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準備しよう

俺は大学なんて早々に抜け出して、明後日を生き残るための準備へとむかう。


向かうはゾンビゲームでもお馴染みのホームセンターである。あまり真面目に考えたことないが俺らの過ごしている日常の中でこれ程敵を倒すための物を手に入れられる場所は中々ない。


長い柄が着いているハンマーとナタを4丁、っと、まだこの時期の体だと負担を感じる総重量だ...


やむを得ないけどナタは2丁にしておこう。


コレで大体の装備が整ったと言っても過言では無い。基本的にはこいつらは使わない。


「さぁ、基本装備を取りに行こうか」


意気揚々にそう言ったはいいが俺はまず先にATMへ向かった。それを買うためのお金が無いことに今更気づいて、お金を下ろさねばならないのだ。


「おいまじか……」


ATMで残高を確認したところ残高は


「852円...」


過去の俺もっとバイトしておけよ...


悔やんでもしょうがないクレジットカードくらい持ってるだろうと思い財布の中身を改めてみてみると、無いのだ、あの魔法カードが。


「......」


やむを得ない、奪うしかないな。日本の警察もさすがに2日位じゃ俺の事逮捕出来ないだろ。そんなことより人命を助けるために戦力が必要だ。










そう言って歩みを進めた先は、刀剣屋。所謂刀や剣を売ってる場所である。なんのために来たのかって、そりゃ刀を買うためである。いや.....盗むためである。



ここは前の世界でかなり有名だった即実践的に使える、本当に「殺す」目的で作られた刀達が作られ、売られている場所である。だが当然そんなのが合法なわけが無いのだ。



盗むためとはいえ、警備は厳重である。今の俺がそんな警備を堂々とぶち敗れるスキルもなければセンスもない。ならばいっそ堂々と騙しに行こうと思う。


そう意気込んで俺は”花屋”の入口から堂々と入店した。


「ごめんくださーい!」


「はーい!あ、ちょっ、あぁ!!すみません!少々おまちくださーーい!」


そう言って色鮮やかなな印象を受ける店内の奥から出てきたのはこれまたとても美しい女性であった。


何故かスカートが濡れちゃっているけど...


そう、この女性こそ現代、いや、未来含め最高の刀鍛冶師なのだ。どんなケアをしてればそんな美しさを保ちながら刀を打てるのか不思議なことだが実在している以上認めざるおえない。


キメ細かいスラッとしたその手足と指でどうやってあのような刀ができるのか本当に不思議である。この人がいなければ日本人、ましてや世界が滅んでいた。いや、まじで。この人の作る武器ってえげつない効果が多いのだ。


「あら、どうしたのかしら?こんな時間に貴方のようなお客さんは珍しいから油断して店の奥でお菓子食べちゃってたわ。うふふふ。」


そうか、この人は世界がああなる前からこんなマイペースな人だったんだな...


てことはスカート濡れてるのは慌てたせいで水かお茶をこぼしたからだな...


まぁ感慨に浸るのは後にして俺も目的のために動こう。


しかし...分かる。



分かってしまう。


強者が無意識に行う、相手に悟られぬような探りを。


そう、目の前の見た目可愛らしいこの女性は、俺にそういう探りを入れてる。あんな世界で生きてたからこそ備わった、言葉で表現しようのない感覚。俺もそうすることが無意識になっているが、こっちの世界に来て初めてだ。やはり、この女性は世界がああいう風になる前から尋常ならざる者だったのだろう。



まぁ平和な世界でこんなことしてるなら当然なのかもしれないが...。


しかし、入念に探りを入れてきてるな...


笑顔や視線、顔の筋肉の動かし方、手や重心、様々なところから見受けられる探りを入れる姿勢。


ここまで”警戒”をするか?


なぜだ?

そんなに警戒されるほどのことをした覚えはないぞ?


「あら、お客様ぁー、ホームセンターでお買い物でもされていたのですかァ?」



.......目つき怖っ。


え、さっきまでのホンワカ雰囲気のお姉さんどこ行ったの?


それはそれとして



ふと、手元を見る。


oh……



そりゃ警戒するわ。


ナタ2丁にハンマー買って花屋さんに来る人間。怪しいってもんじゃねぇよなぁ。


ましてや裏の世界や表の世界の様々な人種と交流を重ねている人間だ。怪しんで当然だ。もしかしたら暗殺とかされかけたのかもしれない。現に今から4年後に暗殺されかけてたし、この人。


だめだ、完全にバカをした。なんか色々頭で考え込んでいてそこまで気が回らなかった。やばい、久しぶりのこの平和な空気が無意識に気を緩めせているのかもしれない...。



「これは、庭を、えー、庭の草を斬るために買いました!」


「え?」


「庭がですね、もう草がボウボウでお生い茂っていて、それはもうジャングルみたいなんですよ。いい加減鬱陶しくて全部刈り取って綺麗なお花を買って飾りたいなぁ、なんて思ってまして。だから、工具を買いまして、あははは。お花も、庭に飾るお花もいくつか選ばさせてもらっていいですか?」


「....はぁ、もっとマシな嘘とか無いのですか?」


でーすよねぇ...



咄嗟にそれっぽいこと言ってもこの人にはなんか通用しなさそうだもんね。


まぁ正直に言うか。


「殺す。」


「はい?」


「敵を殺す道具を」


「....なるほど、そっちでしたか。しかし、なんですかねぇ、憎悪、でもない、いや少しはあるのかな?後は...希望?じゃないか、これはどっちかと言うと課題解決を現実的に見えてる人か。そのために刀...?」



えぇ、急に胸の前に腕を組んで顎に指添えて考えながらブツブツと喋りだしたと思ったらなんか鋭いこと言い始めてる...



ヤダ怖い。


「あの...」


「ごめん、少し黙ってて」


「うぃっす」



弱いとか言わないでね。この人の圧が凄いだけですから。


しばらくジロジロ見られ、暇すぎて花屋の花を観賞し始めた頃、急に力強く、しかし小さな声で。


「奥、来なさい。」



「え、あ、はい。」


彼女がスタスタと静かに店の奥へと進んでいくのでそれに続いていく。時々おかしな挙動はあるものの彼女にこれといって不審に思うような点は無い。


「いいわ、刀をタダであげる。」


「え゛?」


なんか凄い間抜けな声で驚いちまったぞコノヤロウ。


「でもね、いくつか決まりを守ったらタダであげるって事ね。」


「どんな決まりですか?」



それはまた後で伝えるわ、とボソッと言いながらさらに奥へ進んでいく。


てか凄いな、めちゃくちゃ奥に進んでるけど一向に到着先が見えてこない。


「あ、あと、色んな罠を解除しながら進んでるから絶対私の前に来ないでね。あなたが前に出たら多分2分以内に確実に死ぬから。」


「あの、そういうのは先に言って頂いたら助かります。」


「....」


無言やめて怖いっ!


そうしてしばらく無言で歩くとデカいエレベーターが急に現れた。まるで採掘場のように底が見えないくらい下に続いているエレベーター。それに乗り最下層まで降りる。



空気が冷え切り、外は夏で暑いと言うのにここはクソ寒い。


「着いたわ。」


「なんじゃここ。」


そう、そこはなんでもない土や岩で囲まれてできた空間だった。


「細かいことは省くけど、ここはちょっと特別な空間なの。私のいるところまで来て。」


「あ、あぁ、はい。」


そう生返事をしながら部屋の中央まで進む。


しかしこんなに見通しの悪い空間で何をするんだろうか?

隠し扉とかあるような感じもなく、本当にただの空間のようなのだ。そこにうっすらと周囲を照らすランプが等間隔で隅に置かれているだけだ。


そんなことを考えながら彼女の隣まで移動する。


「ちょっとそこで立ったまま待っててね。」


「え、はい。」


そう言うと彼女がこの空間から出てしまう。


まぁ少し待つか、本当は早くしたいのだけど、てかちゃっちゃと盗むつもりがいつの間にやら訳の分からぬ空間へと誘い込まれてしまった。



あれ、これ今思うと不味くね?もし腹積もりがバレていて報復されるとかなら俺やばくね?まだ何もできないよこの体だと。


とか悩んで焦っていること15分程度。


急に足元の少し先の地面から淡い光が出てくる。


水色とも黄緑色とも見えるような不思議な色の光は少しづつ強くなっていく。


「え、は?」


驚くことにその光はあるものから出ている。この光の元は、ランプでは無い、地面から生成された魔法陣であった。


「おいおい、おいおいおい、え?」


ちょっと待て、何だこの魔法陣は?

まさかもう始まっているのか、世界の終わりが?

いや、それは無い、間違いなく今日では無いのだ。

ならなんなんだこの魔法陣は?俺が知らなかっただけで元からこの世界には魔法はあったっていうことか?


というかこれが攻撃魔法なら不味い、まじで一瞬で死ぬ。と焦った。しかし長年戦い続けて来たかいもあって直ぐに冷静になる。いや、冷静じゃなくてもよく分かる。というか知っている。


この魔法陣...


「略式小型転移魔法陣か?」


その名の通り一般的に普及されていた転移魔法陣を小型化して、あまり大きくない物質をなんでも転移できるものである。


そして突然一際光始めると



「あなたが落としたのはこの、紅の刀?それとも紺色の刀?」


「.......なんでコスプレしてるんすか?」



「え、この流れでそこにツッコミ入れる?」


転移してきたものは、刀を2振りそれぞれ片手に持ち、何故か女神を彷彿とさせるような綺麗な白い布で体を覆っている、花屋の、世界一の刀鍛冶師その人であった。


いや、本当にどゆこと?

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