか」
(黄金⁈バカいっちゃいけねえ。なんでぇい急に尊大な貴族みたいな言い方しやがって)
やはり証拠、物品、物を必要とするのですね。それを願いと言いながらも疑心を抱く。
であるから、モノは黄金を出現させた。
「"ほら、黄金だ黄金のように重く黄金のように輝く黄金だ。そなたが欲しがる物だろう。くれてやる"」
「はぁ??は?」
(こいつ何も無いところから黄金を出しやがった…黄金、見たことねぇがこいつは運がいい。いや待てよ怪しい怪しすぎる黄金は人から出ねえ。当たり前だ。こいつ、格好おかしい、口調も態度も何もかもチグハグだ…それにヒッ!?!)
「い、いらねぇっ」
そうして第一街人は、おびえて、逃げた。
「"なぜだ、黄金なら腐るほどある……粗末に扱おうが知るまいて"」とぼやいて、その黄金を道端に積んで道なりを歩いた。
最後は怯えがありました。何を見たのでしょうね。何を想像してしまったのでしょうね。
途中まで流れていたのに、途中から恐怖が第一街人に纏った。良心か貴族に対する恐怖か。
幸せな方向に感情を向ければよろしいのに、しかしあれが第一街人の苦しみなのだとしたら、恐怖の王政とはなかなか…素晴らしい世界です。巡りがいあるというものです。
第二街人に遭遇しました。親子ですね。父と娘。 ざっくり言うと親は洗脳されていて、後は素直で純粋でよく笑う子でしたね。そんなうまい話があるかと言う。それは親が金塊をどうするかによるだろうに。いいことに使えば良いことが起こる。立派な洗脳を見ました。
トカゲや灰色、獣風情がせいぜい糧になってほしい。失礼、口が悪くなりました。謝罪します。
奴らにも役目があり、用がなければどっかに行きますよ。
次の人を探していると、職質をされました。どうやら噂になっている様子。そして、あれこれ問答したあと連行されることになりました。
しかし、牢屋に入れられる前に、王様直々に問いたらすようで。
…これはこれは見ただけでわかります。権威がある金がある。強欲がある。街を見ればなんとなくわかっておりましたが、富めるものが貧しいものを救わずもっと欲しいとする。下ですね。畜生にも劣りますよ。どこの下僕になり下がっています。救いようがないほどに。今生の生を悪魔どもに売り出しています。
であるならば、私もそれ相応の姿で臨むのが礼儀。
高圧的に、勇気あるもの、慈愛の指導者として。いいえ、そうではなく、何者でもなく、何者にでもなる者として。
「"さぁ、王様よ、その他の望みを言え。何でもは叶えてやれないが、金ならある。いや金がある"」
「ふん、ふてぶてしやめ。用事を抜かしていればあとで不敬罪でしょっぴいてやいている…金を出せ」
「"ははっよかろう…して、良いのか?"」
「何かだ?」
問答している間に金塊はモノからあふれ出てくる。モノの周りにはモノを中心に山になっている。
「"今のままであれば、あなたは破滅の道をあるのは間違いない。欲に溺れれば欲に潰され、金には金に、力には力につぶされる。これが三千世界の方であるからして。"」
「ふん、ほざけ。我より上のものなどおらぬ。身の程を知らぬ者は全てこの手で御してきた。これからもずっとそうなろう。」
王はモノにあふれる金塊に目を奪われながらそう言った。
「…」
モノはそう言い切る王を無言で見つめた。
「"ふむそうか、そう思うのならやってみよれ。九分九厘何もできず終わる。後は、そなたにとっては地獄になるであろう、変わらぬ者よ。そなたは変わらぬ故に落ちるのだ。自身が学べるところまで落ちて出直すが良い。そなたが決めた因果じゃ。因果は因果になって帰ってくる。因果に良いも悪いもない。望むところに還ってくる。愛されたければ愛することだ。隣人を愛せよ。ものを愛せよ。家族を愛せよ。友人を愛せよ、獣、虫、草木を愛せよ、自然生きとし、生けるすべてを愛せよ。"」と息継ぎなしでモノは言った。
あまりの気迫に王の間にいる者全てがのまれていた。そこに身分役職関係なく。
「…ふん、ちれものめ。こやつは虚偽不敬もろもろの罪を覆い被せて◯せ」
「…」
モノはもう何も言わなかった。
命令を下された兵士は戸惑いながらもモノを連行。王の望み通りに王に何をしたのか罪状をのべて罪をかぶせて広場で斬首された。
ーー因果をへて、
王の身にふりかかる。ある生では奴隷を、ある生では斬首される民を、権力者に振り回される貴族を、恐怖政治を行う時代の民として、ボロボロになりながらその日の糧をむさぽる。まだまだある。今生で思いを口にし行ってきた王は望む通りの因果を経験できたことに感謝しているだろう。申し訳ないと思うだろうか。それができたら、次に進めるのだ。
ーー因果をへて、
モノの身に降りかかる。モノは宇宙規模で繁栄する星に生まれ悠々自適に生きていた。
「あの王は望む結果を生きた。わたしも望む結果を生きた。生きとし生けるものの幸せを願った。そしたら君たちのいう奇跡が起きた。わたしは生きていた。生き続けていた。死んでなんかいない。あの人のように。奇跡と称してまつりあげられたのはあの人ではない。
毎日が奇跡だ。あの時王がいた時代も奇跡であると、わたしは知っていた。変わらぬものはない。変わらぬと言い続けていただけなのだ。変わるものだと認めてどう変わりたいかだな。愛と光の中であなた方を尊び敬い愛している。無限なる創造主の光の中であなた方を見守っています。」
ーー因果をへて、
あのあとの王国はクーデターが起きました。あの王はいつもどおりひとりじめしようとしました。
しかし、その場のモノの演説を聞いていた貴族が王を暗殺。その王暗殺を指示した貴族も原因不明で死亡しました。
数ヶ月の内に二転三転しまして、モノの言葉が響いた大半の貴族と騎士、兵士、国民が話し合い、私服を肥やした貴族を粛清しました。
それからその流れで国が王を祀るけれど政は議会でやっていくよということになりまして、なんの因果か形を変えてまとまり、ものすごい速さで発展し、宇宙進出するまでになりました。
どこのどなたが好転するよう差し向けたのかはこの国の者当時にはわかりませんでしたが、過去を見聞きして真実が知らされるようになれば、1人の男が王に物申したことが始まりだったようです。
隠されていた偉人に発展を遂げた国民は感謝の念でいっぱいです。
これからもさらなる発展を成し遂げるでしょう。教訓と尊敬を胸に抱いて。
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