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7話

「素晴らしい!」


すみれのステータスを見た宮廷魔術師のエリクは興奮して声を上げた。


「勇者様は全員、何かしらの特殊スキルをお持ちでした!しかも、家系継承スキルを持っている方が三人もいらっしゃるとは!!何と素晴らしく、興味深いことか!!!」


宮廷魔術師が早口に捲し立てる。それを見たすみれのクラスメイトは、ぼかんとしている。

雄二が眉間に皺を寄せながら声を上げた。



「その、家系継承スキルってのはなんだよ」


「家系継承スキルとは、高位貴族などの一部の家系に代々引き継がれているスキルです。一人に一つ持っている固有スキルの他に、もう一つ固有スキルがあるという状態の者を、我々は“家系継承スキル持ち”と呼んでいます」



興奮冷めやらぬまま騒いでいるエリクに代わって、宰相がメガネを指で押し上げながら答えた。



「それで、三人って誰なの?大河と、タイミング的にすみれもだろうけど、あと一人は?」


「あ、僕だよ」



紗奈が疑問を口にすると、辰斗が返事をした。それに対するクラスメイトの反応は三つ。


一つは、納得顔の者。広瀬家と播磨家のことを知っている面々だ。名字が違えど、辰斗が親戚関係にあることはクラスメイトならば知っている。


一つは、不思議そうな者。こちらは、大河の天才性を知っていても、広瀬家の事情までは知らない者だ。広瀬家に追随する播磨家のことも、当然知らない。


一つは、悔しげににらんでくる者たち。広瀬家と播磨家の事情を知ってるか否かに関わらず、自分より優秀な者に嫉妬している者たちだ。


すみれは小さく息を吐くと、目の前の宰相を見上げた。播磨家の者は表情が乏しい。そうすることで、どんな場合でも冷静に対処できるように訓練するからだ。しかし、普通の人は表情を隠すことなどしない。政治の中枢にいる宰相なら、彼らの表情から何かを読み取っているはずだ。



「それで、家系継承スキル持ちの勇者様方。あなた方はもとの世界では高位貴族に列せられていたのでしょうか」


「違います」


「では、何故?他の勇者様の中にも事情を知っていそうな方がいらっしゃいますが」


「私たちは親子で性質がよく似ている家系なのです。もとの世界では貴族の制度はありません。ただ先祖代々、似た人間が多いだけです」



宰相とすみれのやりとりを、大河と辰斗は黙って見守っている。こういう時に説明役となるのは、いつもすみれだ。下手なことを言ってトラブルのもとになるならと、広瀬家の面々は交渉や細かい作業は全面的に播磨に任せるのだ。


(日本に貴族の制度は今は無いし、広瀬家は庶民とは言えないけど、嘘はついてないわ)


すみれは声には出さずに自分を納得させた。

『嘘をついていない』と思っておくことは、交渉の席では大切だ。それが態度に出るので精神的に余裕ができ、有利に物事を進められる。


現段階で、広瀬家と播磨家の事情を詳しく伝える必要はない。“それ”を伝えるには、お互いに対する理解力が無さすぎる。何より、王国側の思惑の全貌がわからない今、どのように利用されるかにも不安が残る。


いずれ誰かが広瀬家と播磨家について話してしまうだろうが、本当に大切な部分は一族の者しか知らない。大河と辰斗に話を通しておけば問題ないだろう。


(とっくに家を出た身だけれど、やっぱり私は“播磨”を捨てきれていないのだ)


すみれは密かに苦笑した。

それを後ろから見守っている視線があることに、すみれは気づいていなかった。

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