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5話

一年半くらい間が空いてしまいました…。

これから少しずつでも更新を再開していきます。


「勇者様方には、これより能力測定を受けていただきます」



謁見の間を退出したすみれ達が、共に出てきていた宰相クラウスから告げられたのは『手の内を晒せ』という命令だった。

勇者が戦力という駒である以上、使う側は駒の能力を把握を把握しておく必要がある。


(この人たちに私たちの能力を知られることと私たちが自分の能力を知ること。これが吉と出るか凶と出るか…)



「どう思う?…紗奈」



すみれは近くにいた親友の徳永紗奈に問いを投げた。


紗奈は翻訳家の卵だ。英語、ロシア語、ドイツ語、イタリア語を巧みに操り、留学経験も豊富だ。

特に文学に関する造詣が深く、その場の状況把握能力は相当高い。


それを知るすみれは、紗奈の意見を求めたのだ。



「そうね…。身体力測定のように実力を試す可能性が高いけれど、召喚されたという事は魔法が存在する可能性があるわ。そしたら、鑑定魔法のような判定を行うシステムもあるかもね」


「つまり、実力を誤魔化す余地が無いってことよね」


「まあ、誤魔化す事は無意味でしょう。自分の勇者としての能力を把握できていないのに誤魔化す事はできないし、今後にも差し障りがあるだろうね。

それよりも、鑑定魔法のようなものがある場合、結果が私たちにも共有されるかの方が重要よ」


「それなら、もう交渉しているみたいよ」



すみれと紗奈が話している間に、一成がクラウスに結果が自分たちにも開示されるのか質問していた。

バスケットボールはチーム戦略も大事になるスポーツだ。

高校時代にキャプテンであったこともあり、人員の采配には慣れているのだろう。

流石、現役のプロバスケットボール選手である。



「勇者様方の能力はこちらの水晶で判定致します。判定結果はこちらに表示されますから、皆様にもわかるでしょう」



宰相の後から部屋に入ってきた紫色のローブをまとった人物の声が響いた。

それに宰相は一瞬苦々しい表情をしたが、すぐに真顔へと戻った。


紫のローブをまとった人物はエリク・シュトルガイザーと名乗った。

この国の宮廷魔術師であるという。

その手には箱があり、蓋を開くと中には掌大の水晶玉が入っていた。



「こちらの水晶は、手を当てるとその者の能力を読み取り、ステータスボードを出現させます。これは私のステータスボード、綺麗でしょう。

ステータスボードは所有者の体に収納できますので、失くす心配もないのですよ」



宮廷魔術師は水晶を見せながら説明すると、ステータスボードとかいう透明な板を左腕から出し入れして見せた。

宰相がそれを見て眉をピクピクと動かしている。



(もしかしたら、宰相はステータスボードのことは黙っておきたかったのかも。それをあの宮廷魔術師さんの方が言ってしまったって感じかしらね。あの人、魔術オタクっぽい雰囲気ありそうだから、政治的なこととか考えてなさそうだし)



すみれが二人を観察している間に、宮廷魔術師に向かっていく者が二人いた。

大河と雄二だ。



「おおっ、これは異世界定番の展開じゃないか。早速、俺のステータスを見せてくれよ」


「ステータスが見られるってのはロマンだよなぁ。自分の気づいてない可能性に気づけるかもだし」



二人とも待ちきれないようで、宮廷魔術師のもとに駆けていく。大河はドタドタしているので、突進しているようで豪快だった。

雄二の方は、元バスケ部としては細身なので、大河に押し負けて二番手になっている。

…ここでも雄二は勝てないらしい。



「はあ…ロマンロマンって、それで生活できるならともかく、ただ失望するだけならやらない方がいいのに」



そんな呟きが近くで聞こえた。


振り返ると、秋本そらがいた。その眼は冷ややかに大河と雄二を見ている。

そらは高校時代、雄二と付き合っていた。すみれは彼らと連絡を取っていないので、今も続いているのかは知らない。

この呟きから考えると、今でも連絡くらいはしているのだろう。



「アッキーは、夢を持つのは馬鹿らしいって考えだもんね。今もそう思ってるんだ?」


「ええ、その通りよ。それで傷つき続けているのだから、雄二も馬鹿よね」



すみれ同様にそらの呟きを聞いた紗奈が、そらに話しかけた。優等生でありながら明るい性格の紗奈は、人との距離感が近い。

冷めた感じのあるそらとも、高校時代から仲良さげに話していたものだ。


そらは相変わらず冷めた目を雄二に向けたまま、紗奈に言葉を返した。

視線の先には、ステータスボードを作ってはしゃいでいる雄二がいる。


すみれもそらの視線の先を辿って雄二の様子を見た。そこで。大河がこちらに向かってきているのが視界に入った。

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