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3話 唯我独尊な大怪盗

 私が知る限り、このレシレイラ王国がおかしくなったのは半年前からだ。


 女王だった祖母が死に、父であるワルクト・バーティ・レシレイラが王座についたのがきっかけだ。父は王になると、民衆を奴隷同然に扱いはじめたのだ。


 重い税を課し、王族や貴族と民衆の二極化を促進させ、それによる市場の混乱や大量失業を無視した。貧困化した民衆は食料困難に陥っているが、国は何の対策も講じない。そのため、街で僅かな穀物を得るための殺人が日常となるまで時間はかからなかった。


 当然民衆の不満は爆発するが、恐怖で統治している父はそれを許さない。そういった者達は即座に秩序警(イールミリ)によってバルキザブ大監獄に投獄、もしくは処刑され、それは見せしめ(絶望)となって民衆支配に絶大な効果を及ぼした。


 父による悪政を誰も止められない。城内もこの事態に意見する者は全員バルキザブ大監獄に投獄されてしまった。今の城内にレシレイラ王国の未来を憂う者は皆無になっている。父の機嫌を伺う者だけが残っており、ゲヴェイアはその筆頭だ。


 だから、私がどうにかしなければならなかった。唯一残った姫である私だけが、どうにかできる可能性があった。


 そう、可能性だ。


 それは普段なら一笑に伏す途轍もなく低い可能性だったが、味方も力もなく、自分一人だけの現状ではそれを信じる以外に道はなかった。


 それはレシレイラ王国に住む者ならみんな知っている有名な昔話。


 祖母が生きていた頃、その昔話をよく聞かせてくれて――――教えてくれたのだ。


 ラデーズ山には神魔宝貴(ファウリス)という不思議な道具を扱う大怪盗が住んでいる。


 私はその大怪盗(昔話)に頼るしかないと思い、ゲヴェイアに追われながらもどうにか接触に成功した。


 ――したのだが。



 「た、高いッ! 落ちるッ! 落ちて死んじゃいますッ!」



 「なら懸命にオレの手首を握れ。オレは握っていない」



 「なんで握ってないんですかッ!? 握ってくださいよッ! 酷いですッ! いきなり空の上に連れてきたのはレイダークさんじゃないですかッ!」



 「嫌ならさっさと手を離せ。心配しなくていい。墓くらい家畜の糞で作ってやる」



 「離せないッ! 絶対に死ねないいいいいいッ! 人の尊厳的にもぉぉぉぉぉぉッ!」



 その大怪盗(?)はとんでもないSで唯我独尊で、私は殺されそうになっていた。

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