親父と妹の帽子についての考えと、新時代を生きる家族の姿を語りたいと思う
センシティブな内容が含まれていますので、ご注意ください。
勘の良い方ならば、すぐにピンと来ただろう。非常にセンシティブな内容で、ハラスメントに値する表現になるのだが語らせてもらう。
俺の親父は、いわば頭髪の薄い星の人間だ。若い時分から苦労したようで、見事に酸性雨の塊の隕石が衝突したかのようにクレーターがあった。
万年ヅラ生活、そんな親父だったが、技術の進歩のおかげで自然なヅラを……ウィッグを手に入れてからはお洒落なおじさまに進化した。
奨めたのは妹だ。彼女は配信系コスプレイヤーで、髪の色も量も形も自在に変える事が可能だった。
更地のほうがやりやすいくらいだ。髪が薄い事に悩んでいたのに、むしろ鼻や顎までの脱毛を喜ぶ矛盾に気づかない親父。
「まるで魔法のようだ」
親父はまるで魔女に出会ったシンデレラのように、キラキラしていた。
――――良くない兆候だ。
「カラコンを入れたのよ」
流石はプロ。自分の親父樣の酸性雨林を、配信素材にするため気合が入っている。
親父も髪が揃うと、見てくれはまあ悪くない。
「むしろイケオジで売れるよ」
売り物にする気満々の妹。だが、世間は頭髪に敏感で厳しいのだよ。
「何言ってるの。今や髪は帽子と同じファションの時代だよ。お父さんだって、モテたいんでしょ?」
コクコク頷く親父。待て、親父――――騙されるな。その悪魔の正体を忘れていやしないか。
そいつは妹の皮を被った親父の息子だぞ。モテる相手の意味が親父と妹では認識がズレてるよ――――ズラだけに。
親父は四十半ばにして覚醒した。
女性社員の方々には持て囃されたそうだ。ただし本当にモテてていたのかは、わからない。
驚きの変身を遂げた事を、受け入れてくれる会社で良かったと思う。
「それじゃ兄さんも、諦めて変身しようか。知ってるんだよ、最近帽子で隠したがってるの」
お袋似の妹と違って、親父似の俺は抵抗虚しく受け入れざるを得なかった。
だが魂まで売る気はない。俺は普通に女の子と恋をしたいのだ。
「はぁムリムリ。今のままじゃ、そのまま魔法使いにジョブチェンジするのがオチだよ」
容赦のない悪魔の言葉の刃が、俺の繊細な魂の砦を削る――――――
――――――親子三人揃ってのメイクアップ配信動画は、それなりに好評だった。
妹は男の娘だが、俺はただの女装男子だ。親父は染まりつつある。
親父の心変わりを一番喜んでいたのはお袋だ。お袋への気遣いが、以前と段違いだそうだ。
そんなわけで、俺の家族は変革の時代を柔軟に受け入れられたのだ。
お読みいただきありがとうございました。この物語は、なろうラジオ大賞5の投稿作品となります。
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